#64 宵闇通り

文字数 8,851文字

「来てくれたんだっ!」

 満面の笑顔で真っ直ぐにこちらに走ってくる。エクシの方にではなく、俺の方へ。
 本当にチェッシャー?
 え、でも、チェッシャー達はフォーリーに向かったんじゃなかった?

「私が今、こうしてここに居られるのもあなたのおかげなんだから」

 やっぱりチェッシャーなのか。
 そのチェッシャーはといえば、エクシには脇目も振らず、俺の両手をつかんでブンブンと上下に揺さぶる。
 さらに尻尾はピンと立ち、小刻みに震えている。

「わざわざ来てくれたのねっ! ほんと嬉しいなぁ!」

「おいっ! ちょっと待てお前っ!」

 エクシがチェッシャーの肩をぐいっとつかんで自身の方へ向かせる。
 あれだけにぎやかだった周囲がしんと静まり返り、俺たちは一斉に注目を浴びる中、チェッシャーは俺から手を放し、エクシの手をゆっくりと自分の肩から降ろさせた。

「ごめんなさい。私、物覚え悪くて……以前、お世話になったお客様でした?」

「あ、ああ……」

 エクシの頬が紅潮する。

「お前がっ! 今までで最高ですと泣いてよがったお客様だっ!」

 チェッシャーは少し困った顔で俺の方をちらりと見てから口を開くが、何かを言いよどむ。

「早く終る客は最高だよっ!」

 周囲のどこからか野次が飛ぶ。
 クスクス笑いが広がる。

「小さすぎて覚えてないって!」

 また野次が飛び、今度はどっと笑いが起こる。

「てめえらっ! 穴風情が客に向かってなんて言い草だっ! これだから半返りは」

 エクシはその怒りで拳を作り、チェッシャーの顔に向けて振りかぶる。
 俺は慌ててチェッシャーの手を引き、代わりにエクシとの間に割って入った。

「ダメです!」

 エクシは俺をぐっと睨み、俺の顔の前に拳をゆっくりと突き出してから手を開く。

「……恥かかせやがって……覚えてろよ。皆にはお前が娼婦の下の口に聞いて回ってるって伝えておいてやるからな」

 悪役っぽいセリフを吐き捨てつつ踵を返したエクシ……その前に、大きな影が二つ。
 河馬種(タウエレトッ)象種(ガネーシャッ)……どちらも男だから、もしかして用心棒とか?
 それにしても象種(ガネーシャッ)の耳、でかいな。

「あんた、ここが半返りばかりの通りだってわかった上で何度も来てんだろ」

「金も払わずに売り物けなす奴ぁ客とは呼ばれんよ」

 エクシ……口では昔からあれだけ半返りをバカにしておきながら、何度も通ってんのかよ。

「安い挑発だな」

 うっわ。エクシ、お前の方こそ挑発しないでくれよ。

「エクシさん! こっち来てぇ! ね。アタシが気持ちよくなるよう頑張るからさぁ……ね! 気持ちもおさめておくれよぉ」

 群衆をかき分けてやってきた犬種(アヌビスッ)の半返りの女性が、エクシの腕にしがみつき、強引に横道へ連れてゆく。
 エクシは案外素直にその女性に引かれるまま、横道へと消えた。
 それを見届けた用心棒っぽい二人も人混みへと紛れて見えなくなる……というか、いつの間にか、俺とチェッシャーが取り囲まれているんだけど。

「お兄さん、かっこいいじゃないか! 惚れたよ! うちで遊んでいかないかい?」

「私は下の口のおしゃべり上手だよっ!」

「うちは割引してあげるよっ!」

「ねぇ、こっちはどうよ? その子より絶対にいい思いさせてあげるから!」

 露出が多くゆったりとしたワンピースを着た女性たちが、衣服を自ら引っ張り胸元や脚を見せつけて口々に俺を誘う。
 元の世界の利照(おれ)だったなら赤くなって、ただただこの勢いに圧倒されていただろう。
 でも今の俺は違う。
 幾度となく遭遇した破廉恥な接触と目撃の数々が俺の心を鍛えたんだ。
 だから気付ける。
 今がチャンスなのだということに。

「あの、すみません。実は人を探しているのですが……」

 一瞬、静まりかえる。

「えー? お探しの人は、このチェッシャーちゃんじゃないの?」

 チェッシャーが俺の腕を抱き込み、胸を押し付け、顔を覗き込んでくる。
 明らかに当てているってやつだ。
 心の中でマドハトの変な歌を思い出し、冷静さを取り戻す。

「チェッシャー、わかってほしい。大事な用事で人を探している。俺の仕事なんだ」

「しょうがないなぁ。じゃあ、どんな人か特徴言ってみてよ」

「四人組で、兎種(ハクトッ)が一人、猫種(バステトッ)の先祖返りが一人、猿種(マンッ)が二人。傭兵やっているからいい体している。で、その兎種(ハクトッ)がかなりのおっぱい好きで……という聞き込みをしていたら、宵闇通りのフラマさんを訪ねろって言われて……」

 チェッシャーが見るからにがっかりする。

「私を訪ねてきてくれたわけじゃないんだ……」

「あ、いや、ほら、チェッシャーはまだアイシスへは戻ってないと思っていたから」

「そうねー。定期便馬車、何日か止まっていたものね。でも盗賊団が捕まったって連絡が来て、翌日はもう定期便が再開したんだ」

 そういやスレイ・ベガに襲われた公共夜営地で出会った定期便に乗ってた人たちは、フォーリーからの便が到着したとか言っていたっけ。
 名無し森砦で無駄に待たされていた間に抜かされたのか。

「確かにおっぱいならここいらじゃフラマが一番だ。それにそういう四人組、見た気がするなぁ」

 おお! 俺たちを取り囲む人々の中から頼もしい答えが!
 ようやくラビツの影をとらえられたのか。
 聞き込み、捨てたもんじゃないな。

「でもこの時間なら客と一緒だから明日になるまでは会えないよ」

「ねぇねぇ、どうせ待つならベッドの上で一緒に待たない?」

「あたしと一緒はオススメしない。フラマのことなんて忘れちゃうと思うから」

 お姉さん方、商魂たくましいなぁ。

「いえ、情報は感謝しますが、待たせている仲間も居ますし」

「えー? 帰ろうとしてる? ちょっとくらいお礼させてよー」

 チェッシャーが横でむくれる。
 するとお姉さん方が、面白がって余計に口説いてくる。
 結局、一番面倒くさくなさそうな脱出方法として、チェッシャーについて行くという選択をした。

 幾つかの路地を曲がり、時には建物の中を通り抜け、小さな部屋へと行き着いた。
 そこには、チェッシャーによく似た、とても美人の……だけどかなりやつれた猫種(バステトッ)がベッドに横たわっていた。

「初めまして。私はグリニー。チェッシャーの姉です」

「初めまして。俺は……」

 チェッシャーになら、もういい加減名乗ってもいいかな。

「リテルと言います。チェッシャーとは街道で偶然出会って」

「聞きました。助けてくださったそうですね。おかげで私も妹も命をつなぐことができました」

 チェッシャー、ちゃんと薬をゲットできたのか。良かった良かった。

「僕からも礼を言わせてもらうよ」

 急に背後から声がした。
 慌てて振り返ると人が居る……痩せた男……猫種(バステトッ)で年齢的にはかなり上……おじさん?
 やけに目がギョロギョロしている。
 でも。この人、寿命の渦が見えない。だから気づけなかったんだけど。

「怖い顔をしないでくれたまえ。僕に敵意はない。君は『魔力感知』か『気配感知』を使えるのだろう。普段から感知を併用している人は、そうやって感知で感じられない人に出会うと驚くものだよ……申し遅れたが、僕はクラーリン。グリニーに惚れている一介の魔術師だ」

 チェッシャーに魔法を教えたっていう魔術師か!
 しかも今教えてくれたことって何気にけっこう大事なことだよね。
 そういう見破り方もあるんだな。

「俺は……魔術師見習いです」

「見習いか! なるほどなるほど。だから色々と素直なのだな」

 素直?
 もしかして、魔術師と名乗られて魔術師見習いだと答えたあたり?
 それ以外にも俺は何かやらかしている?

「ああ、警戒しないでくれたまえ。僕からもお礼がしたいと思ってね」

 魔術師クラーリンは笑顔を浮かべるが、目がギョロっとしていて悪巧みしているようにしか見えない。
 でもお礼って……魔法を教えようと……するフリをして魔法をかけてきたり?
 なんか信用するのが不安というか。
 だってそもそも、チェッシャーが教えてもらっていた二つの魔法って、相手の下心を「ひとつまみの祝福」として利用した睡眠魔法『愛しの夢見』に……『死んだふり』!
 そうか。寿命の渦が見えなかったのは『死んだふり』を使っていたのか。

「リテル、君は思考や感情が表情に出過ぎる。今後は自分の感情が高ぶったときの寿命の渦を覚えておくといい。微妙だが変化しているんだよ。そしてその寿命の渦を何もないときに再現したまえ。寿命の渦で感情を再現すると、表情や態度にもその感情のとき同様の気配を出すことができる」

 感情をコントロールするってレベルじゃないな……寿命の渦一つで本当にいろんなことができるんだな。
 それも魔法を使わずに。

「そんなことができるんですね。ありがとうございます」

「君にはちゃんと師匠がいるようだからあまり口を出すつもりはないがね、魔術師ならば動作を並行して行えるようになっておいて損はないよ。特にここから北へ行くなら身を守る術はいくつも覚えておきたまえ」

 それに並行動作って、カエルレウム師匠に教わった寿命の渦を常にコントロールするってやつと考え方は一緒じゃないか。

「勉強になります。教えていただき感謝しま」

 驚いた。
 クラーリンさんが急に一輪の花を取り出したのだ……手品?
 魔法代償の集中は全く感じなかった。

「今のは『新たなる生』という魔法だよ。君へのお礼として教えようとしているんだが、どうだい? 受け取ってくれるかい?」

 グリニーさんにではなく、俺に向かって差し出された花を受け取ろうとした瞬間、花はフッと消える。
 花の寿命の渦も一緒に、だ。
 やはり魔法だったのか?
 でも、魔法代償を……『魔法偽装』した?

「今のは『魔法偽装』ではないよ。もっと単純で簡単なことだ。わかるかな?」

 そう煽られて簡単に降参するわけにはいかない。
 俺が無能だと、カエルレウム師匠が貶められる恐れがあるってことだよね?
 負けられない。思考しろ。考えるんだ……『魔法偽装』ではない……ということは、集中していない……集中しないで集められる?
 集めない……移動するだけ、とか?

 そのとき俺の左腕の手のひらの中で、ポーがぬるりと動いた。

 そうだな。移動ならありえる。魔法代償の移動は、感知できないよね?
 でも、だとしたら……集中はバレるのに、移動はバレない……ん?
 魔法代償の集中って何を感じ取っているんだ?
 寿命の渦から切り離す瞬間? いや、寿命の渦から切り離す前にわかっている……気がする。
 となると……んんん?

「もう一回やろうか? もう一回ならできるから……ほら、手を出して」

 クラーリンさんが差し出した手に、俺もそっと手を置く。

「『新たなる生』は、自分が寿命の渦を知っている生物の幻影を作り出す魔法だ。その幻影は本物同様に寿命の渦を持つ。ちゃんと感知される。ただし、幻影に触れられてしまうと、幻影も寿命の渦も両方消える。もちろん幻影も、形をよく把握しているものじゃないと再現できない。幻影はあくまでも外観だからね、よく知っているものであれば、着せ替えることだってできる」

 まただ。
 何の前触れもなく魔法が実行された……ああ、これが『新たなる生』か。
 幻影を作るというイメージが頭に流れてくる。
 そこに強く「在る」と思うことで、見せかけだけの存在を作り出す……なるほど。こんな感じに「在る」と思うのか。

「ありがとうございます」

 待て。
 回数制限がある?
 ということは、事前に準備していた?
 まさかそれも魔法で?
 俺がポーに餌をあげるとき、集中した魔法代償を自分の中からポーの中へ移動させる……それを、魔法で予め作っておいた領域へ格納しておく、とか?

「事前に準備しておくんですか? そしてそれをしまっておく魔法があるんですか?」

「君はなかなか筋がいい。僕の兄弟子達は誰一人気づけなかったのに、こんな短時間でそこまで考えるとは……だが、それでは半分しか合っていない」

 半分。
 半分ってことは……事前準備か、魔法か、どちらかが不正解。
 こういう時、こういうタイプの人って、今までのやり取りの中にヒントが隠されたりしているパターンないか?
 ふと頭をよぎったのは、動作を並行……。

「もしかして、ずっと集中したまま……ですか」

 魔法代償を一ディエス、集中する。
 そしてそれを指先に移して……移しておくだけ。

「ご名答。その状態で、使うときまでずっと集中を維持するんだ」

「……こんな簡単な方法があったんですね」

「あはは。君は優秀なんだね。集中を維持するのは並大抵なことじゃないよ」

「そう! リテルすごいよ! 私は、それ集中してる間、会話できなくなるもん!」

 さっきから黙って見ていたチェッシャーがキラキラした目で俺を見つめている。

「あ、あとね、さっきの……『愛しの夢見』使っただけだから。だからあいつがどんな欲望を夢に見たかは知らないし、顔も覚えてなかったし……誰にだってそうだったから……だから、もしリテルが私を抱いたら、私、初めてだから」

 顔を真っ赤にしながら、家族や他の人が居る前でするような内容じゃない話を……ああ……でも、なんだか胸がスッキリしている自分にも気付く。
 いやいやいやいや。
 こ、これは恋じゃなくてですね……もちろんチェッシャーは可愛いし、好意を持ってもらえること自体すごく嬉しいけれど、でも、そういう感情じゃなく、エクシに酷い目に合わされたんじゃなくて良かったっていう……。

 ただでさえ、ケティとルブルムの間で神経すり減らしているところにレムまで居て……ってハーレムじゃん。
 はたから見たらこれ言い訳できない状況だよな。
 俺がもし、呪詛にかかっていなかったら……いや、そしたらそしたできっとディナ先輩にちょん切られてた可能性大か。

 ラビツに近づいているんだ。
 俺の呪詛が解ける日もそう遠くない……はず。
 だとしたら、今のうちにもっと自分の中の紳士を磨いておかないと、勃つようになったとき、とんでもないことになる。

「チェッシャー、たくさんありがとう。また明日、フラマさんの所への案内を頼めるかな?」

 あくまでも紳士として接する。
 あくまでも紳士として今は去る。

「いいよ」

 チェッシャーがやけに明るい笑顔。

「でも、明日は別料金。で、先払いだから」

 チェッシャーが俺の……両耳をつかんだ?
 あ、これ、もしかして。





● 主な登場者

利照(トシテル)/リテル
 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)
 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
 現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。

・カエルレウム師匠
 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)
 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。

・ルブルム
 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。
 かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
 質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
 ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。

・ディナ先輩
 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。壮絶な過去を持つ。
 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。

・マドハト
 赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種(コボルトッ)の先祖返り。コーギー顔。
 今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。
 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。
 リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。
 フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。
 勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。

・ケティ
 リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種(マンッ)
 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。
 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。
 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。
 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。

・エクシ
 ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。
 村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。
 ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人。
 ルブルム一行の護衛として同行。過去にチェッシャーを買い、魔法で惑わされた。

・娼婦
 エクシのことをかばった犬種(アヌビスッ)の半返りの娼婦。

・ラビツ
 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。

・レム
 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。
 リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
 その母親は利照同様に異世界(イギリス)から来た。
 現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
 ルブルム一行の護衛として同行。

・チェッシャー
 アイシス出身の猫種(バステトッ)の半返りの女子。あざといくらいに無防備な姿をしているが、魔法を使う。
 姉のために寿命を売りにフォーリーへ向かう途中、乗っていた馬車定期便が襲撃により横転したため、その近くに隠れていた。
 チェッシャーたちの命を取らなかったリテルの唇を奪い、銀の髪飾りをくれた。
 リテル達が名無し森砦で待たされている間にアイシスへ戻ってきていた。

・グリニー
 チェッシャーの姉。猫種(バステトッ)。美人だが病気でやつれている。
 チェッシャーがフォーリーで稼いだお金で買った薬で命をつないだ。

・クラーリン
 グリニーに惚れている魔術師。猫種(バステトッ)。目がギョロついているおじさん。
 チェッシャーに魔法を教えた人。リテルにも魔術師としての心構えや魔法を教えてくれた。

・レムルース
 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。

・スレイ・ベガ
 元々は地界(クリープタ)の種族だが、今回遭遇したのは、この世界の妖精丘(ノウ)に居着いている。
 人型で背が低い。干渉しなければ無害だが、怒らせた場合は容赦なく襲ってくる。
 群れの長は目と耳とを惑わす曲を奏でる楽器を持つ。


この世界(ホルトゥス)の単位

・ディエス
 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。

・ホーラ
 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
 元の世界のほぼ一時間に相当する。

・ディヴ
 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
 元の世界のほぼ五分に相当する。

・クビトゥム
 長さの単位。
 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。

・アブス
 長さの単位。
 元の世界における三メートルくらいに相当する。

・プロクル
 長さの単位
 一プロクル=百アブス。
 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。

・通貨
 銅貨(エクス)銀貨(スアー)
 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)

・暦
 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
 第六十四話終了時点では星の月夜週の四日の夜。
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