第6話
文字数 830文字
「武田さん」
「はい」
声の主は研修担当の辻さんだった。
仕事には厳しいけど、慣れない私に根気よく指導してくれている。
「LIN☆を交換しませんか」
「はい?」
「こっちの方が連絡を取りやすいので」
「はぁ……」
仕事で使うのなら仕方がない。
きっと若い人はメールよりLIN☆の方が使い慣れているのだろう。
「あれは京子に気があるわね」
辻さんがいなくなったところで裕子が声をかけてきた。
「何を言っているのよ。向こうは二十代よ」
「正確には二十七ね」
どっちでも同じ、二十代には変わりない。
「私は三十三よ? 結婚していることだって知っているはずだし」
「あっ、お昼だ。一緒に行こう」
裕子のペースに引き摺られたまま、社食へと連れて行かれた。
節約のためお弁当を作るべきなんだけど、敦仁が給食だからつい。
それにここの社食はメニューも豊富で美味しい。今日は南蛮漬け定食にした。
「京子、旦那さんと上手くいっている?」
「急に何よ」
驚きと少し酢の利きすぎた鯵で喉を詰まらせてしまう。慌ててお茶を飲めば、熱い喉ごしにまた咳き込んでしまった。
「大丈夫?」
「うん……裕子が変なことを言うからよ」
「ごめん。十年も経つとただの同居人になったりするのかなって」
もう一度飲もうとした湯飲みをテーブルに置く。
同居人。確かにそうかもしれない。家政婦よりかはマシな言い方だと思った。
「裕子のところは新婚だから心配ないでしょう。記念日も二人で祝うくらい仲がいいのに」
「私はね」
あっそう。心の中で相槌を打っておいた。
「男ってさ、弱った女性に鼻が利くと思わない?」
「そうね。でも私には関係ないし」
「何を言っているんだか。ニュースとか見ていないの?」
確かに芸能人の不倫ネタは多い。
俳優生命が危うくなった人もいるというのに、同じことをする人が後を絶たない。
「社内でも結構いるわよ」
「まさか」
「例えば営業部長と林田さんとか」
営業部長と言えば、おしどり夫婦で有名な人だ。
それが二十代半ばの林田さんと!?
「はい」
声の主は研修担当の辻さんだった。
仕事には厳しいけど、慣れない私に根気よく指導してくれている。
「LIN☆を交換しませんか」
「はい?」
「こっちの方が連絡を取りやすいので」
「はぁ……」
仕事で使うのなら仕方がない。
きっと若い人はメールよりLIN☆の方が使い慣れているのだろう。
「あれは京子に気があるわね」
辻さんがいなくなったところで裕子が声をかけてきた。
「何を言っているのよ。向こうは二十代よ」
「正確には二十七ね」
どっちでも同じ、二十代には変わりない。
「私は三十三よ? 結婚していることだって知っているはずだし」
「あっ、お昼だ。一緒に行こう」
裕子のペースに引き摺られたまま、社食へと連れて行かれた。
節約のためお弁当を作るべきなんだけど、敦仁が給食だからつい。
それにここの社食はメニューも豊富で美味しい。今日は南蛮漬け定食にした。
「京子、旦那さんと上手くいっている?」
「急に何よ」
驚きと少し酢の利きすぎた鯵で喉を詰まらせてしまう。慌ててお茶を飲めば、熱い喉ごしにまた咳き込んでしまった。
「大丈夫?」
「うん……裕子が変なことを言うからよ」
「ごめん。十年も経つとただの同居人になったりするのかなって」
もう一度飲もうとした湯飲みをテーブルに置く。
同居人。確かにそうかもしれない。家政婦よりかはマシな言い方だと思った。
「裕子のところは新婚だから心配ないでしょう。記念日も二人で祝うくらい仲がいいのに」
「私はね」
あっそう。心の中で相槌を打っておいた。
「男ってさ、弱った女性に鼻が利くと思わない?」
「そうね。でも私には関係ないし」
「何を言っているんだか。ニュースとか見ていないの?」
確かに芸能人の不倫ネタは多い。
俳優生命が危うくなった人もいるというのに、同じことをする人が後を絶たない。
「社内でも結構いるわよ」
「まさか」
「例えば営業部長と林田さんとか」
営業部長と言えば、おしどり夫婦で有名な人だ。
それが二十代半ばの林田さんと!?