自殺のナゾ
文字数 3,091文字
今回、絶望青春クラブの部室を訪れたのは二年の女子、大森梓だった。
怪訝そうな声で聞くアリシア。
この街では一応、テレビを視聴することは可能だが、そこで呪われ人やこの街について取り上げられることはない。
この街では学校に限らず、基本的には戸締まりというものをしない。
何かを盗まれたり、いたずらをされたりすることがあまりないので、その必要性が薄いからだ。
なので、休日でも誰でも学校に入ることは可能となっている。
四人は絶望青春クラブの部室を出て、屋上に向かって歩いていく。
階段をのぼり、屋上に通じるドアのノブをアリシアが捻る。
鍵はかかっておらず、ドアはすんなりと開いた。
屋上に足を踏み入れる。
校舎は三階建てで、この街ではかなり高い建物の部類に入る。
屋上からは街を一望することかできて、視界を遮られることもなく、周囲を取り囲む山々を観察することも可能だった。
アリシアは屋上を取り囲むようにする転落防止用の柵に手をかけた。
それは人の腰くらいまでしかなく、軽々と乗り越えることもできそうだった。
アリシアは両手で柵をつかむと、そのまま下を覗きこんだ。
遥人が梓に向かって聞く。
と梓が答えようとしたとき、
アリシアの鋭い声が飛んできた。
なぜ、敬語を使わないのですか。
ハルトさんは一年生、アズサさんは二年生です。
つまり、日本語で言うところの先輩後輩の関係。
そのような場合には、下の年齢の人が敬語を使うのが基本のはずです。
上下関係に厳しいのが日本人であると、わたくしは学びました。
それが文化であるとも。
残念そうに言うアリシア。
心の死んだ呪われ人には、基本的に恐怖という感情は存在しない。
その言葉の意味がわからず、アリシアの反応が一瞬遅れる。
そうして、四人は屋上を後にした。