#88 挑戦試合

文字数 9,268文字

 オストレアの魔術特異症を指摘した方がいいのか、それともしない方がいいのか迷うところだが、矢の刺さった看板へ近づきつつある。
 パリオロムや周囲に不自然に思われないためには、多分余計な話をしている暇がない。
 会ったその日にアクションを起こしたということ、さっきから色々と観察してきていること、そもそも食いついてきたきっかけがルージャグ討伐の話をした後だということ……となると、オストレアは何かしらの条件に合う者をずっと待っていた可能性がある。
 本来ならばそこまでわかった所でこちらから首を突っ込むことなんてしないのだけど、俺はこの先三ヶ月はこの部隊に所属しなくちゃいけない。
 だとしたら、ある程度の信頼関係は結べていた方がいい……それに。

「そういや俺、オストレアと同じようにレムールを見ることができる人に会ったことがるよ」

 俺がそう言ったのは、フラマさんを思い出していたから。
 アイシスの牢屋で解放される直前に言っていたフラマさんの言葉を思い出す。
 『虫の牙』を、父の仇を、探していると。
 『虫の牙』の持ち主が、ディナ先輩やフラマさんのようにあちこちに敵を作りまくっていたとしたら、オストレアも同様に被害者に連なる者だとしたら、情報を共有できたら、それはディナ先輩のためにも……きっとなるよねって考えたから。

 オストレアが立ち止まった。
 彼女の前に、寿命の渦が薄い場所がある。

「ああ、そうだよ。そこに落とし穴がある」

 わっ、びっくりした。
 オストレアが、体の向きはそのままで頭だけ振り返ったから。
 そういやフクロウが頭だけ後ろ向けるっていうの、元の世界でも見たことあったな……知識としては知っていても、急に目の前でやられるとかなりホラー。

「それでさ、その人って鳥種(ホルスッ)の半返りの女性?」

 続けて小さな声で尋ねてきた。
 オストレアの挙げた特徴は、フラマさんと一致する。
 だがオストレアとフラマさんが敵対している可能性も考えなくちゃいけない。
 慎重に答えなくては。

「そうだ」

 フゥと溜息をつかれる。

「まったく……男ってのはどいつもこいつも……で、姉さんから何を聞いた?」

 姉さん?
 姉妹……やっぱりか。その可能性も考えてはいた。
 この反応だと、仲が良くはなさげだが、少なくとも敵対関係じゃないと見て良いよね?

「『虫の牙』を持つ者は父の仇だから、見つけたら教えてほしい、と」

「ベッドの上で?」

 この聞き方、ビンゴだな。

「いや、牢屋で。入れられた場所が隣同士でね」

 オストレアが目を細める……もしかして笑っているのかな?

「姉さん、何やってんの」

 オストレアは頭を戻し、再び歩き出す。
 俺も周囲に気を配りながら、後をついてゆく。

「それだけだよ。詳しいことは知らないんだ……姉さんっていうことは、オストレアにとっても『虫の牙』の奴は仇なのかい?」

「レムールを宿しているのだから、あんたも……リテルもそうなんじゃないの?」

 オストレアは振り向かず前へ前へと進みながら問いかけてきた。

 俺と『契約』する前のポーが、名前なきレムールだった頃、『虫の牙』から実際に傷として受けたのはディナ先輩だ。
 個人的には……俺が敵うのであれば、仇を取ってあげたいという思いはある。
 思いはあるけれど……俺からディナ先輩につながるわけにはいかない。

「俺は、その『虫の牙』というのを見たことがない」

 嘘にはならないよう、言葉を選ぶ。

「じゃあ大丈夫か。スノドロッフのように『契約』で入手したレムールということか」

 スノドロッフのことを知っているということは、『契約』のことを話しても良いのか?
 いやでもカマをかけているだけだったら?
 難しいな。何もかも秘密にしたら、信頼は得られないだろうし。

「確かに『契約』はしているけど……大丈夫ってどういうこと?」

「わかってて入隊したわけじゃないのか?」

「わかっててって?」

 何かあるのか?

「『虫の牙』を所持しているのが、第一傭兵大隊隊長タールだよ。あいつは『虫の牙』で召喚したレムールについては識別できるっぽいんだ」

 マジか……大隊の隊長って。
 え、ちょっと待って。じゃあ、会ったらバレるってこと?
 背筋がひゅっとする。

 いやいや落ち着け、俺。
 こういう時こそ思考を手放すな。
 まず状況を整理して、バレた場合の言い訳を用意する。
 ポーとして『契約』する前のレムールは、呪詛が組み込まれていた。
 俺が試しに作ってみた魔法『同じ皮膚』は、呪詛と干渉しなかったものだったらしく、呪詛と一体化したレムールは、ディナ先輩から俺の皮膚上へと移った……そして、俺の魔術特異症で呪詛が変異して……結果、その変異のおかげで不完全になった呪詛は、スノドロッフの『契約』を実行した際にポーを縛ることがなくなり、現在は形骸化している。
 『虫の牙』の呪詛は、移せも壊せもする。
 だとしたら、誰かが俺に押し付けた、という設定も可能じゃないか?
 それに部隊からの脱走はけっこうな重罪だ。
 できる限り、ここに残る方向性で考えていきたい……となると。
 ここは判断を、タールに対する態度を、先延ばしにするべきじゃない。

「俺は共闘するに値しそうか?」

 オストレアはまた頭だけこちらへと向ける。
 俺のことをじっと見つめているようだが……。

「訳ありではあるということか。大隊隊長へ挑戦する話って、把握しているか?」

 そういやプルマ副長がなんか言ってたな。

「挑戦する権利が……第一大隊第一小隊の各班長六名だけ……それ以外は特には」

「挑戦試合は毎月月初日に行われる。通常は班長が代表して戦い、勝てば班ごと上に上がれる。そのとき、第一小隊の班長だけは、上の班じゃなく大隊隊長本人に直接挑戦できる。規則的には、勝てばそいつが大隊隊長に、タールは入れ替わり班長に、ということだ。万が一入れ替わりが発生したところで、部隊の指揮はプルマ副長が行うから問題ないらしい。それに残念ながら、あいつが今まで負けた所は一度も見ていないし、過去にもないらしい」

 そんなに強いのか。

「タールはどうしてそんなことを?」

「戦うことが好きだと言っているがね……負けた方は酷いもんだよ。五体満足だった者は見たことがない。挑戦試合で大隊隊長に挑んで負けた奴は、勇気除隊と言って寿命提出なしで傭兵契約を解除できるのだが、寿命を提出しといた方が長生きできるのではと言われるくらいだ」

 嫌なことを聞いてしまった。

「前にも居たんだ。『虫の牙』の呪詛傷を宿した者が。そいつはボクより強かったが、タールに挑み、四肢を切り落とされた。最期まで諦めなかったが、そのまま事切れた」

 さらに嫌なことを……しかしオストレアより強い人が。
 オストレアだって、五班とはいえ第一小隊の隊長含む四人を返り討ちにしたくらいの腕前だってのに。

「そういえば前の班長たちって……それも挑戦試合で?」

「いや、殺しさえしなければ私闘は認められている」

「認められているの?」

 ずいぶんフリーダムなんだな。
 傭兵部隊とはいえ、そんなんで大丈夫なのかな……。

「複数人数で一人に襲いかかって返り討ちになるような連中は居なくなった方が部隊のためにもなる。ちなみにこの敷地内は、ギルフォドの外壁内で唯一、自由に魔法の使用が認められている……君も魔法を使うんだろ? その弓でルージャグを倒せるとは、申し訳ないが信じ難い」

 ギルフォドは隣国への最前線の城塞都市だけあって、通常の都市よりも壁の数も敷地の広さも三倍くらいある。
 一番外側にある外壁と二番目の中壁との間は「外壁内」と呼び、主に畑や、騎乗用動物の飼育場、傭兵隊の隊舎などがある。

「自分の手の内をすぐに明かすような者が、生き残れる場所なのかい? ここは」

 ディナ先輩の言葉を思い出し、ここはいったん引いてみる。
 オストレアは顔をまた前の方へと戻し、立ち止まる。
 矢の刺さった看板にたどり着いたようだ。
 俺はオストレアと入れ替わり、矢を抜き始める。

「さっきの質問にまだ答えてなかったな。リテルのことは信用できると感じる。だがそれと共闘とは別だ。ボクとリテルと二人がかりでも恐らくタールには勝てない」

 頭の中に、マドハトとメリアンの顔がよぎる。
 いやでもメリアンを巻き込むわけにはいかないか。
 マドハトだって、ただ魔法を使えるってだけで物理的な戦闘力はほとんどないもんな。

 オストレアとのひそひそ話はそこで終わり、俺たちは皆のもとへ戻った。



 それから屋内訓練場も案内してもらう。
 うちの学校の体育館よりも若干広そうだが、中は暗い……んだけど、寿命の渦はたくさん感じる。
 その動きは全体的にまったりしてて、特に訓練ぽいことをしているようには見えない。

「ああ分かるのか。中に居る連中はね、各小隊の五班、六班の連中だよ。屋内訓練場の灯りは点いてないけどね、隊舎の便所臭に比べたらどうってことないからね。ちなみに第二以降の小隊の一班、二班は上の小隊に上がれる実力がありながら、臭い思いをするくらいならとわざと上がらないのもよくある話だよ。上の小隊ほど給料も良いんだけどね」

 パリオロムが解説してくれる。

「でもね、夕食配給後は抜き打ちで部屋点呼が来るときがあってね、そのときに部屋に揃っていない場合は減給になることもあるから注意しなきゃだよ」

 その後、屋内訓練場の横の配給所も、真っ暗な状態のまま外から見学する。

「日々の食料が用意される場所だね。簡単な鍛冶も請け負ってくれるよ。どちらも昼間だけしかやっていないけど」

 そこまで紹介してもらったところで、抜き打ち点呼を警戒して部屋へと戻る。
 そしてそのまま就寝。
 悪臭に慣れないまま過ごし、寝不足気味の朝を迎えた。
 昼間、グリュプスの背中で寝させてもらえてなかったら、厳しかっただろうな。



 朝食の配給は、オストレアと俺とで受け取りに向かう。
 昨晩案内された配給所へ。

「よう、新入り!」

「どこの自警団だって?」

「今日の活躍を楽しみにしているぜ!」

「勝てよな」

 やたらと話しかけられた。
 オストレアが言うには、試験を免除してもらったというのはけっこう知れ渡っており、今日の挑戦試合では何らかの参加を促される可能性が高いとのこと。
 挑戦試合は傭兵隊にとって一種の娯楽と化していて、賭けの対象にもなっているらしい……なんて他人事みたいに聞いていた頃が懐かしい。

「どうした? まだ矢が残っているようだが?」

 ボロゴーヴが不敵な笑みを浮かべている……どうして、俺は第一小隊の一班班長と挑戦試合をさせられているんだ?
 とか言っている場合じゃない。
 次の矢を弓につがえる。

 距離が十分にあれば、槍使いであるボロゴーヴよりも弓の方が有利かも、とか思っていたのも最初のうちだけ。
 矢には峰打ちなんてないから、本当に刺さっちゃうよと俺自身の腰が引けてしまっていたこともある。
 でもね、一対一で向こうがこちらへ注意を十分に払っている場合、矢はかわされてしまうんだな。
 それならばと距離を詰めたら、向こうもそれに合わせて突進してきて、再び距離を取るまでにかなり冷や汗をかいた。
 矢はあと三本。
 覚悟ができるまでに時間をかけ過ぎている。
 尽きたら後は手斧しかないのに。
 槍対手斧……それすごくしんどいよね。

 そしてまたボロゴーヴがよく動く。
 矢にせよ魔法にせよ、狙いを定めさせない動きだ。
 二十代半ばくらいの鳥種(ホルスッ)。スタミナが切れそうな気配はまだまだない。
 これはもう、魔法なしで挑める相手じゃない。

 ただ、魔法を使う場合、魔術特異症と、壊れつつもまだ残存している『虫の牙』の呪詛とで、消費した魔法代償に対して、出力される結果が三倍近くなるんだよね。
 他人の魔法代償の集中の多い少ないが分かる状況で、『発火』のようにビジュアル的にその三倍がはっきりと見えてしまうものは、そこから魔術特異症を気取られてしまうかもしれないし、できるならば避けたい……とは言っても攻撃魔法はほとんど習っていないのが痛い。
 オリジナル魔法はもちろん隠しておきたいし、魔法代償の集中をするときだって『魔法偽装』は使わずに、あえて見せる方向で発動させないとな。

 とか言っている間にほら、また近寄ろうとしてきやがる……牽制で射って、矢はあと二本。

 腕組みをしながらこの挑戦試合を見つめている大隊隊長タールをチラ見する。
 見た目は先祖返り烏顔の鳥種(ホルスッ)だが、フラマさんやオストレア同様に、細かく見ると異質さを感じる寿命の渦。
 さっき、こいつが言い出した対戦カードは、第一小隊一班から四班までの各班長と、俺たち新参四人のそれぞれ一騎打ち。
 観客である傭兵部隊の皆さんは大盛り上がり。
 昨日は案内されなかった闘技場めいた施設へと移動して、トップバッターは俺で……今に至る。

 ローマのコロッセオみたいな円形闘技場。ローマに比べたらさすがに小規模だけど。
 観察されながらってのは嫌なもんだな。
 とにかく生き残るのが第一だ。
 仕方ない。
 まだ選択肢があるうちに魔法を使おう。

 魔法代償の集中を始める……と、ボロゴーヴは前後左右にとフットワーク軽く位置をこまめに変え続けている。
 当然『魔法転移』対策だな。

 つがえていた矢の(やじり)を少し戻し、矢を握っていた右手を懐へ。
 隠し持っていた幾つかの小石を握りしめ、魔法を発動する……『魔法付与』で『発火』。
 距離が定まらないよう動き続けていたボロゴーヴへダッシュで近づくと、向こうはさっきとは異なり突進しては来ない。
 槍の射程よりは距離があるうちに、俺はボロゴーヴとの間に小石をばらまいた。

 警戒するボロゴーヴに対し、魔法代償を集中しながら再び弓を引き絞ると、ボロゴーヴが初めて明確に後退する。
 そこに向かって更に踏み込み、さっき転がした小石の一つを、ボロゴーヴに向けて蹴った。
 よし。同じタイミングでさっきの『魔法付与』した『発火』が発動……もちろん別の小石。
 意識を散らしたその状態へ矢を放つと、ボロゴーヴは避けきれず、左のふとももに矢が刺さった。

 すぐに次の、最後の矢をつがえるとき、(やじり)に『接触発動』で『発火』。
 動きが鈍ったボロゴーヴへ俺は矢を放った。





● 主な登場者

有主(アリス) 利照(トシテル)/リテル
 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、呪詛にて不能となったが、ようやく解放された。
 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)
 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。

・カエルレウム師匠
 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)
 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
 自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。

・ルブルム
 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。
 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えていたが、とうとうリテルとキスをした。
 質問好きで、知的好奇心旺盛。リテルと一緒に旅に出るまでは無防備だった。
 利照へ好意を持っていることを自覚し始めている。レムとも仲が良くなった。

・マドハト
 赤ん坊のときに『取り替え子』の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。
 今は犬種(コボルトッ)の先祖返りとしての体を取り戻したが、その体はあんまり丈夫ではない。コーギー顔。
 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、ずっとついてきている。
 クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
 明るい性格。楽しいことばかり追い求めるゴブリン的思考だったが、利照と一緒にものを考えるようになった。

・ディナ先輩
 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。ゴーレム作成の魔法品をくれた。
 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。ウォーリント王国のモトレージ白爵(レウコン・クラティア)領にて壮絶な過去を持つ。
 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。

・メリアン
 ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。二つ名は「噛み千切る壁」。
 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。一ヶ月後だったラビツとの結婚はさらに二ヶ月延期になった。

・ラビツ
 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
 ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪ったことについて謝罪した。おっぱい大好き。
 高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」という傭兵集団に属している。ようやくリテルたちと会えた。

・レム
 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
 その母親は利照同様に異世界(イギリス)から来た。
 名無し森砦の兵としてルブルム一行の護衛として同行。洞察力があり、頭の回転も早い。
 利照のことをお兄ちゃんと呼び、慕っている。ルブルムやマドハト同様に頼れる仲間だが、とうとうリテルとキスをした。

・ケティ
 リテルの幼馴染で想い人。一歳年上の女子。猿種(マンッ)
 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。

・ファウン
 アイシスの街で意気投合した山羊種(パーンッ)三人組と一緒に居た山羊種(パーンッ)
 ルージャグに襲われて逃げてきたクーラ村の子供たちを、彼なりに助けようとはしていたと申告。
 リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。偽ヴォールパール自警団作戦に参加

・タール
 第一傭兵大隊の隊長。『虫の牙』の所持者。
 戦闘狂っぽい。

・プルマ副長
 第一傭兵大隊の万年副長。鼻梁に目につく一文字の傷がある羊種(クヌムッ)の女性。
 筋肉が大好きっぽく、メリアンに会えたことに興奮していた。

・パリオロム
 第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。猫種(バステトッ)の先祖返り。
 毛並みは真っ白いがアルバスではなく瞳が黒い。気さく。

・オストレア
 第一傭兵大隊第一小隊第五班の先輩。鳥種(ホルスッ)の先祖返り。真っ白いメンフクロウ顔。
 前班長を含む四人に襲われかけたが返り討ちにし、そいつらの棒を削ぎ落とした。
 フラマの妹であり、タールを父の仇と付け狙う。

・フラマ
 アイシスの宵闇通りの高級娼婦。おっぱいで有名。
 鳥種(ホルスッ)の半返りのようだが、嘴はない。足は水鳥のよう。
 魔法を使え、他の人には見えないはずのポーの姿が見える。
 『虫の牙』を持つ者が父の仇。

・ボロゴーヴ
 一班班長。鳥種(ホルスッ)。二十代半ばの槍使い。

・ナイトさん
 元の世界では喜多山(キタヤマ)馬吉(ウマキチ)。元の世界では親の工場で働いていた日本人。
 四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種(エポナッ)。元はニュナム領兵の隊長をしていた。
 今は発明家兼ナイト商会のトップ。ヒモパンやガーターベルトやコンドームの発売もしており、リテルを商会に誘ってくれた。
 サスペンションなど便利機能がついた馬車「ショゴウキ」(略してショゴちゃん)を提供してくれた。

・レムルース
 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。

・ルージャグ
 元々は地界(クリープタ)の種族。こちらの世界(ホルトゥス)に稀に出現するが、その危険性ゆえ、すぐに討伐される。
 ぼろきれをまとったむさ苦しい女の姿だが、獣種の三倍ほどの体長を持ち、村の防壁を壊すこともある。
 湖をねぐらにし、手当たり次第に人を捕らえて殺す。


この世界(ホルトゥス)の単位

・ディエス
 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。

・ホーラ
 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
 元の世界のほぼ一時間に相当する。

・ディヴ
 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
 元の世界のほぼ五分に相当する。

・クビトゥム
 長さの単位。
 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。

・アブス
 長さの単位。
 元の世界における三メートルくらいに相当する。

・プロクル
 長さの単位
 一プロクル=百アブス。
 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。

・通貨
 銅貨(エクス)銀貨(スアー)金貨(ミールム)大金貨(プリームム)
 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)
 十銀貨(スアー)(十二進数なので十二枚)=一金貨(ミールム)
 十金貨(ミールム)(十二進数なので十二枚)=一大金貨(プリームム)

・暦
 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
 第八十八話終了時点では火の月、月昼週の一日の午前中。
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