第1節 活字媒体の衰退

文字数 980文字

第3章 インターネット時代のノンフィクション
第1節 活字媒体の衰退
 1970年代からアメリカでは総合雑誌の発行部数が低迷したが、その代わりに、『PLAYBOY』や『スポーツ・イラストレーテッド(Sports Illustrated)』、『TVガイド(TV Guide)』を始めとする読者層を絞った専門誌が売り上げを伸ばし、1990年に約2200万部にも上っている。日本の出版産業も、90年代に入ると、今まで経験したことのない不評に見舞われ、雑誌の売り上げが激減する。若者は月刊総合誌など見向きもせず、主な購読者層は高齢者では先細るだけと判断した出版社は相次いで休刊に踏み切る。一方で、『ロスジェネ』や『POSSE』など特定の問題に特化した雑誌が好調である(「ロスジェネ」と称される彼らだが、消耗し、精神分析学の防衛機制に追われているように見え、むしろ、「防衛機制世代(Defense Mechanism Generation: DMG)」が適切であろう)。1970年代のアメリカの雑誌業界を見ているようだ。

 月刊総合誌の凋落は、ノンフィクションに試練を与えている。調査報道やそれに基づくノンフィクションは、潤沢な資金を背景に、人手と時間を費やしても、楽にペイする環境から生まれている。人・金・時を必要とするジャーナリズムであって、雑誌のビジネス・モデルが成り立たなくなれば、立ち行かなくなり、対応策が必要となる。

 アメリカでは、インターネットの普及などにより、販売部数の低迷と広告収入の減少に伴い、新聞業界が苦境に陥る。04年くらいから、人員削減、身売り、経営破綻が相次いでいる。新聞社の中には、調査報道から手を引くところも少なくない。新聞や調査報道の行方がテレビで頻繁に討論されている。ディズニー映画の『おてんば探偵ナンシー・ドリュー(Nancy Drew)』(2002)の中でさえ、ジャーナリズムの黄金時代はすでに終わり、調査報道の行く末は厳しいと触れられているほどだ。PBSに至っては、2009年のピューリッツァー賞発表直後の4月20日に、『ニュース・アワー(News Hour)』で「メディア削減に見舞われる調査報道(Investigative Reporting Hard Hit by Media Cutbacks)」という特集座談会を組んでいる。
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