二十二
文字数 938文字
リュウの妹であるサエキキョウコから、ショウの携帯電話に連絡があったのは、リュウがすでに台湾に向けて出発した後だった。突然かかってきた見知らぬ着信に、ショウは一瞬戸惑いながらも、ある確信があり、落ち着き払って電話に出た。
「兄が今日、台湾に向けて出発しました」
「台湾・・・・・・」
ショウが絶句した。
「どうして、もっと早く知らせてくれなかったんだ!」
思わず語気を荒げてしまい、ショウはキョウコに詫びた。後一歩のところで、弟に再会できなかった悔しさが込み上げてくる。
「弟の居場所、知ってたんだろう?」
「はい、兄はタザキさんが、自分を必ず引き止めるから、と」
確かに、再会し、リュウが台湾に行くと告げたなら、ショウは全力で引き止めたに違いない。
「弟は、何故、台湾に?」
「さあ、妹の私にも、詳しいことは話してくれませんでした。大学時代の親友、王志明という人と一緒です。何かを探しに行くとだけ言っておりました」
ショウは深い溜息をついた。また一からやり直しだ。
「どうして弟のこと、この俺に知らせてくれなかったんだ」
キョウコはしばらく黙っていた。
「だって、私にも・・・・・・」
息を詰まらせた。受話器の向こうですすり泣いているのが聞こえる。
「リュウが何時の飛行機に乗ったか、わかるか?」
「正午の羽田発、日本航空785便です」
「わかった、有難う」
ショウは時計を見た。すでに十五時をまわっている。すでにリュウは台湾に着いているかもしれない。ショウは通話を切り、すぐに日本航空に問い合わせた。
「今日の羽田発、785便にサエキリュウという人物が搭乗しているか調べてはもらえないだろうか?」
「少々お待ち下さいませ」
数分の後、
「お客様、あいにく、その便にはサエキリュウ様という方は搭乗されておりませんが」
「そんなはずはない、では、タザキリュウでもう一度調べてみてほしい」
「あいにく、その方も搭乗者名簿にはございません」
「そんな」
妹のキョウコが嘘をついているとは思えない。
「くそったれが!」
ショウは携帯電話を床に叩きつけようとして止めた。
「一体どうなってるんだ」
名前も言葉もわからぬまま、台湾まで追いかけて、リュウを捜すことは余りにも無謀である。ショウは失意の中で、諦めざるを得なかった。
「兄が今日、台湾に向けて出発しました」
「台湾・・・・・・」
ショウが絶句した。
「どうして、もっと早く知らせてくれなかったんだ!」
思わず語気を荒げてしまい、ショウはキョウコに詫びた。後一歩のところで、弟に再会できなかった悔しさが込み上げてくる。
「弟の居場所、知ってたんだろう?」
「はい、兄はタザキさんが、自分を必ず引き止めるから、と」
確かに、再会し、リュウが台湾に行くと告げたなら、ショウは全力で引き止めたに違いない。
「弟は、何故、台湾に?」
「さあ、妹の私にも、詳しいことは話してくれませんでした。大学時代の親友、王志明という人と一緒です。何かを探しに行くとだけ言っておりました」
ショウは深い溜息をついた。また一からやり直しだ。
「どうして弟のこと、この俺に知らせてくれなかったんだ」
キョウコはしばらく黙っていた。
「だって、私にも・・・・・・」
息を詰まらせた。受話器の向こうですすり泣いているのが聞こえる。
「リュウが何時の飛行機に乗ったか、わかるか?」
「正午の羽田発、日本航空785便です」
「わかった、有難う」
ショウは時計を見た。すでに十五時をまわっている。すでにリュウは台湾に着いているかもしれない。ショウは通話を切り、すぐに日本航空に問い合わせた。
「今日の羽田発、785便にサエキリュウという人物が搭乗しているか調べてはもらえないだろうか?」
「少々お待ち下さいませ」
数分の後、
「お客様、あいにく、その便にはサエキリュウ様という方は搭乗されておりませんが」
「そんなはずはない、では、タザキリュウでもう一度調べてみてほしい」
「あいにく、その方も搭乗者名簿にはございません」
「そんな」
妹のキョウコが嘘をついているとは思えない。
「くそったれが!」
ショウは携帯電話を床に叩きつけようとして止めた。
「一体どうなってるんだ」
名前も言葉もわからぬまま、台湾まで追いかけて、リュウを捜すことは余りにも無謀である。ショウは失意の中で、諦めざるを得なかった。