休日の誘い
文字数 1,706文字
休日とはいっても、街は静かなもの。外を出歩いている人は少ない。
遥人も何もしないまま、昼近くになっても部屋のベットに横たわっていた。
娯楽がなければ、趣味もない。誰もが同じような毎日を過ごしている。この街には受験も就職活動もない。高校を卒業すればそこから先のことは大人が決め、子供はそれに従う義務がある。努力が要求されることはないのだ。
遥人がぼんやりとしていると、ピンポーン、と玄関の呼び出し音が鳴る。
起き上がって玄関に向かうと、そこにいたのはアリシアだった。
呪殺結界の影響で、車は壊れやすくなると判明しているからだ。
ここでの移動の基本は歩きか自転車。自転車は車より壊れにくいが、そこまで遠出をするような機会はほとんどない。
この街には自然というものがなく、コンクリートの無機的な建物が並んでいる。
動物も飼われてはいない。結界外の山から迷い込むことはあるが、その場合、すぐに逃げ帰るか、呪いによって死んでしまうかのどちらかだ。
わたくし一人で調査をしたいと思います。
安心してください。
もしわたくしが何者かに殺されてしまっても、ハルトさんを恨むようなことはしません。
罪を憎んで人を憎まず、わたくしはただ、神のもとに旅立つのです。
遥人は特に同情するような気持ちにはならなかったが、殺人事件があったのは事実。
外の人間であるアリシアが殺害されれば、責任を追及されるかもしれない。
それはなんとなく、面倒だなと思った。