#07 小さな訪問者

文字数 890文字

お父さまもお母さまも、今頃きっと、こんな豪華なお食事をして、いろんな人たちとの()()()()()を楽しんでいるところね。
やっぱり大人ってずるいよっ!
私たちも、そのうち大人になるんだから。あっ、二コラ、口にソースがついてるわよ!
えっ⁉ うわぁ、髭にもついちゃってるし……。
ふふふ。髭は生やさないことね。


 それは、優雅なメロディーを耳にしながら、食事をしているときでした。


 トントントンッ!

 トントントンッ!


え?
窓のほうからするぞ!


 トントントンッ!

 トントントンッ!


 ふたりは窓に駆け寄ると、外に10センチくらいのかわいらしい女の子がいました。

 白い息を吐きながら、小さな小さな手で、窓を一生懸命たたいています。


 そう、このかわいらしい女の子が、あの小さな小さな靴の持ち主なのです。

 その証拠に、もう片方の足に全く同じ銀の靴を履いていました。


ニコラ見て、妖精よ!
うわ……、僕の賭けは負けか……。


 ノエルは、すぐに窓を開けてあげました。

 小さな小さな女の子の背には、妖精の特徴であるかわいらしい小さな小さな(はね)が生えています。

 妖精は部屋の中に入るなり、まわりをきょろきょろとし、なにかを探しているようです。


…………。
僕、夢を見てるみたいだ。目の前に妖精がいるなんて……。
私もよ、でも今、すごいことが起きてる!

妖精さん、あなたの靴ならここにあるわ。

 ノエルは、ビンから銀の靴を出すと、妖精に向かって言いました。


 靴に気づいた妖精は、(はね)をゆっくりとはばたかせ、ノエルの手のひらに乗ります。


 しかし、どういうわけか、目の前にある自分の靴を履こうとはしません。


ノエル、どうしたんだろう?
きっと、私たちのことを警戒してるんだわ。妖精さん、この靴はあなたのものよ。私たちは、あなたを(つか)まえて、見世物(みせもの)にしたりなんてしないわ。絶対よ、約束するわ!
うん、僕も約束する!


 ふたりの言葉を聞いて安心したのか、妖精はスッと足を伸ばしました。

 妖精の足に銀の靴がぴったりと収まったとき、なにもかもが一瞬にして元に戻ったのです。



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登場人物紹介

ノエル


おしゃまな女の子

ニコラ


いたずら好きの男の子

大人になったノエル

大人になった二コラ

妖精

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