第1話   ここはフードコート。

文字数 1,003文字

「あら、時計止まってるわよ。」
「ほんとだ、困っちゃうね。あたしら掃除のおばちゃんは、腕時計みる暇さえないんだからね。」
「星野さんに電話しとくよ。時計の交換くらい、出来るでしょう?」

ここは郊外のショッピングセンターであります。
地名を言えば、地方だということがバレてしまいますから
内緒にしておきますが、いまどき日本には数百のショッピングセンターがあって
同じ数の「フードコート」があります。

皆さんはご存じないかと思いますが「私たち」神様の世界では、全国ショッピングセンター神様協会と
いう組織がありまして、その下部組織として「フードコートエンジェル部会」というものがございます。
なぜ女性っぽいのか?正確に言えば神様は性別では分けられていなくて、役割で分類されます。
フードコートの利用者は、圧倒的に女性が多いので、お客様の気持ちに寄り添うためにも
エンジェル部会が担当している、ということでございます。

毎日毎日、フードコートではドラマが起きています。
ひとたびショッピングセンターがオープンしてしまえば、1年中休みがありません。
開店前には、朝の6時から清掃スタッフが床掃除を始めますし、閉店後にもゴミだしとか
翌日準備などを、各お店で遅くまでしているのです。

働いているスタッフも、老若男女、それぞれに人生の事情を抱えながら、一生懸命働いています。
もちろん、ラブラブなこととか、パワハラとか、ここには書けない「ピー!」みたいなことも
あります。
私たちは、一応神様なので、お客様の心の中が見えてしまいます。
年齢に関係なくわかってしまうので、例えばママ友の悪口を聞いている、赤ちゃん同士が
「そんなに翔ちゃんのママのこと、悪く言っちゃダメだよ。」とか
「うちのママも、家ではため息ばかりついて、同じような口癖あるよ。」などと
こころの会話をしているのも、もちろんわかります。

ところで、フードコートの時計が止まってしまったようです。
「彼」は電波時計でしたから、センサーに異常が起きたのかもしれません。
狂わないことが、彼の一番の自慢であり、仕事でもありましたから、きっと落ち込んでいるでしょう。
でも「星野さん」なら、すぐ直してくれるでしょう。
星野さんは、人間ですけれど、とてもきれいな心をもっている方です。

さて、プロローグはこれくらいにして、次からは毎日起こっているドラマの中から
みなさんに覚えておいてほしいエピソードを紹介いたしましょう。





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