最終話 一期一会
文字数 668文字
「守口、元気か?」
南君に尋ねられた。
「元気だよ」
答えながら、目が覚めた。私は子供ながらに、いつしか南君に恋をしていた。大人になってもときどき繰り返し夢を見る。そのたびに懐かしく、切ない気持ちになる。
******
勉強が出来るようになり、弁もたつようになった私は五年生になる頃にはクラスに居場所がそれなりにできていた。仲間はずれにされることもなくなった。まだ足りないところはあっただろうが、会話ができる人が増えたことが単純に嬉しかった。
ところが、父の転勤が決まり五年生の終わりに他県へ転校することになってしまった。
******
古い映画のように、ぼんやりと子供時代を思い出すことがある。最後の登校日、いつもよりみんなが優しくて、鼻水と涙が出てきた。
藤棚小学校で出会った、優しく強い人、弱いから冷たかった人。もっと仲良くなり、側にいたかった。私を目覚めさせてくれた一つ一つの出会い。どれが欠けても今の私にはならなかった。
大人になり遠い場所で壁に当たりながらも、自分の居場所で仕事をしている。
一期一会。どんな人でもかならず接した相手に影響を多かれ少なかれ与えている。それは、傷跡であり、気づきをもたらす。
二度と会うことがない人もいる。SNSなどで偶然再会することができる場合もある。
不思議ですばらしい世界。
けれど一生に会える人の数は限られている。その出会いを大切にしていきたい。そして、できるなら、誰かのその日の天使になりたい。
生きていればまたすれ違うこともある。それはいつかわからないから、自分を励まして進んでいく。
南君に尋ねられた。
「元気だよ」
答えながら、目が覚めた。私は子供ながらに、いつしか南君に恋をしていた。大人になってもときどき繰り返し夢を見る。そのたびに懐かしく、切ない気持ちになる。
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勉強が出来るようになり、弁もたつようになった私は五年生になる頃にはクラスに居場所がそれなりにできていた。仲間はずれにされることもなくなった。まだ足りないところはあっただろうが、会話ができる人が増えたことが単純に嬉しかった。
ところが、父の転勤が決まり五年生の終わりに他県へ転校することになってしまった。
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古い映画のように、ぼんやりと子供時代を思い出すことがある。最後の登校日、いつもよりみんなが優しくて、鼻水と涙が出てきた。
藤棚小学校で出会った、優しく強い人、弱いから冷たかった人。もっと仲良くなり、側にいたかった。私を目覚めさせてくれた一つ一つの出会い。どれが欠けても今の私にはならなかった。
大人になり遠い場所で壁に当たりながらも、自分の居場所で仕事をしている。
一期一会。どんな人でもかならず接した相手に影響を多かれ少なかれ与えている。それは、傷跡であり、気づきをもたらす。
二度と会うことがない人もいる。SNSなどで偶然再会することができる場合もある。
不思議ですばらしい世界。
けれど一生に会える人の数は限られている。その出会いを大切にしていきたい。そして、できるなら、誰かのその日の天使になりたい。
生きていればまたすれ違うこともある。それはいつかわからないから、自分を励まして進んでいく。