第22話 関与したメンバー

文字数 1,864文字

【僕らと横須賀の水道山にハイキングに行った時】

「喜生さんが急に悪化した時があったよな。その時に、お前、喜生さんのイチゴの絵柄のパンツを持っていただろう。喜生にわざわざ、それを見せたんだ」
「そんなことは、してねえ」
「そうかな、美宇がとった写真に写っているこれは何かな?」
 
 僕は美宇がとった写真をとりだした。それは、イチゴの絵柄のパンツを持つ悟志さんと後ろに逃げようとしているネコが映っていた。

「悟志さん、写真だけではなく、喜生さんは覚えている。記憶をなくしてはいない。言わないだけだ。さっきみたいに、言葉にするまでには時間がかかるけど、喜生さんも少しずつ変化をしてきている。さっき、喜生さんは悟志さんを指さしていた。悟志さんも暴力に参加をしたのか?だとしたら僕は許せない、喜生さんの人生を返せ。どんな行動も言葉も無意味だ」


【悟志さんはニヤつきながら】

「許せない?笑わせるよな、お前なんかに許してもらわなくても痛くもかゆくもない。はっきり言って、僕は参加してないよ」
「そんなはずないだろ」
「見ていただけだよ、兄貴たちが犯すのを見ていただけだよ」

「やめろ」顔面蒼白のネコのお父さんが立ち上がった。僕はお父さんを無視して「悟志さん、そうであれば、兄貴たち、つまり、その現場にもう一人いたのですよね。玄馬さんが…」

「そうだよ」


【僕はネコを脅かす、すべての事を理解した】

「やはり、そうですか、それで、事情が飲み込めました。愛理姉さんから、玄馬さんが、なんてことをしてしまった。と言っていたことを聞いていたので、小介先生から話があったときに、すぐにわかりました。用事があるときにしか、サンとかかわらない玄馬さんが、発言する言葉ではないです。遅いですが…。きっと、玄馬さんは自分が衝動的に犯した罪が、その場限りで消滅しない事を悟ったのでしょうね。これで、やっと、最後の楔が揃いました。あの日、性的暴行と外傷を負わせた実行犯は、当時十六才だった悟志さんのお兄さんと玄馬さん、それを見ていたのは。悟志さんですよね。確証はないがそれに気が付いたお父さんと小介先生は、深い傷を負い血まみれになって道端に捨てられ、生きながらえたとしても被害者になった娘が尋常な生活を送れるはずもなく、死んだ方が幸せなんだと思ったのでしょうか?」


【娘の死を願う親がどこにいる】

お父さんは絞りだすように怒鳴ったが僕は続けた。

「お父さんと小介先生は未成年者の衝動的で狂った間違いを起こしてしまった子供たち三人を助けるために、危篤状態の喜生さんを、命の危険があったのに、救急車で九州まで搬送した。つまり、うまく死んでくれればそれで終わるはずだった。しかし、喜生さんは、体と心が不自由のまま生き延びて、横須賀に帰ってきてしまった。みなさんに、良心があれば、喜生さんを見るだけで、心が痛んだでしょう。良心があればね。しかし、皆さんの計算違いは喜生さんが生き残って帰って来ただけではなく、僕が登場し小介先生に、喜生さんに記憶がある事を告げてしまった事でした。あの時の僕は、なにも理解していませんでした。喜生さんが自分の誕生日は覚えているのに、自分を十六才だと思い込んでいるなど、韓国人の僕は、ちぐはくな日本人をなにも気にとめていませんでした」


【しかし、今ならわかります】

「力任せにいたぶられる十才の子が、いたぶられながら考えたのは自分が十六才であったら抵抗が出来る。こんな奴ら、やっつけられるという思いでした。喜生さんは、基本、弱い子ではありません。自分の意志をもち、困難に立ち向かう勇気のある人です。そう思うのは当然です。それも、あなた達は考えなかった。今にしておもえば、おかしいですよ。医師が治療の参考に中学生のぼくに喜生さんのようすを聞くなんてありえないでしょう。喜生さんに、事実を暴露されるのを恐れた、玄馬さん、悟志さん、お兄さんは、喜生さんを監視するようになり、喜生さんのからだとこころは、それに怯えた」


【そして、愛理姉さんと親しくなった玄馬さんは】

「お兄さんや悟志さん以上に、暴露されるのを非常に恐れた。事故だったのか、それとも故意に口封じのために殺したのか、わかりませんが、お兄さんが崖から落ちて死んだでしょ。故意だったかどうかなんて真実を僕らは知る必要がないと思っています。結果、玄馬さんが、背負っていく十字架だからです。愛理姉さんとの関係も、玄馬さんは本気かどうかわからない。喜生さんを監視する目的があったのでしょう。小介先生は、そんな息子さんを気にしていました」
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登場人物紹介

■僕/ウテ■…韓国名:김우태  金 佑泰(キム・ウテ)|名前の由来:おおらかに助ける

日本名:金高 佑泰(カネタカ ユウダイ)33才 身長185cm


韓国からやって来たウテ(僕)が日本に馴染めなかった中学2年生の時に、横須賀駅で喜生が起こした事故がきっかけで喜生と出会う。中学卒業と同時に帰国し、17年ぶりに喜生と再会する。

■喜生(きお)/ネコ■…晴川 喜生(はるかわ きお)32才 身長152cm

 

10才の時に犯罪に巻き込まれ、強度の対人(男性)恐怖症 PTSD。キジ猫のように敏感で怖がり人を信用しない。キム・ウテにネコと呼ばれる。オレンジアイは母方譲り

■咲枝ママ■…晴川 咲枝(はるかわ さきえ)喜生の母親。身長160cm


障害のある娘を力強く援護する。

■美宇■…韓国名:김미우|金 美宇(キム・ミウ)|名前の由来:愛くるしく正しい人

日本名:金高 美宇(かねたか みう)ウテの妹 26才 身長168cm 


ウテと共に日本人の喜生と過ごし開放的になる。

■愛理姉さん■…韓国名:김애리 金 愛理(キム・エリ)

日本名:金高 愛理(かねたか えり)身長164cm ウテの6才離れた従姉。


国籍の違う恋に悩む。

■カズヨ■…松谷 和代(まつたに かずよ)32才 身長158cm


喜生の小学校からの友人。ウテが初恋。サンを可愛がっている。

■母■…韓国名:남복자 南 匐子(ナム・ボクジャ) 

日本名:金高 福子(かねたか ふくこ)ウテの母親 身長165cm


病気の喜生に暖かい気持ちで接する。

■父■…韓国名:김종우 金 鐘佑(キム・ジョンウン)

日本名:金高 鐘佑(かねたか かねすけ) ウテの父親 身長178cm


息子を大きな包容力で暖かく根気よく見守る。大きな人

■小介先生■…月田 小介(つきだ こすけ)身長167cm 代々地元の開業医。


咲枝ママの幼馴染。喜生の主治医。

■玄馬さん■…月田 玄馬(つきだ はるま)身長170cm


小介先生の息子、愛理姉さんの同級生で彼氏。

■悟志さん■…大園 悟志 (おおぞの さとし)喜生の数軒先に住む。16才 身長173cm

■悟志の兄■…喜生の数軒先に住む。19才 身長172cm 


喜生に付きまとっている。喜生の父親の晴川幸治と同じ勤務先

■叔父さん■…韓国名:김종하:金 鐘河(キム・ジョンハ)

日本名:金高 鐘河(かねたかしょうか)愛理の父 ウテの叔父 身長177㎝


日本で苦労して事業を立ち上げた。日本人が嫌い。玄馬との交際を認めない。

■叔母さん■ …韓国名:오미숙:吳 味叔(オ・ミスク)

日本名:金高 叔子(かねたか としこ)愛理の母 ウテの叔母 身長166㎝


■喜生の父さん■…晴川 幸治(はるかわ こうじ)喜生の父親。身長175cm


事件に巻き込まれた娘に複雑な思いを持っている。

■シルク■…ルア(rua)。17才 身長170cm


アルバイト先がサンと一緒のベトナム国籍 日本に滞在中

■サン■…きおと同棲している若い男。身長 178cm


父親に無視されていると思っている。人生は半端ではなく、突き抜けるのが一番と考えるクールを装う高校生。

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