僕のタイムカプセル
文字数 1,490文字
僕の家の庭は、けっこう広い。どのくらいかって聞かれたら、大きい車が一台入るぐらい。朝、お父さんが車に乗って会社に行くから、学校から帰ると僕はそこでどろ遊びをするんだ。
今日もいつものように、ホースで水をかけて土をやわらかくして、ぐちゃぐちゃになったところをシャベルで掘る。ともかく掘る。
なんでそんなことしてるかって?もしかしたら、恐竜の骨が埋まってるかもしれないじゃん!
お母さんが「おやつよ!」って呼ぶ声が聞こえたけど、僕は構わず掘り続けた。
今日も収穫なしか……。そう思ったとき、シャベルが何か固くて白いものに当たった。この手ごたえに白さ、まさか恐竜の骨か? 僕はシャベルで周りを大きく掘った後、手で丁寧にその固くて白いものを取り出した。
残念ながら、それは恐竜の骨じゃなかった。でも、僕は興奮していた。だって、出てきたのは白い金属の箱! もしかしたら「まいぞうきん」かも! ともかく僕は、箱を開けようとした。
だけど、全く開く気配なし。一度家に入って、ドライバーで開けようと考えたけど、お母さんが「危ないから、お父さんが帰ってきたら開けてもらいなさい」って。その上、どろだらけで廊下を走ったせいで怒られた。ちぇっ。
僕は箱を水で洗って、お父さんの帰りを今か今かと待った。七時頃、車のエンジン音が聞こえたから、階段をかけおりてお父さんを迎えた。
「へぇ、白い箱か」
お父さんはニヤニヤしながら、ドライバーを持ってきた。
「お前は何が入ってると思う?」作業をしながら僕の顔を見た。
「えーと、『まいぞうきん』とか?」
「そりゃすごい。」
そんな話をしているうちに、お父さんは箱を開けてくれた。
「うわぁ」
中には水が大量に入っていた。地面の水分が箱に入ったんだろうって、お父さんが言ってた。箱の中のものは、ビニールで何重にも封がしてあったおかげで、少し湿っているぐらいだ。
僕は、さっそくビニールの中身を取り出した。
「なんだ、これ」
中に入ってたのはペンだった。ペン軸の中に、代えの芯がたくさん入っている。
「これはロケット鉛筆っていうんだ」
横で様子を見ていたおとうさんが教えてくれた。
ビニールの中には、更にもう何重もビニールで包まれている紙が入っていた。これは手紙のようだ。僕は乱暴にそれを開けて、中身を読んだ。
手紙は『オレの子孫へ』というタイトルで始まっている。
『オレの子孫へ オレは今一番の宝物をこの箱に入れる。大切にしろ』
僕より下手な字だ。僕はがっかりした。きっと誰かのいたずらだろう。
「なぁんだ、つまんないの」
僕は手紙を投げ出したが、お父さんがそれを拾ってきた。
「つまんない、か。手紙の最後の行を読んだか?」
最後の行……?僕はお父さんが持ってきた手紙をもう一度見た。
「かとう けんじより」
ぶっ、と笑ってしまった。この汚い字の手紙の主は、加藤憲次。僕のお父さんだ。
「父さんの小さい頃、タイムカプセルが流行っていてな。このロケット鉛筆は、好きだった女の子がくれたんだ」
母さんには内緒だぞ、と、お父さんは僕に耳打ちした。
「ちゃんと手紙は油性ペンで書いたか?」
「うん、お父さんより丁寧に書いたよ!」
次の日曜、僕はお父さんと一緒に新しいタイムカプセルを埋めることにした。手紙の書き出しはもちろん、『僕の子孫へ』だ。
「お前は中身、何を入れたんだ?」
「おしえなーい!」
そういうと、お父さんに頭をグリグリされた。
僕の子孫で、僕みたいにどろ遊びが好きな子だったら、きっと見つけてくれるだろう。
隣の席のユキちゃんからもらった消しゴムと、『僕の子孫へ』と書かれた手紙を。
今日もいつものように、ホースで水をかけて土をやわらかくして、ぐちゃぐちゃになったところをシャベルで掘る。ともかく掘る。
なんでそんなことしてるかって?もしかしたら、恐竜の骨が埋まってるかもしれないじゃん!
お母さんが「おやつよ!」って呼ぶ声が聞こえたけど、僕は構わず掘り続けた。
今日も収穫なしか……。そう思ったとき、シャベルが何か固くて白いものに当たった。この手ごたえに白さ、まさか恐竜の骨か? 僕はシャベルで周りを大きく掘った後、手で丁寧にその固くて白いものを取り出した。
残念ながら、それは恐竜の骨じゃなかった。でも、僕は興奮していた。だって、出てきたのは白い金属の箱! もしかしたら「まいぞうきん」かも! ともかく僕は、箱を開けようとした。
だけど、全く開く気配なし。一度家に入って、ドライバーで開けようと考えたけど、お母さんが「危ないから、お父さんが帰ってきたら開けてもらいなさい」って。その上、どろだらけで廊下を走ったせいで怒られた。ちぇっ。
僕は箱を水で洗って、お父さんの帰りを今か今かと待った。七時頃、車のエンジン音が聞こえたから、階段をかけおりてお父さんを迎えた。
「へぇ、白い箱か」
お父さんはニヤニヤしながら、ドライバーを持ってきた。
「お前は何が入ってると思う?」作業をしながら僕の顔を見た。
「えーと、『まいぞうきん』とか?」
「そりゃすごい。」
そんな話をしているうちに、お父さんは箱を開けてくれた。
「うわぁ」
中には水が大量に入っていた。地面の水分が箱に入ったんだろうって、お父さんが言ってた。箱の中のものは、ビニールで何重にも封がしてあったおかげで、少し湿っているぐらいだ。
僕は、さっそくビニールの中身を取り出した。
「なんだ、これ」
中に入ってたのはペンだった。ペン軸の中に、代えの芯がたくさん入っている。
「これはロケット鉛筆っていうんだ」
横で様子を見ていたおとうさんが教えてくれた。
ビニールの中には、更にもう何重もビニールで包まれている紙が入っていた。これは手紙のようだ。僕は乱暴にそれを開けて、中身を読んだ。
手紙は『オレの子孫へ』というタイトルで始まっている。
『オレの子孫へ オレは今一番の宝物をこの箱に入れる。大切にしろ』
僕より下手な字だ。僕はがっかりした。きっと誰かのいたずらだろう。
「なぁんだ、つまんないの」
僕は手紙を投げ出したが、お父さんがそれを拾ってきた。
「つまんない、か。手紙の最後の行を読んだか?」
最後の行……?僕はお父さんが持ってきた手紙をもう一度見た。
「かとう けんじより」
ぶっ、と笑ってしまった。この汚い字の手紙の主は、加藤憲次。僕のお父さんだ。
「父さんの小さい頃、タイムカプセルが流行っていてな。このロケット鉛筆は、好きだった女の子がくれたんだ」
母さんには内緒だぞ、と、お父さんは僕に耳打ちした。
「ちゃんと手紙は油性ペンで書いたか?」
「うん、お父さんより丁寧に書いたよ!」
次の日曜、僕はお父さんと一緒に新しいタイムカプセルを埋めることにした。手紙の書き出しはもちろん、『僕の子孫へ』だ。
「お前は中身、何を入れたんだ?」
「おしえなーい!」
そういうと、お父さんに頭をグリグリされた。
僕の子孫で、僕みたいにどろ遊びが好きな子だったら、きっと見つけてくれるだろう。
隣の席のユキちゃんからもらった消しゴムと、『僕の子孫へ』と書かれた手紙を。