2 報酬
文字数 1,123文字
プレディレールは荒野の真ん中にある巨大な街だ。大陸最大の歓楽街であり、大陸唯一のどの国にも属さない中立地帯でもある。
街内は歓楽街と居住区、そして竜人の集まる小さなスラムで成り立っている。俺はその内の居住区にある、亜竜狩りの依頼所にいた。
依頼所は役場然としており、複数の受付カウンターで仕切られて、奥にある事務所とその手前の待合所で別れていた。
受付嬢に呼ばれ、俺はすぐにカウンターの一つへ向かった。にこにこと愛想のよい彼女に、環状地竜を討伐した証拠写真を手渡す。間もなく、それは報酬の入った封筒に交換された。
「金額がおかしくないか?」
その報酬は思いのほか少ないものだった。札の数を数えながら、笑顔を浮かべ続ける受付嬢に抗議する。
「報酬額としては適正だと認識しております」
俺は環状地竜を狩るのは初めてではない。報酬がいつもよりも明らかに減っている。
「いや、やっぱりおかしい。ちゃんと確認してくれ」
「それは多すぎるという意味でしょうか?」
「少ないんだよ!」
受付嬢はしばらく黙った後、笑顔を崩して気だるそうに肘をついた。あまりの一変ぶりに、俺は思わずのけぞってしまう。
「あのですね……環状地竜は誰でも狩れるから、討伐報告が多いんです。だからつい先日、報酬を減額することが決まったんですよ」
「そ、それはわかった。けどその態度は……?」
態度について言及すると、受付嬢はぎろりと睨み付けてくる。その剣幕に押され、二歩・三歩とあとずさった。追い打ちをかけるように彼女は立ち上がって、勢いよく両手をカウンターにつけた。
「環状地竜なんて十匹からニ十匹を狩るのが当たり前。それを五匹程度でわざわざ報告しないでくれます? 一桁なんて記録するのが面倒なんですけど!?」
「それは、その……前からそうだし」
「前からだから言ってるんですよ! ウッカ・ユリンさん?」
この受付嬢とはあまり顔を合わせた覚えがない。つまり、彼女たちの中で情報共有されているのだろう。それほど俺の報告がイレギュラーで面倒くさいのかもしれない。
しかし仕方ないのだ。俺が環状地竜の群れをすべて狩るには、よほどの運が必要になる。たいていは五匹前後しか仕留められないのである。
「だいたい亜竜狩りは集団で行うのが普通なんです! あなたみたいに単独で狩りに行く変態がいるから、私たちは苦労を強いられて」
最後まで聞かず、俺は受付嬢に背を向けて逃げ出した。背後から、腹に据えかねたらしい怒声が投げかけられる。
「待て、ウッカ・ユリン! チームを組めば、あなたなら――」
報酬は貰ったのだから、これ以上ここにいる理由はない。俺はさっさと依頼所をあとにした。
街内は歓楽街と居住区、そして竜人の集まる小さなスラムで成り立っている。俺はその内の居住区にある、亜竜狩りの依頼所にいた。
依頼所は役場然としており、複数の受付カウンターで仕切られて、奥にある事務所とその手前の待合所で別れていた。
受付嬢に呼ばれ、俺はすぐにカウンターの一つへ向かった。にこにこと愛想のよい彼女に、環状地竜を討伐した証拠写真を手渡す。間もなく、それは報酬の入った封筒に交換された。
「金額がおかしくないか?」
その報酬は思いのほか少ないものだった。札の数を数えながら、笑顔を浮かべ続ける受付嬢に抗議する。
「報酬額としては適正だと認識しております」
俺は環状地竜を狩るのは初めてではない。報酬がいつもよりも明らかに減っている。
「いや、やっぱりおかしい。ちゃんと確認してくれ」
「それは多すぎるという意味でしょうか?」
「少ないんだよ!」
受付嬢はしばらく黙った後、笑顔を崩して気だるそうに肘をついた。あまりの一変ぶりに、俺は思わずのけぞってしまう。
「あのですね……環状地竜は誰でも狩れるから、討伐報告が多いんです。だからつい先日、報酬を減額することが決まったんですよ」
「そ、それはわかった。けどその態度は……?」
態度について言及すると、受付嬢はぎろりと睨み付けてくる。その剣幕に押され、二歩・三歩とあとずさった。追い打ちをかけるように彼女は立ち上がって、勢いよく両手をカウンターにつけた。
「環状地竜なんて十匹からニ十匹を狩るのが当たり前。それを五匹程度でわざわざ報告しないでくれます? 一桁なんて記録するのが面倒なんですけど!?」
「それは、その……前からそうだし」
「前からだから言ってるんですよ! ウッカ・ユリンさん?」
この受付嬢とはあまり顔を合わせた覚えがない。つまり、彼女たちの中で情報共有されているのだろう。それほど俺の報告がイレギュラーで面倒くさいのかもしれない。
しかし仕方ないのだ。俺が環状地竜の群れをすべて狩るには、よほどの運が必要になる。たいていは五匹前後しか仕留められないのである。
「だいたい亜竜狩りは集団で行うのが普通なんです! あなたみたいに単独で狩りに行く変態がいるから、私たちは苦労を強いられて」
最後まで聞かず、俺は受付嬢に背を向けて逃げ出した。背後から、腹に据えかねたらしい怒声が投げかけられる。
「待て、ウッカ・ユリン! チームを組めば、あなたなら――」
報酬は貰ったのだから、これ以上ここにいる理由はない。俺はさっさと依頼所をあとにした。