第4話 運命

文字数 1,408文字

美葉は響に連れられて麦畑へとやって来た。そこは今朝美葉が降り立った麦畑で、その麦畑は黄金色に輝き風に揺られた麦の穂はとても綺麗だった。響は
「今朝作業しようと思ったら、丸い円ができていてね、ミステリーサークルみたいな感じで、アハハ」
と笑いながら首を傾げていた。美葉はとっさに
「ごめんなさい。今朝気が付いたら私あそこにいて・・・。大事な麦を踏み潰してしまって本当にごめんなさい」
と全力で謝った。響は
「美葉さんのせいではないから大丈夫だよ。気にしないで」
と優しく微笑んだ。そして続けて
「これは小麦なんだけど、品種名が実は”Beautiful a Leaf”と言うんだ」
美葉は「まさか」と思った。「そうだ、まさかそんなはずはない」そう自分に言い聞かせていると、響は
「祖父が品種改良に携わったんだ。そして名づけ親も祖父なんだよ」と言い終えると美葉は
「美しい葉?まさかですよね?」と響に聞いた。すると響は
「多分そのまさかだと思うよ」
と信じられないことを口にした。そんな話をしていると、二人に気付いたリンの父であるレンが
「Come here!」
と大きく叫んだ。響は
「Ok!」
と言って美葉の手を引いて麦畑でちょうど収穫の作業をしていたレンとリンの元へとまっしぐらに向かった。
黄金の麦畑の中はとても優しくて暖かかった。なぜか俊の腕に包み込まれているような安心感があった。そういえば今朝もひとり麦畑に降り立ち不安だったはずなのにどこか懐かしく思えたのも俊の作り出したこの麦のおかげだったのだろうか。美葉はそんなことを考えていた。
「Miha. Have you seen this before?」(これ見たことある?)
レンが美葉に尋ねた。美葉は
「No. But I feel nostalgic.」(ううん。でも懐かしく感じる)
と合っているかどうかわからないような英語で答えた。すると隣にいたリンが
「Can you tell me what your first name means?」(あなたの名前はどういう意味か教えてくれるかな?)
と美葉に満面の笑みで尋ねた。先ほどまでとはまるで別人のように、美葉のことを受け入れてくれているそんな感じの表情だった。美葉はとても嬉しかった。まるで俊が私に向けてくれていた笑顔みたいだと思いちょっとだけ泣きそうになった。でもこのリンの質問にどう答えていいのかわからなかった。美葉は思わず響の顔を見た。すると響は頷いた。そんな響の表情を見て「そっか、言ってもいいんだ」と思い美葉は思い切って答えた。
「Miha’s mean is beautiful a leaf.」(美葉は美しい葉っていう意味なの)
するとレンもリンも驚いて、
「This wheat is “beautiful a leaf“ too.」(wheat=小麦)
(この小麦も“Beautiful a leaf”(美しい葉)って言うんだ)
「Maybe this is fate.」(多分これは運命だね)
口々にそう言った。美葉は「運命か……。どんな運命だろう?私にも子孫はいるのだろうか?」そんなことを考えていた。いまでも俊の温もりや匂い、屈託のない笑顔が忘れられない。俊ともう一度やり直すことはできないのだろうか?でももしそんなことができたとして俊と私が結婚していたらここのみんなもいないことになってしまう。美葉の気持ちはとても複雑だった。
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