第17話:パナマ文書で、暴かれた権力者の蓄財

文字数 1,724文字

プロジェクトにかかわった記者は約400人。世界76か国の100以上のメディア組織が協力したという。日本では共同通信と朝日新聞がこのプロジェクトに参加した。モサック・フォンセカは、世界の権力者や富裕層がパナマのタックスヘイブン「租税回避地」にペーパーカンパニーを設立し、資産隠しや麻薬・武器取引、脱税などに利用するためのアドバイスをしていたのではないか、と疑われている。

 モサック・フォンセカの40年にわたる秘密の記録を最初に入手したのはドイツの南ドイツ新聞と国際調査報道ジャーナリスト連合「ICIJ」それを100ほどのメディアで手分けし、1年かけてウラを取ったのが今回の報道だという。モサック・フォンセカの内部告発があったとみられるが、リーク元が誰かは明らかにされていない。

 国際調査報道ジャーナリスト連合「ICIJ」は、パナマ文書で名前の挙がった政治家や官僚や家族・友人の詳細なリストをもっている。そのなかには、カタールのハマド・ビン・ジャーシム・ビン・ジャブル・アール・サーニー前首相やハマド・ビン・ハリーファ・アール・サーニー前首長。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、バジャル・アサド大統領のいとこのラミとハーフェズ・マフルーフ。

 デービッド・キャメロン英首相の父親であるイアン・キャメロン......。これまでに公表されたのは全体のごく一部で、今後もどんな大物のどんな疑惑が世界を揺るがすか目が離せない。シグムンドゥル・グンラウグソン「アイスランド首相」グンラウグソンは英領バージン諸島のオフショア法人に数百万ドルを隠した疑惑をもたれている。パナマ文書によると、グンラウグソン夫妻は、2007年にウィントリスというオフショア会社を買った。

 そして、アイスランドの3つの銀行にあった資産を隠したとされる。3つの銀行は、2008年の金融危機で破綻した。パナマ文書の内容を知った国民は怒りを爆発させ、月曜に首相の辞任を求めて大規模なデモを行った。その後、グンラウグソンは、辞職した。ウラジーミル・プーチン「ロシア大統領」パナマ文書によると、プーチン関連とみられる隠し財産が、20億ドルにのぼる。

 プーチン本人の名前は出てこないが、プーチンの幼なじみで長女の名付け親でもあるチェリストのセルゲイ・ラルドゥーギンの名前がある。文書によると、ルドゥーギンはサンクトペテルブルグのプライベートバンク、ロシア銀行の株式の3.2%と、ロシア最大のテレビ広告代理店、ビデオインターナショナルの株式の12.5%を保有していることになっている。

 ジャッキー・チェン「香港の映画俳優」AFPによると、モサック・フォンセカを通じて6つの会社を持っている。一方、インドの映画スター、アミターブ・バッチャンは4つの船会社の役員に名を連ね、義理の娘で女優のアイシュワリヤー・ラーイは、オフショア法人の元役員とされている。リオネル・メッシ「スペインのサッカー選手」メッシと、他の有名選手20人の名前が挙がっている。

 メッシに加え、FIFA「国際サッカー連盟」関係者や欧州サッカー連盟「UEFA」のミシェル・プラティニ会長の名前もある。メッシと父親は、別件で、474万ドルの申告漏れを指摘され、脱税容疑で起訴されており、5月にも公判が始まる。モサック・フォンセカは、このリークに関して「我が社の方針と守秘義務により具体的なことは話せない」と声明を出した。

 「だが、報道に出ているような人々が、我が社の顧客でなかったことだけは確かだ」「我が社が設立した会社や提供するサービスが悪用されたことは遺憾に思う」
「真相を究明し悪用を止めさせるために必要なことは何でもする」「疑わしい行動や不正行為を発見したら、直ちに通報する」と、モサック・フォンセカは述べた。

 タックスヘイブン「租税回避地」の利用実態を暴露した内部資料がパナマの法律事務所から流出。約21万法人に上るペーパーカンパニーの情報などが、流出した。それに基づき、多国籍企業や政治家などが、所得税や法人税が極端に低いタックスヘイブンに所得を移転し租税回避を行っていることが明らかになった。日本の企業や個人も記載されていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み