水無瀬無双~水無瀬TUEEEEE!~
文字数 2,446文字
「ぐっ……て、てめぇぇ……ちっ……!」
岩山田兄はゴロゴロしながらも距離をとって、素早く立ち上がり、バックステップを繰り返して距離を取った。
「……」
一方で、水無瀬は岩山田兄に興味を失ったように再び缶に口をつけてドクターペッパーを飲み始める。ものすごい余裕だ。
「……へ……へへへへ……俺をここまで怒らせた奴は初めてだぜぇ……?」
岩山田兄は血走った目をしながら、水無瀬を射殺すように視線で見つめる。右手が凍って左手にダメージを負っても戦意を喪失していない。完全に詰んでると思うんだが、まだ策があるのか?
だが、水無瀬はそんな視線をものともせずに、ドクターペッパーを堪能していた。まさにアウトオブ眼中といった感じだ。
「くぅぅおぉおぉおぉお……」
やがて、岩山田兄は独特の呼気を発し始める。それとともに、暗い闇色の闘気を纏い始めた。
「へ、へへ……氷雪障壁だかなんだか知らねぇが……んなもん、もう通用しねぇ……! くぉおおおおおお! 死にさらせやぁあぁあ! 疾風迅影!」
疾風迅『影』ってことは、さっき美涼を倒したときに使った技だ。疾風迅『突』の場合は直線的に突っ込んでくる感じだったが、この迅影は正体がわからない。
だが、先ほどのシンクロ率上昇の効果が残っていたのだろうか。俺はどうにか岩山田兄の残像を見ることができた。
岩山田兄は三人に分裂して、まずは二つの残像が左右から大きくカーブを描いて水無瀬の正面へ殺到する。少し遅れて、本体と思われる岩山田兄の身体が左の残像よりも大きな軌道を描いて回り込んでいった。
「……んく」
水無瀬の氷雪障壁が前面に自動展開されて、左右から迫ってきた二体分の岩山田兄の残像を弾き飛ばす。だが、最後の三人目――残像ではなく岩山田兄の実像――がさらに大きく迂回して、水無瀬の背後に回りこんでいた。
前面に氷雪障壁は発動しているために、後ろはガラ空きだ!
「水無瀬っ! 後ろだっ!」
「もらったぁあぁ!」
俺が叫ぶと同時、岩山田兄は嗜虐と歓喜で唇を歪ませながら肘を水無瀬の華奢な背中に叩き込む。
「ひっく」
水無瀬はこちらに返事をするようにしゃっくりをすると、体を回転させて岩山田兄の肘打ちをよける。――だが、好機を迎えた岩山田兄の攻撃は止まらなかった。
「シャアアアアアアアアアアアッ!」
岩山田兄は鋭い呼気を発しながら、強烈な蹴りを水無瀬の頭部に放った!
こいつ、手技だけじゃなくて、足技も持っていたのかっ!?
慌てる俺だったが、水無瀬はどこまでも冷静だった。
右手に持っていたドクターペッパーを左手に持ちかえながら、しゃがんで蹴りをかわし――、
「私がドクターペッパーを堪能するのを邪魔しないで」
縮んだ身体を一挙に伸ばすようにして跳躍し――強烈なアッパーカットを岩山田兄の顎へ放った。
「んごっっっっっっっっっっっ!?」
水無瀬のカウンターアッパーを食らった岩山田兄は、派手に宙を舞う。
水無瀬の右手は、アッパーの瞬間に発動したのか氷の手甲のようなものが装着されていた。それがキラキラと輝きながら、アッパーの軌道を俺の目にも見せてくれた。それはまるで氷の結晶のように美しかった。
岩山田兄はたっぷり五メートルは吹っ飛ばされてから、地面に叩きつけられる。
「あぁっ、い、岩山田さんっ……!?」
「な、なんなんだ、なんなんだ、あの女はよぉぉっ!?」
「もうおしめぇだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
リーダーをやられたDQNどもは、哀れなほどうろたえていた。そりゃ、そうだ。奥の手を出した岩山田兄がこうも簡単にやられたのだから。というか、水無瀬強すぎだろっ! 最後までドクターペッパーを持ったままだったからな……。しかも、缶からドクターペッパーがまったくこぼれていない。
「んくっ、んくっ……」
水無瀬は何事もなかったかのようにドクターペッパーを口にする。そして、ドクターペッパーを飲みながらも、地面に仰向けに倒れこんでいる岩山田の兄にゆっくりと近づいていった。
「くぁ………うっ……あ、ぁ……」
岩山田兄はあんな一撃をくらっても、どうやら意識があるらしい。それだけでもたいした奴かもしれない。
やがて、岩山田兄のすぐ前で水無瀬は立ち止まった。
「……それだけの力があるということは……この世界の秘密を知っているということ…………本当なら……、排除抹殺すべきところだけど……」
「……ひ、ひ、ひぃいぃっ……!?」
岩山田の水無瀬の存在に気がつくと、恐ろしげな瞳で怯える。もうさっきまでの余裕は微塵もなかった。
「……もう二度と悪さをしないのなら、見逃してもいい。あと、二度とドクターペッパーの悪口を言わないように不良たちを教育するならば…………特に、ドクターペッパーのほうが大事」
「う……ぁ……あっ……わ、わかったっ……も、も、もう二度とドクターペッパーの悪口は、言、言わせないし、お、俺もっ、に、二度と悪さはしねぇから……こ、こここのっ、世界からっ、お、俺のことを消さないでくれぇっ……!」
岩山田兄が、泣きじゃくりながら哀願する。まさか、あんな恐ろしい奴がここまで怯えるとは……。というか、この世界が作り物だとわかっていたのか岩山田兄は……そして、水無瀬も。
「ひっく……ん。ならば、今回だけは見逃す。でも、次はない。絶対に」
水無瀬の瞳が、青く輝く。それは、その言葉が本気であることを雄弁に物語っていた。
「……わ、わわ、わかったっ! わかったからっ……! も、ももも、もう絶対にもう、悪さはしない! お……おっ、おめぇらぁぁぁ……! わ、わ、わかったなぁぁ!?」
「へ、へいっ!」
「わかりやしたぁ!」
リーダーがやられると急に弱気になるDQNどもだった。
まぁ……水無瀬の圧倒的な力を見せつけられれば、そうなるか。まさに、水無瀬TUEEEEEEE! クラス二位とかいうレベルじゃなかった。
岩山田兄はゴロゴロしながらも距離をとって、素早く立ち上がり、バックステップを繰り返して距離を取った。
「……」
一方で、水無瀬は岩山田兄に興味を失ったように再び缶に口をつけてドクターペッパーを飲み始める。ものすごい余裕だ。
「……へ……へへへへ……俺をここまで怒らせた奴は初めてだぜぇ……?」
岩山田兄は血走った目をしながら、水無瀬を射殺すように視線で見つめる。右手が凍って左手にダメージを負っても戦意を喪失していない。完全に詰んでると思うんだが、まだ策があるのか?
だが、水無瀬はそんな視線をものともせずに、ドクターペッパーを堪能していた。まさにアウトオブ眼中といった感じだ。
「くぅぅおぉおぉおぉお……」
やがて、岩山田兄は独特の呼気を発し始める。それとともに、暗い闇色の闘気を纏い始めた。
「へ、へへ……氷雪障壁だかなんだか知らねぇが……んなもん、もう通用しねぇ……! くぉおおおおおお! 死にさらせやぁあぁあ! 疾風迅影!」
疾風迅『影』ってことは、さっき美涼を倒したときに使った技だ。疾風迅『突』の場合は直線的に突っ込んでくる感じだったが、この迅影は正体がわからない。
だが、先ほどのシンクロ率上昇の効果が残っていたのだろうか。俺はどうにか岩山田兄の残像を見ることができた。
岩山田兄は三人に分裂して、まずは二つの残像が左右から大きくカーブを描いて水無瀬の正面へ殺到する。少し遅れて、本体と思われる岩山田兄の身体が左の残像よりも大きな軌道を描いて回り込んでいった。
「……んく」
水無瀬の氷雪障壁が前面に自動展開されて、左右から迫ってきた二体分の岩山田兄の残像を弾き飛ばす。だが、最後の三人目――残像ではなく岩山田兄の実像――がさらに大きく迂回して、水無瀬の背後に回りこんでいた。
前面に氷雪障壁は発動しているために、後ろはガラ空きだ!
「水無瀬っ! 後ろだっ!」
「もらったぁあぁ!」
俺が叫ぶと同時、岩山田兄は嗜虐と歓喜で唇を歪ませながら肘を水無瀬の華奢な背中に叩き込む。
「ひっく」
水無瀬はこちらに返事をするようにしゃっくりをすると、体を回転させて岩山田兄の肘打ちをよける。――だが、好機を迎えた岩山田兄の攻撃は止まらなかった。
「シャアアアアアアアアアアアッ!」
岩山田兄は鋭い呼気を発しながら、強烈な蹴りを水無瀬の頭部に放った!
こいつ、手技だけじゃなくて、足技も持っていたのかっ!?
慌てる俺だったが、水無瀬はどこまでも冷静だった。
右手に持っていたドクターペッパーを左手に持ちかえながら、しゃがんで蹴りをかわし――、
「私がドクターペッパーを堪能するのを邪魔しないで」
縮んだ身体を一挙に伸ばすようにして跳躍し――強烈なアッパーカットを岩山田兄の顎へ放った。
「んごっっっっっっっっっっっ!?」
水無瀬のカウンターアッパーを食らった岩山田兄は、派手に宙を舞う。
水無瀬の右手は、アッパーの瞬間に発動したのか氷の手甲のようなものが装着されていた。それがキラキラと輝きながら、アッパーの軌道を俺の目にも見せてくれた。それはまるで氷の結晶のように美しかった。
岩山田兄はたっぷり五メートルは吹っ飛ばされてから、地面に叩きつけられる。
「あぁっ、い、岩山田さんっ……!?」
「な、なんなんだ、なんなんだ、あの女はよぉぉっ!?」
「もうおしめぇだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
リーダーをやられたDQNどもは、哀れなほどうろたえていた。そりゃ、そうだ。奥の手を出した岩山田兄がこうも簡単にやられたのだから。というか、水無瀬強すぎだろっ! 最後までドクターペッパーを持ったままだったからな……。しかも、缶からドクターペッパーがまったくこぼれていない。
「んくっ、んくっ……」
水無瀬は何事もなかったかのようにドクターペッパーを口にする。そして、ドクターペッパーを飲みながらも、地面に仰向けに倒れこんでいる岩山田の兄にゆっくりと近づいていった。
「くぁ………うっ……あ、ぁ……」
岩山田兄はあんな一撃をくらっても、どうやら意識があるらしい。それだけでもたいした奴かもしれない。
やがて、岩山田兄のすぐ前で水無瀬は立ち止まった。
「……それだけの力があるということは……この世界の秘密を知っているということ…………本当なら……、排除抹殺すべきところだけど……」
「……ひ、ひ、ひぃいぃっ……!?」
岩山田の水無瀬の存在に気がつくと、恐ろしげな瞳で怯える。もうさっきまでの余裕は微塵もなかった。
「……もう二度と悪さをしないのなら、見逃してもいい。あと、二度とドクターペッパーの悪口を言わないように不良たちを教育するならば…………特に、ドクターペッパーのほうが大事」
「う……ぁ……あっ……わ、わかったっ……も、も、もう二度とドクターペッパーの悪口は、言、言わせないし、お、俺もっ、に、二度と悪さはしねぇから……こ、こここのっ、世界からっ、お、俺のことを消さないでくれぇっ……!」
岩山田兄が、泣きじゃくりながら哀願する。まさか、あんな恐ろしい奴がここまで怯えるとは……。というか、この世界が作り物だとわかっていたのか岩山田兄は……そして、水無瀬も。
「ひっく……ん。ならば、今回だけは見逃す。でも、次はない。絶対に」
水無瀬の瞳が、青く輝く。それは、その言葉が本気であることを雄弁に物語っていた。
「……わ、わわ、わかったっ! わかったからっ……! も、ももも、もう絶対にもう、悪さはしない! お……おっ、おめぇらぁぁぁ……! わ、わ、わかったなぁぁ!?」
「へ、へいっ!」
「わかりやしたぁ!」
リーダーがやられると急に弱気になるDQNどもだった。
まぁ……水無瀬の圧倒的な力を見せつけられれば、そうなるか。まさに、水無瀬TUEEEEEEE! クラス二位とかいうレベルじゃなかった。