我、ここに在れり

文字数 585文字

 高校生ボーは、幼馴染から借りたままの聖書を返すために重い狙撃銃を携えて紀元65年のイスラエル周辺の地で敵を待ち伏せしていた。
 見渡す限りの荒野と満天の星空は時として人を詩人のように仕立てるのか、彼は狙撃銃のレティクルを見つめながら心の中で、こうつぶやいた。
 
 神がお据えになった乾いた大地に一人這いつくばって息を潜めてじっと敵を待つ。
 冷たい鉄の長筒を携えながら。終わりの時など考えもせず。茫漠たる世界の中で。
 敵である魔物ですらこんなことはしない。
 荒野に息衝く動物は意気揚々と自由気ままにどこかへと走り去っていき、そして彼らのねぐらへと帰っていく。
 荒野に吹き付ける風は砂を巻き上げながらあてもなく駆け抜けて、そして定められた場所へと拭き溜まる。
 夜空にある星々は漆黒の奥底から、眩い輝きを静かに放ちながら、人の一生をはるかに超えた時空の中で律動し、無限の軌道を描き続ける。
 天の御使いらは、それらを楽譜として神の偉業を称える賛美の歌を大いに合唱する。
 その澄んだ歌声は高ぶる波となって全宇宙に遍く響き渡り、生きる意味と目的とを、世に在る小さな生命のひとつひとつに至るまで授け示す。
 人間だけが、世界の営みに何ら参与せず、与えられたことをなすために、満天の星々の下で、夜風に震えながら、ただひたすら耐え忍んで、乾いた大地に這いつくばるのだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

高校浪人生ボー:


 本名は不明。ボーという名前はあくまで他人がつけたハンドルネーム。変調速度の単位であるbaudの意味なのか、日本語の某の意味なのかは定かではない。

 学力は並みスレスレ。基礎体力はあるが運動音痴。コミュ障成分配合済み。シューティングゲームが趣味。

 幼い頃にプロテスタント教会の日曜学校に通っていたので聖書は所有しているが、熱心な信仰者というわけではない。よって、幼児洗礼も受けていなければ、クリスチャンネームもない。基本善人ではあるが、世渡り下手なのでいまいち凡人の域を出ない。


幼馴染:


 ボーと同じ教会の日曜学校に通っていた女の子。母親を亡くした悲しみを乗り越え、素直に聖書の御言葉を覚えるという幼いながらも信仰心溢れる子供だった。

 長じては洗礼を受けてキリスト者になったであろうと思われるが、小学生の頃にボーと疎遠になってしまったために、現在の居場所や状況はボーは知る由もなかった。

 


リバイア:


 探しモノをお手伝いするという部活動を主催する素性不明、目的不明の人物。外見は女子高生の姉妹風だが、本当に人間かどうかもわからない。しかし、題名に名前が入っていることからも重要人物と思われる。


レビア:


 探しモノをお手伝いするという部活動を主催する素性不明、目的不明の人物。外見は女子高生の姉妹風だが、本当に人間かどうかもわからない。リバイアの助手として活動している。

ネフシュ:


 リバイアとレビアの部に所属する美少女型AI。ボーの助手として彼に随伴することが任務。ボーのことをご主人様と呼び、ボーに自分のことをネフシュたんと呼ばせるように初期設定されている。

題名に名前が入っていることからも重要人物と思われるが、詳細不明。

作戦地域:


 紀元65年パレスチナ地方の荒野。本作品の舞台となる場所である。

地中海性気候と砂漠性気候の中間の地域にある。

 周囲のほとんどは草木の少ない荒野が一帯を覆い、日中温度は太陽が昇るとともに上昇し、太陽が沈んだ夜はとても冷える。

ギリースーツと狙撃銃:


 ボーが、作戦行動中に装着するカモフラージュのため戦闘服の一種。

擬装用の岩で覆われているため、目視での発見は困難である。

耐火性に優れているが、構造上、廃熱処理に限界があるので、中はかなり暑く長時間装着することは困難である。

 狙撃銃は、旧日本陸軍が対戦車ライフルとして開発した九七式自動砲を現代仕様に改造したものである。スコープもトリジコン社のものをベースにしたカスタム仕様である。


トラクターカーゴ:


 小さな岩山に偽装された移動デポ。不整地走行ができるように車輪の代わりに多脚歩行システムを採用している。

 本体内には補給物資、居住区、武器庫、レギオンのメンテナンス設備などが備えられている。

随伴機動歩兵レギオン:


 人工知能で駆動する自律型戦闘マシン。

索敵、威力偵察、支援や援護などの用途で運用する。

 今回の作戦では6体で分隊を編成し作戦行動を行う。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み