バーチャル世界も
文字数 2,367文字
要は職場に赴く
その日、遥は階段から降りて事務所の机でエクセルを開いてデータ相手に格闘していた
「今私が読んでいる文献も似たようなこと言ってるわよ。兼光という人が書いた随筆なんだけど、人間何かを生み出していないと死んでいく生き物らしいわ。この作者、この文献の執筆終わったら山犬に自分のこと食わせるって書いてる。随分と覚悟の決まった人生よねー」
要はどうしてそんな話をするのか
「ごめんなさい、私、あなたのこと誤解してたわ。あなたはもっと素敵でシンデレラみたいな生き物かと思っていたのだけれど、そんなわけがなかったわね。あなたはボロボロの布に身を包んだビフォーシンデレラだったわ。もっと、素敵な人生を送れるわよ、これから」
「いいえ、そんなことはないかもしれないわ。辛いことや悲しいことだけが人生じゃない、もっと幸せなことやうれしいことがたくさんあったほうが素敵な人生じゃない。そういう人生を望んだほうが楽しいじゃない。でもそうなったら、兼光さんが死んだのは楽しいことが亡くなったから、そう説明できるわね」