体育館裏
文字数 1,954文字
そして、問題の放課後。昇降口を出たところで、俺はクラスメイトに取り囲まれた。
「おい、永遠。ちょっとツラ貸せよ?」
「へへっ、岩山田さんがおめえに用があるってんだからさぁ、ちょっと来いや?」
見るからに程度の低い連中が四名。言うまでもなく岩山田の取り巻きどもだ。こんな奴らクラスメイトに持ちたくないものだが。
「……ああ、用があるなら行ってやるよ」
「けっ、なにおめぇ格好つけてんだよ? マジで頭悪いんじゃねーの? 逃げようともしやがらねぇ。もっとも、逃げようとしても無駄だけどさぁ?」
「馬鹿は死ななきゃ直らねぇって言うしなー!」
そっくりそのまま返してやりたいが、ここで騒ぎを起こしても仕方ない。俺はそのまま四人に囲まれながら、体育館裏にやってきた。
「けけけっ! 連れてきたかぁ!」
取り巻きの用意したと思われるパイプ椅子に座って、岩山田は踏ん反り返っていた。
かなりの巨体なので、椅子が小さく見える。体重をかければ、たやすく椅子の脚が折れてしまいそうだ。
「てめぇよぉ、さっさと学校やめろや?」
そして、岩山田はいきなりそんなことを言ってくる。
「そうだぜ、てめぇなんてやめちまえよ!」
「知ってるぜ? 女はべらせて屋上でメシ食ってんの。妹だかなんだか知らねーけど、てめぇには分不相応なんだよ!」
「そもそも俺らにもふざけた態度しやがって。教育が足らなかったよなぁ、今まで!」
「そのまま不登校だったら、俺たちにやられねーですんだのになー! ぎゃはははは! マジで頭悪い引きこもりだよな!」
まったく、下衆い奴らだ……。自分で作り出したキャラとはいえ、さすがに不快になってきた。
だが、それもここまでだがな。なぜなら、このあとの展開だけはしっかりと覚えている。美涼に関することはズレが生じているが、物語の大本はきっと変わっていないはずだ。
「……学校をやめるのは、お前らのほうだ。ゴリラと手下の猿ども」
「あんだと、ごるぁ!」
「てめえ! 死にてぇようだなぁ!」
「このもやし野郎、マジでぶっ殺すぞ!? あぁっ!?」
こちらの挑発にいともたやすく乗るDQNたち。現実では決して切れない啖呵だが、ここは俺の世界。そして、俺にはこいつらを圧倒する力がある。
「……特別に見せてやる。俺の本当の力をっ! ……はああああああっ!」
俺は、全身を縛りつけている魔法鎖を一挙に破壊した。これで、力が解放されたはずだ。
……ただ、これは外からはまったく見えないから、俺がなにをしたかは奴らにはまるでわかっていない。
「な、なんだぁ……?」
「特になんも起こらねーじゃねーか」
「けけけっ、恐怖で頭がおかしくなっちまったんかぁ? マジで憐れだわな! ぎゃはははははっ!」
絶対的優位にいると信じて疑わない哀れなDQNたちは、下卑た笑みを浮かべ続ける。しかし、そんな汚い顔を見るのも終わりだ。
「はぁあああああああああ!」
俺は解放した魔力を両手に集中させる。
「けけっ、ランク最下位の魔力なんてたかが知れてるぜ!」
その馬鹿にしたようなゴリラ面に向かって、俺は両手を突き出した。そして、炎の魔法を発動する。
「……炎竜飛翔っ!」
掛け声とともに、手のひらから爆発的な炎の竜が放たれて、不良どもを一掃する――はずだった。
「なっ……!?」
しかし、俺の手のひらから出たのはわずかな炎……。竜どころか、チャッカマン並の火力だった。
「ぎゃははははははは! なんじゃそりゃ! タバコに火でもつけんのかよ! なんなら俺の煙草に火つけていいんだぜ!」
「さすが学校最下位の魔力! マジゴミだわな!」
「この程度の魔力で俺らに逆らおうとか、マジで骨の髄まで教育が必要だなぁ……えぇ? クソ永遠!」
な……なんでだ……。なんで、ここで魔力が発動しない。
俺の書いた小説ではここで炎の竜が暴れまわって、こいつらはもう二度と俺に逆らえなくなるはずなのに。
……まさか、物語の本筋まで変わっているというのか……?
「てめぇ、さっきは俺のことをゴリラ扱いしてくたよなぁ! 絶対に許さねぇぜぇ!」
「もう泣いて謝っても許してやんねぇからな!」
「へへ、やっちまおうぜ!」
DQNどもは嗜虐的な笑みを浮かべながら、じりじりと近づいてくる。
くそっ……なんで、こんなことになるんだ……!
ここは、俺の作った小説の世界じゃないのか? なんで、俺がこんなピンチになっているんだ!
……現実でもDQNに虐げられて、死後の世界でまで俺は、こんなゲスな奴らに酷い目に遭わされるのか!? そんなの……ごめんだ。
「けけけけっ、サンドバッグにしてやるぜぇ!」
岩山田が勢いをつけて右ストレートを放ってくる。
「おい、永遠。ちょっとツラ貸せよ?」
「へへっ、岩山田さんがおめえに用があるってんだからさぁ、ちょっと来いや?」
見るからに程度の低い連中が四名。言うまでもなく岩山田の取り巻きどもだ。こんな奴らクラスメイトに持ちたくないものだが。
「……ああ、用があるなら行ってやるよ」
「けっ、なにおめぇ格好つけてんだよ? マジで頭悪いんじゃねーの? 逃げようともしやがらねぇ。もっとも、逃げようとしても無駄だけどさぁ?」
「馬鹿は死ななきゃ直らねぇって言うしなー!」
そっくりそのまま返してやりたいが、ここで騒ぎを起こしても仕方ない。俺はそのまま四人に囲まれながら、体育館裏にやってきた。
「けけけっ! 連れてきたかぁ!」
取り巻きの用意したと思われるパイプ椅子に座って、岩山田は踏ん反り返っていた。
かなりの巨体なので、椅子が小さく見える。体重をかければ、たやすく椅子の脚が折れてしまいそうだ。
「てめぇよぉ、さっさと学校やめろや?」
そして、岩山田はいきなりそんなことを言ってくる。
「そうだぜ、てめぇなんてやめちまえよ!」
「知ってるぜ? 女はべらせて屋上でメシ食ってんの。妹だかなんだか知らねーけど、てめぇには分不相応なんだよ!」
「そもそも俺らにもふざけた態度しやがって。教育が足らなかったよなぁ、今まで!」
「そのまま不登校だったら、俺たちにやられねーですんだのになー! ぎゃはははは! マジで頭悪い引きこもりだよな!」
まったく、下衆い奴らだ……。自分で作り出したキャラとはいえ、さすがに不快になってきた。
だが、それもここまでだがな。なぜなら、このあとの展開だけはしっかりと覚えている。美涼に関することはズレが生じているが、物語の大本はきっと変わっていないはずだ。
「……学校をやめるのは、お前らのほうだ。ゴリラと手下の猿ども」
「あんだと、ごるぁ!」
「てめえ! 死にてぇようだなぁ!」
「このもやし野郎、マジでぶっ殺すぞ!? あぁっ!?」
こちらの挑発にいともたやすく乗るDQNたち。現実では決して切れない啖呵だが、ここは俺の世界。そして、俺にはこいつらを圧倒する力がある。
「……特別に見せてやる。俺の本当の力をっ! ……はああああああっ!」
俺は、全身を縛りつけている魔法鎖を一挙に破壊した。これで、力が解放されたはずだ。
……ただ、これは外からはまったく見えないから、俺がなにをしたかは奴らにはまるでわかっていない。
「な、なんだぁ……?」
「特になんも起こらねーじゃねーか」
「けけけっ、恐怖で頭がおかしくなっちまったんかぁ? マジで憐れだわな! ぎゃはははははっ!」
絶対的優位にいると信じて疑わない哀れなDQNたちは、下卑た笑みを浮かべ続ける。しかし、そんな汚い顔を見るのも終わりだ。
「はぁあああああああああ!」
俺は解放した魔力を両手に集中させる。
「けけっ、ランク最下位の魔力なんてたかが知れてるぜ!」
その馬鹿にしたようなゴリラ面に向かって、俺は両手を突き出した。そして、炎の魔法を発動する。
「……炎竜飛翔っ!」
掛け声とともに、手のひらから爆発的な炎の竜が放たれて、不良どもを一掃する――はずだった。
「なっ……!?」
しかし、俺の手のひらから出たのはわずかな炎……。竜どころか、チャッカマン並の火力だった。
「ぎゃははははははは! なんじゃそりゃ! タバコに火でもつけんのかよ! なんなら俺の煙草に火つけていいんだぜ!」
「さすが学校最下位の魔力! マジゴミだわな!」
「この程度の魔力で俺らに逆らおうとか、マジで骨の髄まで教育が必要だなぁ……えぇ? クソ永遠!」
な……なんでだ……。なんで、ここで魔力が発動しない。
俺の書いた小説ではここで炎の竜が暴れまわって、こいつらはもう二度と俺に逆らえなくなるはずなのに。
……まさか、物語の本筋まで変わっているというのか……?
「てめぇ、さっきは俺のことをゴリラ扱いしてくたよなぁ! 絶対に許さねぇぜぇ!」
「もう泣いて謝っても許してやんねぇからな!」
「へへ、やっちまおうぜ!」
DQNどもは嗜虐的な笑みを浮かべながら、じりじりと近づいてくる。
くそっ……なんで、こんなことになるんだ……!
ここは、俺の作った小説の世界じゃないのか? なんで、俺がこんなピンチになっているんだ!
……現実でもDQNに虐げられて、死後の世界でまで俺は、こんなゲスな奴らに酷い目に遭わされるのか!? そんなの……ごめんだ。
「けけけけっ、サンドバッグにしてやるぜぇ!」
岩山田が勢いをつけて右ストレートを放ってくる。