第16話 クレヨンと虹と桜のお城

文字数 891文字

 春のこどもスケッチ大会。
 桜並木がきれいなお城のまわりには画板を持った家族連れがたくさん集まっている。
 絶好の写生日和にまさとくんとパパさんは近くの公園に陣取った。

 パパさんはクレヨンを使うのがとっても上手。
 まさとくんにコツを教えてあげた。
 1、どこに何色をぬるか、できあがりをイメージしよう
 2、クレヨンを使う前は汚れ(付着した他の色)をティッシュなどでふきとろう
 3、うすい色からはじめよう
 4、濃ゆい色をぬろう
 5、風や太陽の光を感じる流れるような方向にできるだけぬろう
 (むずかしいけど画用紙を回しながら)
 6、塗ったクレヨンのカスだまりをティッシュでふきとろう
 7、できあがったらサインをしよう byまさと
 最後のは省略可だ。

「パパ、お城が黒いから黒ばっかり使っちゃうね」
「そうだね。そのぶん桜のピンクが映えるように描こう」
 二人は下書きを終えてクレヨンに取りかかろうとした。

 クレヨンの箱の中。
「今日は出番すくなそうね」
 うすだいだいを先っちょにつけた赤が言った。
「そうだね。ちっちゃくならなくていいんじゃない」
 黄色は自分の頭をなでながら寝返りをうった。
 青も「天気がいいし、寝よ、寝よ」と背伸びをした。

 すると
 ポツ・・ポツ、ポツ。
「あ、雨だ」「まさと荷物持って。休憩所に行こう」
 お天気のまま雨が降りだし、みんなが雨宿りに押しよせた。
 二人もクレヨンたちもちょっぴりぬれた。

 雨は30分も降らなかった。
 ぬれた草木のにおいと春の陽気が混じり合い、さっきより空が青く高い。
 お城もお風呂上りのようにさっぱりしている。
 やがてそのその後ろから。
「あっ虹だ」
 まさとくんやこどもたちが声を上げた。
 赤・橙・黄・緑・青・藍・紫七色すべての色は描けないけれど、赤、黄、青の出番だとパパさんはクレヨンを取りだした。
 さっきまでお休みモードの赤黄青のクレヨンは思わぬ出番にいきおいよくからだを起こし、包み紙をひとつまみめくった。
「いくよ」「よっしゃ」
 まさとくんも「さあ、ぬるぞお」

 あざやかな虹と桜とお城のスケッチは、その日のサラダと明太子と海苔のお弁当と同じ色になった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

やっほい太郎 青い手動のえんぴつ削り パパさんが子供の頃家にやってきた  これまで削ってきたえんぴつは本人曰く50万本


コロロちゃん 赤えんぴつの女の子文具、短くなって冒険大好き

Bえんぴつくん こころやさしい男の子文具

まさとくん 文房具が大好きな小学2年生

パパさん まさとくんのパパ、文房具の大切さを教えてくれる

消しゴムのげんさん おっさん文具 口は悪いが人情に熱い

コンパスのコンパ 紳士文具 華麗なダンスで奇麗な円を描く 人具一体がポリシー

ノートさん おかあさん文具 使う人も文房具も、みんなの気持がわかる

ものさしの孫兵衛さん おじいちゃん文具 ずっと前から家にいる 今は孫の手がわり

ハサミくん 怖がりの男の子文具 バッサバッサと取り切りきざむハサミ男の正体

のりちゃん  やさしくてりんとした天使の女の子文具 ハサミくんと一緒にがんばる

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み