#06 晩餐会

文字数 1,346文字

どう、二コラ。このドレス、似合う?
似合う、似合う……。
じゃ、次のドレスね♡
まだ着るつもり? お母さんが、この()(さま)を見たら、ヒステリーを起こして気絶しちゃうだろうね。もう、これだからって。なんだっていいじゃないか!
もう、これだからって! レディはおしゃれに時間をかけるものなのよ。


 大人になったノエルは、お母さんの化粧道具でメイクし、クローゼットからドレスを取り出しては、ファッション・ショーのようにドレスの取っ替え引っ替えで大忙しです。


 早く大人になって、お母さんのようなきれいなドレスを着たいと思っていたノエルは、夢がかなったのですから、それはもう大はしゃぎです。


はあ~。僕、大人になるの、なんか嫌になってきた……。
え? なにか言った?
 ノエルが、二コラの前でくるりと回ります。 
どう、このドレス? 似合う?

……き、きれいだよっ!

 二コラは、ぽっと頬を赤らめました。




 お父さんのように黒い蝶ネクタイをビシッと決めた、タキシード姿のニコラ。

 お母さんのように真珠のネックレスと、ベルベットのドレスに身をつつんだノエル。


 さあ、ここまで盛装(せいそう)したのですから、二度とないこのチャンスを逃すはずがありません。

 ふたりは目をきらきらと輝かせながら言いました。

せーのっ!!
晩餐会っ!!


 ふたりは目を閉じると、それぞれ思い浮かべたことを口に出してみました。



そうね、私の思い描く晩餐会は……。

きらびやかなシャンデリアとキャンドルでライトアップされて、長いテーブルに真っ白なテーブルクロスが敷かれているの。テーブルの上には高そうなお皿がずらりと並べられていて、壁には1枚の絵が飾られているの。

そうだな、僕は優雅な会食を。

まずはオードブルの盛り合わせに、スープ、フォアグラやオマール海老、肩ロースのやわらか煮込み、パンと……、デザートはバニラビーンズ入りのアイスかな。僕はもう二度と食べたくないって言うぐらい、たらふく食べたいよ。


 ふたりの知らない間に、ビンの中の靴がキラリと光ります。



 ふたりは目を開けると、あっと驚きました。

 目をキラキラと輝かせながら、ぐるりと見回します。


ニコラ、うそみたい。シャンデリアがダイヤモンドのようにキラキラしてる……!
わぁ、ヨダレが出そう。こんな豪華な食事、見たことないよ!
 目の前には、ふたりの思い描いたとおりの世界が広がっていました。


 天井からはキラキラと光る、大きなシャンデリア。

 長いテーブルの上には、豪華な食事がたんまりと。

 ふたりの子供部屋が、一瞬にして別世界へと変わったのです!

さあノエル、手を。
 ニコラはまるで紳士のような振る舞いで、ノエルを席まで誘導します。

 けれども、自分の思い描いた世界なのに、なんだか物足りなさを感じるノエル。


なにかが足りない気がするんだけど、一体なにかしら……。あっ……、そうよ、音よ! 音が足りないんだわ。優雅なメロディがほしいの。
それなら、人形たちに演奏させよう!


 ノエルの思いつきとニコラのアイディアで、人形たちがバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスなどの楽器を持ち、それぞれ美しい音色を奏でます。

 さあ、準備も整ったことですし、待ちに待った子供たちの晩餐会の始まりです!


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登場人物紹介

ノエル


おしゃまな女の子

ニコラ


いたずら好きの男の子

大人になったノエル

大人になった二コラ

妖精

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