第4話

文字数 622文字

日々は漫然と過ぎ去って行く。気付くと紗耶はもう1人仲良い子ができ、
3人で行動することが多くなった。
「昨日の芸能☆リサーチ見た。」
紗耶がワクワクした様子で聞く。
「見るに決まってんじゃん。」
もう1人仲良くなった笠井舞が答える。
天然パーマの少しウェーブがかった髪が印象に残る子だ。

紗耶と舞のスピード感あるレスポンスが始まる。
「だよねー。あの番組めっちゃ面白いウケるもん。」
「吉田賢也って格好いいよね~。」
「あたしも思う。」
「杏も見たよね。」
ふいに杏に話が振られ、乗り遅れないように急いで答える。
「わ、私見てない。」
「え、どうして。」

本当に驚いた顔をされる。瞬時に冷や汗が出る。まただ。
頭の中は最適解を求めて回転している。一方自分の声が遠ざかっていく。
他人の発言みたいだ。こんな言い方良くないのに。
「あんまり、テレビ、見ないから。」

捻り出した言葉だったせいか、自分の声が妙に冷たく響いた。
あの番組は色んな芸能人を出演者が毒舌コメント批評するという流れだった。
杏はそんな事を聞くのが苦痛で見ないようにしていた。
毒舌コメントは、寄ってたかっての悪口と紙一重だ。

「ふーん。」
紗耶はそう言うと舞とまた何かの話で盛り上がり始めた。
しかし杏は口を噤む。
どのタイミングで話に入れば良いかも分からないことに加え、
何だかやらかしてしまった事だけは分かったからだ。
日を追うごとに、杏の疎外感は強まっていった。
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