報告

文字数 1,160文字

妊娠……。
ええ、どうやら間違いないようです。
大樹の自宅を三人が訪れ、玄関先でアリシアはさきほど聞いてきた事実を伝えた。

衝撃的な事実を聞かされても、大樹に目立った反応はなかった。呪われ人としては当然だった。

相手は誰なんだ。
それが、わからないようなのです。

なので出来れば今度、本人に確認していただけないでしょうか。

ああ、わかったよ。
淡々としてんのね。

未来の嫁が妊娠してるなんて聞かされたら、もっと驚くべきだと思うけど。

呪われ人に無理言うなよ。
だってこれ、超衝撃的事実じゃん。

呪われ人でもびっくりするもんじゃないの?

むしろ、逆かもな。

この街では子供を産むことが義務になっているから、ラッキーだって考えることもできる。

子供を産むことが義務……。
前にも言ったかもしれないが、子供ができないってことは、この街が維持できないということでもある。

それはふういんの崩壊を意味するからな。

だから、呪われ人にとっては、子供をつくることが最大の目標とも言えるんだよ。

ダイキさんにも、そのような発想はあるのですか?
それはまあ、あるよ。

教師なんかからも、早めに子供を産むようにって、繰り返し言われてるからな。

要するに、呪われ人は子供を産む道具ってわけだね。
そのような表現はどうかと思います。
でも、実際にそうじゃん。

現実から目を逸らしても、何も良いことなんてないんだよ!

アカリさん、お静かに。

家族の方に迷惑ですよ。

別にいいよ。

おれは独り暮らしだから。

もしかして、ご両親はすでに亡くなっているのですか?
ああ。

二年くらい前に。

アリシア、忘れたのか。

呪われ人の寿命は三十代くらいなんだぞ。

高校生なら、親がいる方が珍しいくらいだ。

それは承知しています。

ただ……。

ただ?
いえ、なんでもありません。
これ以上は伝えることもなかった。

三人は大樹の自宅を出た。

独り暮らし、ですか。
玄関を出た直後、アリシアがそう呟く。
それがどうかしたのか。
アスミさんが以前、言っていました。

お店でダイキさんを見かけたとき、お母様のプレゼントを買っていたのかもしれないと。

覚えてるよ。

相談に来た日のことだろ。

ダイキさんのお母様はすでに亡くなっている。

ではなぜ、アスミさんはそのような印象を抱いたのでしょうか?

まあ、なんとなくじゃないのか。

実際に母の日が近いわけだろ。

呪われ人はあまり買い物をしない。

母の日にプレゼントをするような習慣もないはずです。

ですから、もしお店で買い物をしているところを見かけたとしても、それは最低限必要な食料品の購入であると、普通は考えるのではないでしょうか。

じゃあ、母親へのプレゼント的なものを買っていたということじゃないの?
それがそんなに重要なことなのか。
なんとなく、気になるのです。
考えすぎだよ。

相変わらず神経質だね、アリシアちゃんは。

それなら良いのですが。
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登場人物紹介

高橋遥人


物語の主人公

絶望の街の高校生

アリシア


転校生

バチカンからの使者


橘美緒


遥人の友人


杉田梨香


絶望青春クラブの最初の相談者

死にたがり

南明里


杉田莉緒の友人

何やら怪しい雰囲気

朝倉瞳


遥人の担任

瀬川透


遥人のクラスメイト

杉田直樹


梨香の弟。

大森梓


兄の自殺の真相を確かめてほしいという依頼人。

西村彩夏


自殺をした梓の兄のパートナー。

神城圭


総合病院の医者。

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