#02 ノエルとニコラ

文字数 731文字


 ノエルは、手のひらの小さな小さな銀色の靴をじっと見つめました。


こんな小さな靴、一体だれがはくのかしら? もしかして、妖精? まさか、ね……。でも、(げん)にここにあるってことは、おとぎ話にでてくるような“妖精”がいるってこと?


ねぇ、ニコラ、見て!


 となりにいたはずのニコラが見当たりません。

 雪に見とれていたノエルを差し置いて、先に眠ってしまったのでしょうか?

二コラ?


 ベッドにはいません。

 さあ、どこへ行ったのでしょう。

ノエル、見て見て。
 すると、二コラがズボンをずるずると引きずってやって来ました。
二、ニコラ、それどうしたの?
見てのとおりさ、お父さんの真似だよ。どう、似合ってる?
 自信満々に笑みを浮かべるニコラでしたが、その姿はあまりにも不格好でした。

 幼いニコラの体には、お父さんのタキシードは大きすぎます。
ニコラ、お父さまのものを勝手に着ちゃダメじゃない! しかも、そのタキシード、この間、仕立ててもらったばかりのものよ。お父様がそのことを知ったら、カンカンに怒って大変よ!


“今すぐ()いでらっしゃい!”

 ノエルは、お母さんの口ぶりを真似て、ニコラを注意しました。


 ……だって、大好きなお母さまと約束したのですから。

 ニコラの面倒は、自分がちゃんと見ると!



 ニコラは、ぷっと頬を膨らませました。
ノエル、君はいつもいつも僕に注意ばかりしてるけど、は僕なんだからね!
いいえ、私がよ!
じゃんけんで決めよう!
いやよ、そんなの。だれが何と言おうと、私がなんだからっ。
 仲のよいふたりでしたが、どちらが“姉”“兄”かになると、きまって言い合いになるのでした。

 ノエルはニコラを“弟”と思い、ニコラはノエルを“妹”と思っていましたから。


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登場人物紹介

ノエル


おしゃまな女の子

ニコラ


いたずら好きの男の子

大人になったノエル

大人になった二コラ

妖精

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