#01 雪の降る夜に

文字数 1,165文字


 それは大晦日(おおみそか)の夜のこと。

 ノエルとニコラのふたりは、お父さんとお母さんが晩餐会(ばんさんかい)に出かけるため、家の留守番を頼まれました。



 ノエルは、おしゃまな女の子。

 ニコラは、いたずら好きの男の子。

 ふたりはいつも一緒で、とても仲のよい双子でした。



 黒い蝶ネクタイをビシッときめた、タキシード姿のお父さん。

 真珠のネックレスと、ベルベットのドレスに身をつつんだ、お母さん。

 幼いふたりは、目をきらきらと輝かせるのでした。

準備はできたかい? そろそろ出かける時間だ。
ええ、ですが……。やっぱり、子供たちを残して出かけるのは心配だわ。
なにを言ってるんだ、今さら。大丈夫、すぐ目と鼻の先なのだから。さあ、急ごう。
 お父さんは上着のポケットから金の懐中時計を取り出すと、我が子をぎゅっと抱きしめるお母さんに向かって言いました。

 心配するお母さんを見て、おしゃまなノエルはこう言ったのです。
大丈夫よ、お母さま。お父さまとふたりで楽しんできて。ニコラの面倒は、私がちゃんと見るから!
なに言ってるんだ、僕がノエルの面倒を見るんだ!
あらあら、ふたりとも。では、いいこと? だれが訪ねてきても、絶対にドアを開けてはいけませんよ!
 お母さんは人差し指を立て、ふたりに厳しく言いつけます。

 ノエルとニコラは顔を見交わすと、声をそろえて元気よく返事をしました。
はい、お母さまっ!
大丈夫だよ!


 そして、両親は晩餐会に出かけて行きました。


 2階の窓から見送るノエルとニコラ。




 リゴーン、リゴーン……。


 時計塔の鐘が7時を告げました。



 鐘の鳴り響く音に、ふたりはじっと耳を傾けます。

 幼いふたりは、この鐘の音を聞くたびに、自然と心が落ち着くのでした。

 なぜなら、生まれたときから、ずっとこの音を耳にしてきたのですから。




 すると、そのときです!

 空から、ちらちらと白いものが、ゆっくりと落ちてきました。

あっ……!
……雪だっ!

 そう、雪です。


 ふたりは目を丸くすると、窓を開け、空を見上げました。

 ノエルの手のひらにフワリと乗った雪が、スッと溶けます。

お父さまとお母さまが帰ってくるまで、雪が積もらなければいいけど……。


 けれども、なんてきれいな夜空なんでしょう!

 まるで、妖精がダンスでもしているかのように!


 ノエルは、目をきらきらと輝かせながら、ちらちらと舞い降りる雪をじっと見つめます。


 そして、そんななかキラキラと光るものが、雪とともにゆっくりと落ちてきました。


あっ、なにあれ……。


 ノエルは手を伸ばすと、それはフワリと乗りました。



 雪……、



 いいえ、雪ではありません。


……靴?


 そう、それは小さな……、

 小さな小さな靴でした。


 今まで見たこともないような、“小さな小さな銀色の靴”が雪とともに落ちてきたのです。


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登場人物紹介

ノエル


おしゃまな女の子

ニコラ


いたずら好きの男の子

大人になったノエル

大人になった二コラ

妖精

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