第2話 家庭教師

文字数 794文字

 アレクザンダーは二歳になり、その頃にはエミリーの悪夢も消えていた。
 エミリーに手間をかけさせたくないという考えもあり、エドワードは家庭教師を雇うことにした。執事や女中がアレクザンダーの身の回りの世話をしてくれるが、言語教育や一般常識、情操教育は、家庭教師に任せようと思ったのだ。ただ宗教的な面に関しては、エドワードが直々に躾けるつもりだった。保育園に預ける考えは当初から無かった。アレクザンダーは重要な跡取りだ。どこの馬の骨とも分からぬ子供たちと一緒にする訳にはいかぬ。
 そこでエドワードは執事のモーリスに、家庭教師を雇うため、新聞に求人広告を出すように指示した。モーリスは早速、レミントン・スパー市街の新聞社に行き、求人広告の手配をした。広告は一度しか出さなかったが、四人の応募があった。応募者には直接館に来てもらい、面接を受けてもらうことにした。
 面接は、母のエミリーに担当させた。エミリーが、「我が子の教育を任せても良い」と思うような人材を採用すべきだと思ったからだ。応募者には若い女性が二人、ベテランの中年女性が二人応募してきた。エミリーによる面接の結果、彼女の推薦により、ベテランの家庭教師を雇うことにした。この女性、バーバラは、同じレミントン・スパーに住んでおり、地理にも明るく、家庭教師の経験が豊かであることが採用の決め手となった。
 早速、バーバラはクロウリー家に住み込んで働くことになった。エドワードは、しかし、バーバラが何故か気に入らなかった。慇懃無礼であり、貴族の子弟を教育した経験も豊富らしく、作法も心得ていたが、妙に落ち着いており、心の中でこちらを見下しているのではないかと想像してしまう。しかし、さすがに幼児の扱いは馴れており、アレクザンダーはすぐにバーバラになついた様子だ。バーバラの要望で、様々なおもちゃが、アレクザンダーに与えられることになった。
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登場人物紹介

【アレイスター・クロウリー】

イギリスのオカルティスト、儀式魔術師、著述家、登山家。オカルト団体を主宰し、その奔放な言論活動と生活スタイルで当時の大衆紙から激しいバッシングを浴びた。スピリチュアル哲学のセレマ思想を提唱し『法の書』を執筆したことで知られる。その波乱の生涯の中で数多くの著作を残しており、多方面に影響を与えた。

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