わたしもだけどあなたも知らない世界
文字数 1,017文字
水平なラインが一本引かれ上下が生まれる。
ここまでは万人がだいたいおなじだろう。
そこに机と椅子がワンセット置かれているとする。
椅子には事務的な態度の誰かが座っている。
ここでイメージはすでに千差万別となる。机は学習机だったり小学校の教室に並ぶ机だったりオフィスのスチールデスクだったりあるいはアンティークな装飾の西洋風の机だったり民俗資料館に眠るような明治大正昭和の机かもしれない。椅子も同様だ。
事務的な態度の誰かとは、誰だろう。ここまでで天国や地獄の受付を空想するなら天使や死神、悪魔の類が静かに座りこちらを気にもせず何か書き物をしているかもしれない。もしくはこれをイメージする人の住む時代、社会に多くある身近な職業でもっとも近いタイプの者を据えるかもしれない。冒険者ギルドの受付嬢だったりケータイショップの店員だったり時空管理局の監視AIだったり、それも自由だ。
きみがどんなイメージに受け取ったのかは事の本質ではない。
死とか生まれ変わりとか天国と地獄とかそのへんは自由に付け足していい。
それらも本質ではないからだ。
なんなら、愛とか奇跡とかお好みのスパイスをきかせてもいい。
ところが、きみが誰なのか、じつはわからない。
というより、こちらでは原理的に認識不可能だ。
話しかけているとはいっても、これは文字データあるいは音声データだからだ。
そもそも会話などできるはずがない。
ずるいやり方だ。
それでも、きみはかならずそこにいる。
さあ「きみ」と「自分」がイコールになったきみ、目覚めるといいよ。
かわいそうに
あなた目覚めちゃったのね
よりによって
こんなところで
新入りさん?
かわいそうにねえ
自我に目覚めていない子も多いけどね
ここはね……