初めての依頼
文字数 3,671文字
どんなに有能でもここからプロになんて行けないし、記録も全く残らない。思い出作りを楽しむ余裕はないし、スポーツなどを快感と感じる概念もない。
そんな場所に初めて誕生した絶望青春クラブ。
このクラブについて、アリシアは次のように説明をしている。
もっと正確に言うのなら、一緒に悩みを見つけることを目的としています。
みなさんは常に死を意識しているため、細かいことには気づかないようですが、実際には学生らしい悩みを抱えているはずです。
同じ呪われ人と一緒にいるとそれに気づくこともないようですが、わたくしのような外部の人間から指摘を受ければ、きっと本当の自分というものを見つけることができるはずです。
そうして活動初日、なぜか遥人は絶望青春クラブの部室の中にいた。
おれたちは自傷行為をよくするし、頼まれれば他人の肌にもナイフを入れることもある。
でもそれは、呪われている中での習慣とか儀式みたいなものなんだ。
外のやつらは長生きするために薬を飲んだり運動をしたりするだろ。
おれたちはその逆の常識で生きてるってことなんだよ。
体を傷つけるのはあくまでも趣味の範囲。呪われた体が欲するストレス発散方みたいなもの。自分や他人の命を奪ってしまえば、さすがに冗談ではすまなくなる。
そのためにはそれなりの人数も必要になる。
絶望と死が蔓延するこの街では、犯罪はある意味ではもっとも縁遠い概念とも言える。
年齢に関わらず、死は日常と共にある。家族の死であっても、特別な出来事ではない。
どこからも通いやすいように、中央に小、中、高の校舎が集められている。大学はない。
クラスは一学年に四つ程度。だからアリシアはみんな知り合いではないか、と考えたのだ。
友人を積極的に作ることもない。
一人でいるほうが、むしろ気楽とも言える。