第3話

文字数 576文字

 そんな時だった。裕子から職場復帰しないかと連絡がきたのは。
 暫くは出社になるらしいけど、リモートワークで働けるらしい。
 何れ自宅で仕事が出来るのなら願ったり叶ったりだ。
 本当はパパに相談したかったけど、今日も残業。結局自分一人で決めた。

 面接、採用、トントン拍子で進んだのはいいけれど、思っていたより育児と仕事の両立がきつい。
 十年も現場から離れていたし、その間に仕事内容も変わっていた。
 新しいソフトの使い方、久しぶりのブラインドタッチ。前より打ち込み速度は遅い。

 学童へのお迎え、買い物、掃除に夕飯作り。
 敦仁の宿題を見てあげ、お風呂にも入れる。正にワンオペ状態。
 今日もパパは残業。
 次第に募ったイライラをパパにぶつけていった。

「きついなら無理して働かなくていいよ」
「そういうことじゃなくて」

 何で分かってくれないのだろう。
 私だって裕子みたいに、結婚しても女として輝きたい。

「子育てと家政婦のような生活が嫌なの」

 このままで終わりたくない。
 家の中で過ごし、終わった二十代をやり直したかった。
 ママじゃなく、京子として、一人の女として何かしたい。

「家政婦だなんて……」
「だってそうでしょう?」
「風呂に入ってくる」

 ほらまた逃げる。
 倦怠期か……裕子の言葉が胸に突き刺さる夜。
 珍しく今日は早く帰ってきたのに、喧嘩して会話がなくなってしまった。
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