女の子と自転車の区別はむずかしい
前のエピソードへ「帰らない日々」
文字数 747文字
わたしは泥棒さんを乗せて
めちゃくちゃ走って
そのうち明るくなって
ここに置かれました
言葉がでないよ
しかも廃棄場から盗まれたってわけか
言葉を選びなさい
ほんとうなら
わたしはあそこで
粉々に砕かれていたのですから
きみを特定できないだろうし
なんていうか
きみを連れ出した人間も
戻ってこないかもね
警察に問い合わせても
どうにもならないわね
またあの廃棄場に戻されるだけです
それは
もういやです
できることは
そっとしておいてください
しばらくのあいだ
ご主人様がもどらないことも
捨てられる前の日々に帰れないことも
愛も奇跡もないことも
廃棄自転車の盗品を
さらに勝手に持ち帰るとか
モノだったときは平気ですてて
人の姿に見えたら
こんどは情が移って
感情的になって
あとさき考えずに
なんとかなると思ってしまう
尊重してあげて
あなたに愛があるなら
その愛は
あなたの自転車に向けてあげて
ふふ
ずっと考えていた決め台詞を
ほんとうに使う日がくるなんてね
ふふふ
さようなら
ぼくたちはいつもここに来るから
またお話を
聞かせてください
いつもここにいるから
わたしは
放置自転車
次は愉快なお話をいっぱい考えて
聞かせてあげるから
あの子自転車なのに
仲良く手をつないで
……らら……らん……らら
あれ
このメロディは……
これが
わたしの魂に刻まれた……
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