第2話 戸惑い

文字数 997文字

美葉が目を開けると天井が見えた。とても高い天井だった。やはり古民家のように見えた。美葉は我に返りガバッと起き上がった。すると年配の女性が美葉に
「大丈夫?美葉ちゃん」
と日本語で話しかけてくれた。美葉は心底安心した。
「私は楓。さっきの子の祖母です。ごめんなさいね、美葉ちゃんが倒れた時荷物が鞄から出てしまって拾うときにちょっと見えてしまったのだけど、美葉ちゃんはこの時代の子じゃないわよね?」
とリンの祖母の楓は美葉に聞いた。美葉は
「よく分からないのですが、私は2003年生まれで今20歳です。でも先ほど今は2123年だとお聞きしたのですが・・・」
と楓に聞いた。すると楓は
「やっぱり。ちょうど100年前ね。このことは誰にも言わないほうがいいわ。それからこの辺りの人は皆英語で喋っているからここでは日本語はやめた方がいいと思うの。早く元の世界へ帰れるといいわね」
美葉は驚いたが、思いのほか楓が驚いていないのが気になったので
「楓さんはビックリなさらないのですか?」
そう尋ねると楓は
「昔ちょっと本のような物で読んだことがあるのよ」
と答えたので美葉は
「はい」
としか答えられなかった。美葉の表情はどんよりと曇っていた。そんな美葉を見た楓は
「大丈夫、必ず帰れます」
そう力強い語気で美葉に言った。



 今日はさっきのリンのお誕生日だということで台所では楓と楓の息子の嫁、つまりリンの母が料理に腕を振るっていた。
 美葉は
「お手伝いします」と言うと、楓は
「English please.」
と美葉をさりげなく諭した。美葉は英語が苦手だったのでもっとちゃんと勉強していればよかったと後悔をした。困っているとリンの母親は
「Nice to meet you. I’m Hana. Rin’s mother.」
と挨拶をしてくれた。とても優しそうな笑顔の素敵な人だと美葉は思った。
美葉も
「Nice to meet you, too. I’m Miha.」
そう答えた。美葉にはリンが何歳になるのかがわからなかったが、多分美葉自身と同じくらいのように美葉には思えた。今日のメニューはピザと唐揚げのようなフライドチキンと、コールスローのようだった。そして楓はいまケーキのデコレーションをしている最中だった。楓が出来上がったケーキの上に2と3のローソクを立てて美葉はリンが23歳になったのだとわかった。美葉は心の中で「俊と同い年だ」と思った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み