病院での会話
文字数 1,906文字
とりあえず、建物は学校と同じくらいの規模があるものの、そのほとんどは実質、使われてはいない。
呪われ人が入院することは稀なこと。
治療をしたいという願望もあまり沸かず、病気に気づいたときにはすでに死の直前だったということもある。
医者や看護師の数も限られているが、一応の知識は備えていて、最新とは言えなくても設備も整ってはいる。
外部の人間は呪われ人の苦しみを理解しようとはしないが、その体には一部、興味を持つ人もいる。
呪殺結界の中で長く暮らした場合、人の体にはどのような変化が起こるのかという、医学的な興味だ。
なので、ここで得られた情報は外部に渡されることが多く、そのための施設と言えなくもない。
他に患者らしき人はいなく、待ち合い室の席もにも誰も座ってはいなかった。
彼を診察直後に見た同級生は、いつもと変わった様子はなかったと証言しています。
一方で妹さんは、何かに怯えている様子だったと述べています。
そして、亡くなる直前にはとても穏やかな様子だった、とも。
このような話を聞くと、ただ単に病気を苦にした自殺とも言い切れないのではないかと感じてしまうのです。
医者はこの街では特別な立場にあると思っている。
他人との関係が希薄で、血の繋がりにすら意味がない。
そんな中で医者は唯一、呪われ人と向き合える職業だと、わたしは思っている。
痛みに鈍感で、苦しみを喜びと解することも多い呪われ人、そのような彼らが痛みや苦しみを吐露することのできるこの場所は、特別な空間でもある。
わたしはそれを否定したくはない。
わたくしはこの街の人々の心を取り戻したいと考えています。
あなたのその発想はまさしく人らしさを兼ね備えている。
わたくしはそれをなるべく尊重したいと思います。
ただ、別の質問は続けさせてください。
構いませんね?