12 戦争の話を始めるお祖父ちゃん

文字数 445文字

 お祖父ちゃんは新聞をテーブルの上に置きながら、みーちゃんにこう尋ねます。
 「じゃあ、最後の沖縄戦、沖縄の話にするかな。それでいいか?」
 みーちゃんはお祖父ちゃんの隣の緑の座布団に座ります。
 「うん、いいよ。でも、ちょっと待ってて。書く用意するから」。
 みーちゃんはテーブルにノートと鉛筆、それに消しゴムを置きます。ノートを広げて、鉛筆を持ち、「いいよ、準備できた」と言います。
 それを聞くと、お祖父ちゃんは老眼鏡を外してケースに入れてテーブルのスタンドの脇に置きます。座椅子に座り直し、姿勢を正して、おもむろに話し始めるのです。
 「沖縄は……地獄だった……米軍の艦砲射撃、おっかながった~鼓膜破れんでねえがってくらいでっけ一音してな~地面に伏していても、ドーンと来ると体が浮き上がってな~腹の奥までずーんと響ぐおんんだ~おっかなくてよ~ションベもごしそうになった~それと、火炎放射器……おっかねがった……」。


柳につばめは あなたにわたし
胸の振子が鳴る鳴る
朝から今日も
(霧島昇『胸の振子』)


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み