第9章 その後のポーター

文字数 2,459文字

9 その後のポーター
 このヒットの後、ポーターは業界で一目置かれるようになる。もっとも、映画はまだまだ舞台に比べて低級と思われ、大部分の作品は、ニッケルオデオンで数日上映されたらおしまいという具合に、使い捨てされているのが現状である。それを変えることにポーターは間接的にかかわる。彼は、1907年、訪れてきた脚本家志望の青年を『鷲の巣より救われて(Rescued from an Eagle's Nest)』に出演させている。この若者が後に『国民の創生(The Birth of Nation)』の監督で知られるD・W・グリフィス(David Llewelyn Wark Griffith)であり、これが映画界との最初のつながりである。この「映画の父(Father of Film)」を映画界にデビューさせたというのも彼の功績の一つである。

 ポーターは、1909年にエジソン社を去り、15年まで草創期の映画界で監督業など現場にかかわり続ける。えげつなさで知られる業界人アドルフ・ズーカー(AAdolph Zukor)とも手を組んでいた時期がある。17年、ビジネス界へ転進し、AV精密機器の会社の社長に就任するなどしている。

 エドウィンS・・ポーターは、1941年4月30日、ニューヨークのホテル・タフトで71年間の生涯の幕を閉じる。翌日のニューヨーク・タイムズ紙に、次のような彼の死亡記事が掲載されている。

 "Edwin S. Porter. Pioneer in Films. Collaborator With Edison on Invention of Motion-Picture Camera Dies in Hotel. Once Partner of Zukor. Ex-Head of Simplex Projector Company Was Producer of 'Great Train Robbery'".
〈了〉
参照文献
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ジョルジュ・サドゥール、『世界映画全史3』、丸尾定他訳、国書刊行会、1994年
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ラプランシュ=ポンタリス、『精神分析用語辞典』、新井清他訳、みすず書房、1977年
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Encyclopedia Britannica Online
http://www.britannica.com/
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http://www.institut-lumiere.org/
The New York Times
http://www.nytimes.com/
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