第一話 グリューン村 グレーネコファミリーとグレーウサギファミリー

文字数 8,424文字

グレーネコファミリーとグレーウサギファミリーは、とても良く似ていて、ネコかウサギで、体の特徴を見分ける必要がある。
グレーネコファミリーは、村崎家
グレーウサギファミリーは、山崎家
姓名も似ているし、名前も似ている。
見た目はしょうがないとして、名前が似ているのは、意味があっての事。
昔からこの土地に生きる二家族。
ここに国が出来て以来、歴史はそこまで古くなくても、何十年とこの場所で暮らして来た。
王がこの国に来る前から、ここは国ではなかったが、村が存在していた。
アーテル村がそれである。
一つの集落に、すでに獣人は住んでいたのである。
そして、人口が増え、町が出来た。
それがヴィオラ町である。
グリューン村は、三番目に出来た村で、国王が住む森がある。
グリューン村は元々、木々が生い茂る森だったが、国王がこの国に来て、住もうと決めた時、森を開拓し、一部をグリューン村とし、森の最奥は自分の住居を建てる為、木々は残し、一画だけ木々を伐採し、屋敷を建てた。
その後、グリューン村は国王の土地であったが、農村地区にしたいという申し出から、一般市民も住むようになった。
そして、国王の命令により、市街地 ルージュ市の開発が行われ、徐々に現在の形になったのである。
村崎家も、山崎家も、国王の従者だが、身分を隠し、アーテル村の住人にならい、その苗字になった。
本来は違う名前なのだが、身分を隠し、国の住人として生きる為、その名は捨てたのである。
そして、この二家族の家は国王の森に近い場所に、隣同士建っている。
一つの敷地に、平屋のアパートが二軒。
その二つの家が、二家族の家である。
村崎家、山崎家の両家は、森の番人とも呼ばれている立場で、国王の森に侵入者がいないか、チェックしているのである。
この国に移住してくる者は、空、海、森などから来るが、抜け道があるのは、国王の住む森ではなく、グリューン村に残るもう一つの森の中にある。
一部、森林公園として開放されていて、アレなカップルや変わった趣味の者の出入りが目撃されている。
その森からも国王の森へ迷い込む者もいるが、必ずどこかで捕まり、国王の土地への侵入は出来ないようになっている。
ちなみに、国王の住処に繋がる森は「ここから先は、迷いの森です」という看板が建てられている。
一般的な噂では、迷いの森は、本当に迷うように出来ていて、入ったら出られなくなるという。
その噂を流したのは、王の側近の者だ。
そのくらい国王は、国民を自分の敷地内への侵入を頑なに拒んでいるのだ。



国王の従者の者、村崎家と山崎家は、共に娘がいるが、娘は自分の両親が従者である事や、国王の事をよく知らない。
親が大人になるまで話さないようにしているからである。
二家族の娘は、共に同じ学校に通っている。
村が建てた小学校で、人数は少ないが、学校として成り立っている。
クラスは年齢で分けられており、一年一組といった、一般的なクラス名ではなく、森林クラス、竹林クラス、菖蒲クラス、梅クラスなど、植物で分けられている。
現状、子供が少ない為、一人一クラスなんて事もある。
その為、「何年生」というのを止め、植物でクラス分けしているのである。
学校は、空き教室が多かった。
この村は一番、発達が遅いと言われている。
森に囲まれ、農村地帯の為、住む人自体が少ない。
森林公園が広い土地である事や、自然と一体化した施設が建てられたりしている。
都会とは真逆の村なのだ。
そんな“田舎”にある小学校では、体育館を使い、そこに会議などで使われる長い机が二つ。
一つの机に、椅子が二脚といった感じで置かれている。
一つの机に二人が座れるようになっている。
今日はここで、合同授業が行われるらしい。
一年~六年にあたるクラスの先生たちは、準備に大忙しだ。
村の子供達は、顔見知りではあるが、年齢が違うとそれなりに話も合わなくなり、いつも高学年か低学年で別れている。
高学年クラスには、村崎家の娘と山崎家の娘がいる。
二家族はお互いに親戚感覚な為、お互いの教室を行き来している時もある。低学年クラスの子達も、同じような感じである。
皆が皆、子供の少なさや、家が同じ敷地内にあるなどという理由で、近所というより親戚に近いような関係である。
そのグリューン村の小学生がいっぺんに集まった今日、体育館で行われる合同授業は、「生活」である。
社会科に近いが、低学年の時にしかない授業、「せいかつ」に合わせてあるのだ。
高学年の子からしては、退屈になってしまうかも知れないが、その辺は工夫されているようだ。
先生が準備を終わらせると、体育館は静かになった。



グリューン村の隣、アーテル村の村長さんは、今現在、自分が住んでいるアーテル村ではなく、このグリューン村まで来ていた。
グリューン村の小学校を訪ねると、職員室へと進んだ。
「失礼します」と告げてドアを開けると、先生方から注目された。
「あっ、アーテル村の村長さんですよね、おはようございます。すいません職員が少なくて、対応しきれず、お手数をお掛けします」
「いえいえ、お気になさらず」
「今、応接室へとご案内しますね」
「はい、お願いします」
一人の先生が村長に対し、対応すると、他の先生たちは作業に戻った。
案内をしてくれる先生と一緒に、応接室へ向かい、村長が中へ入ると、「どうぞこちらで、お待ち下さい」と席を案内された。
言われた通りに村長が席へ座ると、「本日はグリューン村小学校までお来し下さり、ありがとうございます。時間まで、こちらでお待ち下さい、時間になりましたら、また職員がお迎えに上がります」
「分かりました」
案内してくれた先生は、挨拶をして、応接室を出て行った。
これから職員会議が始まり、その後、チャイムが鳴ると、先生方は準備をして、各教室へと向かった。
先程とは、別の先生が、アーテル村の村長のお迎えに向かって行った。


二階建ての校舎は、元々、そこまで大きくないが、空き教室もある為か、歩くたびに気になるのは、空き教室の不気味さと、子供が少ないという、悲しさだ。
アーテル村でも、そこまで多くの生徒を抱えている訳ではないが、村である以上、他と比べると少ない方である。
ルージュ市も、人はいても学校は少ない方だ。
それでも何校かある。
市街地であり、面積は一番大きいのだが、デパートなど商業施設や、外国人受け入れ施設、その他国の一番大事な施設などがある為、住人というよりそこで働いている人が多い街である。
それゆえに、一番、学校や生徒数が多いのは、ヴィオラ町である。
一番国の中央に存在し、至る所に行き来しやすい為に、住んでいる者も多いのだ。
今は二つに分離したが、今でも学校と生徒数が多いのが、ヴィオラ町である。
グリューン村は農村地区や、国の中で一番大きな森、さらには国王の森もある為、どうしても、しょうがないのだ。
アーテル村の村長は、校内を歩きながら、村長としてアーテル村の学校の存続も、常に気にかけていなければと思いながら、歩いた。



体育館の扉の前で待ってくれという指示に従い、村長はそこで待つ事となった。
先に一緒だった先生が中に入り、他の先生へ伝達し、アーテル村の村長さんを、扉の前まできてもらい、待ってもらっている事を話した。
体育館では、すでに生徒が準備を終えて、始まるのを待っている。
先程、村長と歩いてきた先生とは別の先生が、移動式のホワイトボードの前に立つと、「では、今からアーテル村の村長さんをお迎えして、皆さんに国の歴史を勉強してもらいます。村長さんが入って来られたら、拍手で迎えて下さい、それでは、村長さんどうぞ!」
先生の合図で、村長と一緒に体育館まで来た先生が、扉の前まで行き、扉を開けて、村長を中に入れた。
村長の姿が目に入ると、先生方は拍手をし、それに倣い、生徒たちも拍手を始めた。
子供達は、興味深々といった感じで、モグラの獣人を見つめていた。
村長は、こういう仕事は慣れているようで、緊張した感じはなく、歩いている。
ホワイトボードの前が、立ち位置らしい。
村長の足がそこで止まった。
一呼吸おいて、村長はマイク片手に喋り出した。
「皆さん、初めましての子が多いかな?私はこの村の隣の、アーテル村から来た、アーテル村の村長の土屋と申します。いつもなら、村長さんと呼ばれていますが、今日は久しみを込めて、私の事は、「モグラさん」と呼んで下さい。では、始めようと思います」
モグラさんはそう言うと、ホワイトボードの方を向いた。
低年齢の子にも、分かりやすくする為、工夫しながら何かを書き始めた。
途中、説明を入れる為、生徒達の方へ向く。
いつも人に向かって話をするからか、モグラさんの説明は、丁寧で分かりやすかった。
モグラさんが話す昔話は、けして悪くは言わず、国王の事もサラっと話しただけで、何をどうしてという部分は、子供向けの話をした。
後はちょっとしたゲーム感覚で、『むかしをはっけん!ゲーム』と題した学校行事を、行う事となった。
村や町で、昔を発見出来る所を探し、どこどこにある、というのを見つけてくるゲームだ。
ゲームといっても、勝ち負けではない。
時間内にどれだけ見つけられるかが、重要である。
この学校の生徒数が少ない為に出来る、学校行事である。
今日は一日、遠足気分で町歩きの日である。
体育館での説明が終わると、生徒は各教室に戻って行った。
遠足用のリュックに、お弁当や水筒、おやつが入っている。
それを皆、取りに行き、準備出来次第、校門の所へ集まる事となっている。
生徒はそれぞれの教室で、今、聞いた事をメモをしたノートと筆記用具をリュックにしまい、外に出る準備をした。
今回歩くのは、グリューン村とアーテル村である。
お昼はそれぞれ、指定されている公園などだ。
最終的に、体育館へ戻ってきて、生徒の成果を聞き、大きな紙に地図を書いていく。
今回の特別授業では、回りきらない部分がある。
そこは宿題に出されたり、次回の授業で埋める事になった。
モグラさんは、一旦、自宅に帰り、生徒達の帰りを待つ。
学校にいてもやる事が無い為、先生の連絡があり次第、また学校へ戻る。
その間に自分の仕事を片付けるつもりだ。
モグラさんは、生徒の近くをすり抜け、帰路に着いた。
準備が整ったのか、校門には子供達と先生が集まっている。
高学年の子は、アーテル村まで移動する為、高学年の子達が出発し始めた。
低学年の子達の出発は、少し後になったが、皆、お喋りなどをして、待機している。
時間になり、先生が低学年の子達に「では、スタート時間です」と言うと、低学年の子達は喋るのを止め、先生の指示に従い、ゲームをスタートさせた。



昼を外で食べ、お菓子も食べて、ちょっとした遠足気分だった生徒達は、また全員、体育館へ戻って来ていた。
体育館での作業を終えると、荷物を持って各クラスへ。
今日は特別な授業だった為、それだけで一日を費やし授業が終わった。
簡単に掃除をして、帰りの会を済ませると、生徒達は家に帰って行った。
一日中、特別授業で、体育館でみんなで過ごしたり、村の中で歴史の分かるような場所まで行って探索したりして過ごし、普段足を踏み入れない場所へ行った為、子供達は新鮮な気持ちで過ごした。
たまに村を出て遊びに行く時は、町やデパートに家族で行く、という事が多かった。
また、村を巡るが、宿題として出されている為、学校に通う生徒全員でやるわけではないが、子供達は友人同士で集まり、楽し気に宿題をこなした。
先生も、無事に今日の授業が終えられた事に安堵していた。
この村は小学校も中学校も少人数である。
問題が少ないのは、先生としても、ありがたかった。



その日の夜中
とある家にフクロウがやってきた。
フクロウの為の出入り口から、勝手に入ってくるこのフクロウは、とある者からの使いのフクロウである。
飛んできた先は村崎家のお父さんの書斎である。
フクロウの足に紙が付いている。
それを取ってやると、フクロウはまた飛んで行った。
お父さんはフクロウの足についていた紙を広げると、差出人は「キーラン・アトウッド」と書いてあった。
キーラン氏の手紙の内容は、今回の学校行事に対しての事が書かれていた。
内容としては、「今回は侵入が無かったようだが、我が森に侵入があるようなら、容赦しない、覚悟しておけ」という事だった。
何も起こらなかったから、良かったものの、何かあったら大変である。村崎家のお父さんは学校の先生との連絡は取り合っている。
宿題として出された為、今度は子供達だけで村を廻る事になっている。
お父さんは、気を引き締めて、警戒する事にした。



翌日の早朝
村崎家のお父さんと、山崎家のお父さんは、二人で森の巡回をするのが、朝の日課である。
【迷いの森】と書いてある、看板の前に二人は集まった。
「じゃあ、今日も行くか」と、村崎家のお父さん。
もう事前に、フクロウの手紙が届いた事は、山崎家のお父さんにも伝えてある。
「何かあったら、無線で連絡するから」
「頼んだ」
「じゃあ、後でな」
山崎家のお父さんが手をあげると、村崎家のお父さんも手をあげた。
二人は同時に森の中へ入って行く。
夜の間に異変がないか、調べる為だ。
二人はすぐに別れて、森の奥深くへと入って行った。
一方、村崎家と山崎家のお母さんは、二人で村崎家のキッチンで朝食の準備をしていた。
こちらにもフクロウの手紙が届いている事は伝えてある。
平屋の家は、村崎家の方が大きく建てられている為、村崎家も山崎家も、村崎家で朝食を食べる。
そうする事で、会話が出来るからだ。
どっちがどっちという事は無い。
気に入った方の家に住んでいるだけだ。
ただ、話しやすい為、ずっとこの二家族は、食事を一緒に食べている。
どちらにも、キッチンやダイニングはあるのだが、二家族でお金を出し合い、食材を持ち寄り、一緒に作って食べている。
昔からそうやって生きていた為、何も変だとは思っていない。
それがこの二家族の普通なのだ。
二家族の二人の娘も起きて、ダイニングに集まってきた。
娘達は、フクロウの手紙が来た事は、まだ知らない。
朝の支度が整い、村崎家の娘、花蓮は、昨日の夜の事を思い出していた。
ちょうどフクロウが飛んでくる前、怖い夢を見て目が覚めてしまったのだ。
フクロウが家に飛んできた事は知らないが、花蓮は部屋の電気をつけたのだ。
“怖い物”というのは、別に嫌いじゃないし、恐怖心はあまりない。
お化け屋敷などにも、平気で入るタイプだ。
しかし、夢見が悪い、となると、話は別である。
不気味で気味が悪かった。
何とかベッドから起き上がって、トイレに行こうとした時だった。
森の方から何か、ザワザワと音がしていた。
気になったままトイレに行き、部屋に戻った所でカーテンを少し捲り、外を見た。
その男はこちらを見ていた。
暗い森の中に佇む男、それはまさに、死人のような姿だった。
幼い頃、絵本で見た魔法を扱う魔女や魔法使い、その姿に見えなくもないが、あれは死神、黒魔術的な感じにも見えた。
むしろ、『そっち系の人』といったイメージだ。
あれはいったい、誰だったのだろう。
かれんはグルグルと頭の中を回転させたが、答えは出てこなかった。



学校へ行くと、低学年の子が、前を歩いて、昨日の事を話していた。
六年生にあたる菖蒲クラスに入ると、教室には、誰もいなかった。
夜中の事があるからか、今日はとくに、この静かな教室が、花蓮の中の寂しさを増した。
夢見が悪かったのと、何か不審な男を見たからかも知れない、と花蓮は思った。
あの後、直ぐにカーテンは閉じたが、あの男は絶対に自分と目が合っているハズだ、怖い、何かされたらどうしようと、あれからずっと考えている。
机にランドセルを置いて、椅子に座り、ランドセルの中身を、おどうぐばこの中に移す。
その時、風で窓がガタガタと音をたてた。
そんな音にもビックリしてしまい、おどうぐばこに足をぶつけてしまった。
慌てておどうぐばこをしまい、ぶつけた所をさする。
「風でも吹いたのか」
気付けば、なんてことないが、何となく心細い。
普段、お化け屋敷も恐怖映像も、とくに怖い、とは感じない分、意外と自分は怖い物がダメなのか?と考え始める。
そんな事は無い、大丈夫と自分に言い聞かせ、ランドセルを棚にしまう為、席を立つ。
背中に何か、視線を感じる気がする。
気のせいだ、と、思い直し、棚の方を向いて歩き、ランドセルをしまう。
一呼吸して、後ろを振り向くと、やはり誰もいない。
こんな時、一人なのが辛かった。
昨日の授業の事を思い出すと、あれは確かに楽しかった。
国の歴史というより、ほぼ、町歩きだった。
確かに名所みたいな所は行ったが、皆で体育館に集まり、ワイワイと報告会。
大きな紙に自分達が調べた村の事を書き、歴史探検の地図を作っていく。
今度、また別な時に開催され、今度は三つの町を調べるのだが、川の町はまだ新しいのだが、元は隣町の一部という事で、隣町と一括りにされ、後は海の町を調べる事となった。
二つある島は、もう所有者がいる為、歴史探検で訪れる事はない。
次に町を調べるのはいつなんだろうと、花蓮は思った。
そうやって、楽しみな事、嬉しい事など、明るい事を考えていないと、また、あの怖い男の事を考えてしまうと思っていた。
気をそらそう、そらそうと思っても、一人だと、どうしても考えてしまう。
山崎家の娘がいる教室に行っても良いが、なるべく学校では、森の方にいた不審な男の事は、話さない方が良いだろう。
花蓮は仕方がなく、気を紛らわす方法を考えた。



学校が終わりのチャイムを鳴らした。
花蓮は掃除をして帰りの会をして帰る。
この学校では、どのクラスでも先生が掃除を手伝ってくれる。
それから先生は、一旦、職員室へ戻り、帰りの会で再び教室へ戻ってくる。
今まで、花蓮の中で、先生という存在は、そこまで大きくなかったが、今日だけは“大人”というだけで、安心が出来た。
家へ帰れば、山崎家の娘、花梨がいる。
家で花梨に話を聞いてもらおう、そう思うと少し気持ちが楽になった。
花梨が傍にいてくれれば安心だ。
今日は家へ帰ったら、山崎家へ行こうと、花蓮は考えた。
帰り道は一人だが、時間がたったせいか、怖さは薄れていた。
朝の方がなんだか怖かったくらいだ。
花蓮と花梨は、ご飯は一緒に食べても、同じ時間には登校しない。
帰りも同じである。
友人である事は間違いないが、姉妹のように育ってきたのと、お互い、あまりべったりと、くっつかないタイプである。
一緒にいる時は一緒にいるが、別に絶対、一緒にいなくてはならない、という事は無く、無理には一緒にいない。
この距離感は、昔からである。
お互い、この距離感が一番、居心地が良く、何も言わなくても、こうなっていった。
村崎家も山崎家は、父親も母親も普通の仕事をしている。
アトウッド家と、繋がりがあるとはいえ、それを隠す必要がある。
だからこそ、普通の生活をおくる事が重要になってくるのだ。
このまま、村崎家も山崎家も、普通に生活していきながら、子供達も普通に大人になっていくのだ。
しかし、二家族の絆は、変える事が出来ない。
だからこそ、お互いの“つかず離れず”の距離感だ。
それは、家同士でも同じ事である。



花蓮が家に帰ると、真っ先に部屋へ行き、ランドセルを置き、隣の家へ急いだ。
隣の家に行くと、花梨の部屋を目指す。
花梨の部屋をノックし、「花梨、いる?」と言うと、中から声がした。
ドアを開け、中に入ると花梨は机の上に教科書とノートを広げていた。
「今、宿題やってたんだ、花蓮の学年は宿題でた?」
「いや、出てないよ」
「そうなんだ、良いなぁ。あっ、とりあえず、座って」
「うん」
「で、どうしたの?」
花蓮は適当に座ると、ここに来た理由を話した。
すると、花梨から「それ、やばくない?」と言われた。
花梨は花蓮に、親に相談した方が良さそうだと告げた。
「えー?そうなのかな?」
「結構な性的趣味をもっている奴かもよ」
「幼女趣味?少女趣味?キモッ」
「だとしたら、花蓮の事を見てたのかな?」
「えーっ!無理無理っ」
「じゃ、なかったら、昨日学校に来た、モグラとか?」
「アーテル村の村長さんじゃなかった?」
「うーん、夜中にあの森でしょ?あの森って、進入禁止でしょ花蓮、このままじゃ危ないって」
「どうしよう…」
「とりあえず、今は私の部屋で過ごしなよ」
「うん」
花蓮は今日、花梨の所で過ごす事にした。
夕飯はまた、村崎家での食事になるだろうが、それまでこっちにいて、気を紛らわし、夕飯時に戻ればいい、後は家の中で過ごすにしても、家族がいるから大丈夫だと考えた。
とくに父親は、頼りになる、父親がいれば安心だと思っている。
花蓮は花梨の部屋で、本を読んだりして、時間を潰すことにした。
この距離感が、安心する。
村崎家と山崎家、二家族はこうしていつも、お互いの存在に助けられている。

              第一話 終わり
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