第5話

文字数 991文字

ある日、「柴田って倫理観バグってるよな。」と言われた。
なんじゃい!バクっとらんわ!
と思い、それなりにショックを受けた。倫理観というのは人間が生きる上で守るべき規範や秩序のことだ。それがバグっているとは何事だ。全く、怪しからん奴だ。

まあこれだけであれば私の寛大な心で許してやってもよい。しかし、悲劇は一度ではなかった。
またある日、「怜璃は力とか技術があるわけじゃなさそうだけど、人を殺すのに躊躇なさそうだよね。」と言われた。
なんじゃい!躊躇あるわ!しかも同じ奴ではなく、違う人間に違う日に言われたのはなかなかにショックであった。

と言いたいところだが、なかなか興味深いテーマである。犯罪の抑止力というのはどこから生まれるのだろうか。もちろん刑法などで定められた罰が恐ろしくて犯罪を犯さなくなる、ということはあるだろう。だが、そういったルールが生まれる前は完全に無秩序だったのだろうか。もしそうなら、人類は滅びていそうなものだ。

もし私が犯罪を犯しても裁かれない世界で殺したいほど憎い奴がいたら、どうするのだろう。迷わず殺すのだろうか。いや、それはないだろう。私が殺人を犯しても裁かれないということは、相手が私を殺すのもまた然り。相手の報復に怯えながら何十年も暮らすのは耐えられない。私がそいつを殺すことができたらあとはもう何もいらない、という心境になれば怯えることはなくなるのかもしれないが。
人を殺す、という行為自体の恐怖について考えてみる。ドラマ、映画、アニメ、漫画、小説などで読み取る限りは誰しもが殺人を犯すことに抵抗があるようだ。まあ、あるよな。当然だ。同じ人間なんだから。嫌いすぎて同じ人間とは思えないような奴もいるが、それでも躊躇なく殺す、ということはないはずだ。一応私も良識と常識を持ち合わせる人間だからな。

どうだろう、ここまできたら、もう私を倫理観バグっている人間だと思う輩などいるまい。どうだ、見たか、友人A・N!これからは私を映画で見るようなサイコパス扱いするんじゃないぞ。
そもそもサイコパスとは感情が一部、特に思いやりや愛情が欠如している人間のことで、別に人を殺したくてウズウズしているような人間のことではないらしい。1%~数%いるらしいが、日本だけでも100万人以上いるのは多すぎだろ。

以上2点の理由により、柴田怜璃は倫理観がしっかりとした少女だと言える。証明終わり
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