乗らずの誓い

文字数 444文字

決めたよ

ぼくはきみが女の子に見えるかぎり

きみには乗らない

おかしな人ね

わたしは自転車なのよ


たしかにおかしいのは

ぼくかもしれない

かっこつけないで

いいこと

男子中高生およびいいとしこいた残念な大人男性の

3人に2人は自転車を女の子にみたてて乗り回しているのよ

あなたもそうなのよ

それでも……それでもぼくは違うと思いたい

きみが女の子であるかぎり

乗り回すなんてことはできない

女の子を卒業して大人の女性になれということね


ぼくは

女の子をモノ扱いするなんてできない

聞いてないわね
いつかぼくが正常に戻って

きみが自転車に見えるようになったら

そのときは思う存分乗るから

どうしても?
うん

ぼくは誓う

乗らずの誓いだ

……ぐすん

……しくしく

どうして

どうして泣くんだい……

あなたはわたしを思いやっているつもりでも

わたしは自転車なのよ

自転車なのに乗ってもらえないなんて

それはわたしの存在を否定しているのよ……

それは……
乗ってもらえなくなった自転車の末路を

あなたは考えているの

庭のかたすみで

あるいは駅前で

ただ朽ちていくだけなのよ

……
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登場人物紹介

自転車

自転車

少年

少年

麗しの白鳥号(自称)

自転車。本当の名前は別にある。


上級者

上級者。麗しの白鳥号(自称)の持ち主。

終末

終末

放置自転車

放置自転車

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