第4話 春すぎて 持統天皇(二番)
文字数 1,262文字
ある日の放課後、藤原トオルは忘れ物を取りに教室へと向かった。
教室の自分の席には生物教師笹塚が、百人一首を手に座っている。
幻覚を見ているのか、それともタイムワープか? トオルは一抹の不安とともに先生の元へ行く。
待ってた? そこそこ? なんでそこそこなんだよ!
しかし、トオルには一切身に覚えがない。昨日も今日も先生には会っている。
なんのことかと疑問に思いかけて、トオルははっとした。そう、先生の手にあるのは、百人一首。
昨日、トオルは笹塚先生から百人一首についてなんとなく解説を受けた。今日は、その続きをやろうと言っているらしい。百人一首は正直どうでもよかったが、トオルは先生と話せるのが嬉しいのだった。
春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山
はるすぎて なつきにけらし しろたへの
ころもほすてふ あまのかぐやま
そんなの誰でも気づくだろ
トオルは内心わくわくしていた。どうでもよいとはいえ、笹塚の説明は昔の人々の心を鮮やかに蘇らせるような感じがする。今回は、どんな話が聞けるのだろう。
「まず、持統さんは女性だ。で、第一首の作者、天智天皇の娘(第二皇女)にあたる。そして、天武天皇の奥さん(皇后)だった。天武天皇が亡くなったため、天皇になった」
「で、天皇になった持統さんの経歴は、律令体制の基礎を作ったりなど。ここら辺は飛ばすか」
「さて、こっからが大事なとこだが、天智天皇と天武天皇は兄弟なんだ」
「持統さんは叔父さんと結婚したわけ。んで、額田王っていうべっぴんさんを兄弟である天智と天武がとり合った」
「つまり、自分の夫と父親が同じ女性に恋をしたっつーこと!」
zzz
やばくないですか? いいんですか? そんなんで。日本のトップがドロドロなんて
「あ、ちなみに。万葉集にもともとあった歌が改変されて百人一首に採用された、らしいぞ」
まじかよ