海の家♡ラブストーリーフェス2019
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文字数 6,494文字
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ところが、急遽現れたナゾの建物、「海の家♡DAYS」。
今度こそバイトはナシで……って思っていたのに、つい面白そうな匂いを嗅ぎ取って、気付いたらもう働いていたのです。
……なんでだろ?
☆ ☆ ☆
あの人、おおきい星形のサーフボードなんか乗っちゃって子供みたい。
緑色の髪に、やたらと白い肌。
格好悪くはないんだけど、あんまりサーファーには見えないなあ……。
拾う方の身にもなってほしいよぉ……
あとでまとめて片付ければいいのにって思うんだけど、
定期的に回収しないと余計に捨てられちゃうから、だって。
……ん?
あんなとこに一人用テント建てて、首だけ出してるヘンな人が――
って、ここはみんなヘンな人だらけだったっけ。
や、山下君!?
なんでこんなとこに!?
ナツキちゃん……
君こそ何やってんの?
まさか、よりによって、
テントから顔だけ出してるヘンな人が、
今会いたくない人NO1!の、去年バイトで一緒だった山下君だなんて!
あ~~さいあく~~
せっかく去年の残念バイトの思い出を上書きしようと思ったのに!!
そう、去年の私は、リゾートバイトにロマンスを求める女子大生だったのです!
まあ、さすがにこの環境でロマンスもヘチマもないけども。
山下君って、わりとイケメンで、
ちょっとクールで知的な人かな?って思ったけど、
ただの性格わるいヤツだったんだもん!
なにもなかったどころか、忘れたい記憶だったのに!
ゴミ拾いちゅう……
そ、そっちこそ、テントから頭だけ出して
気持ち悪い
あるわけないじゃん
なにそれ
まあ、探偵の手伝いみたいなもんかな
で、だれ見張ってんの?
去年いじわるされたことなんて、すっかり忘れていたのです……。
……で、あの人なんか悪いことでもしたの?
目的が分からないので調査に来たんだよ
なにかあってからでは困るからね
王族なのに護衛とかいないのかな……?
店長に怒られそうなので(こっち見てる)
ゴミの袋を引きずって海の家に戻りました。
大丈夫?ナンパとかされてない?
そっか……私のこと心配して
見ててくれてたのか……。
怒られそうとか言ってゴメンなさい。
去年バイト先で一緒だった人が偶然いたんで
ちょっと話しをしてただけです
ごめんなさい
そうか、知り合いの人なんだね
ビーチを歩いていて、
もし困ったことになったら、すぐ僕に言ってね
店の外に出て行きました。
裏へタバコでも吸いに行ったのかな。
なにを企んでいるんだい?
誰かと間違えておられるのでは?
私は貴方のことは存じ上げませんよ
それでも調査員かい?
……まあいい
うちのバイトちゃんに何かあったら
タダじゃおかないからな
むしろウロウロされてジャマなんだ
あまりこっちに寄越さないでもらえますかね
こっちも仕事中なもんで
腹が減ったら店に来るといい
定価で売ってやろう
お気持ちだけ受け取っておきますよ
ま、ドリンクぐらいは買ってもいいですけどね
なら、デリバリーでも頼むといい
最低線、騒ぎだけは起こさないでくれよ
みなさん大事なお客様なんでな
では邪魔をした
それにしても、大事なお客様とはな
この奇妙奇天烈な連中が、お客様だと?
悪巧みをしてるのはそっちの方だろ……
ナツキちゃんが心配だ……
ご自分でデリバリーたのんでもらえますかー
メノマエニオマエガイル
ソレヲウッテクレトイッテイルンダガ
その子はうちの看板娘、売り物ではないんですよ
後ほど別のものをお届けしますので、
これでも飲んで待っていてください
あぶなかったあ……
もしかしたら大変なとこに来ちゃったのかも……
あわわ……
でもやめたくないし……山下君も気になるし……
もうちょっとがんばろう。
済まないナツキさん、一人にしてしまって
早急に対策を考えるよ
できればそうしてもらえると
ありがたいですぅ……
あはは……
あ、山下君まで!テントのまま這いずって来た!
気持ち悪い!
ヤドカリ???
ご注文を承ります
メニューをどうぞ
注文はもう決まっているからだ
そこの娘を頂こう
如何程か?
別の者を手配致しますので――
(それより、王子はいったいナツキちゃんを買ってどうしようと……)
妻が手に入ると聞き及んで
直接参ったのだが……
(だからヘンな人ばっかいるの!?)
我が妃となる気はないか?
相応に贅沢な暮らしをさせてやるぞ
海の底の国にこの子を連れて行くことは
出来ません。すぐ死んでしまいます
ビーチで同種族の方をお探しください、殿下
余はこの娘がよいのだ
そうだ、この場所に離宮を建てるのはどうか
ビーチごと買い取ってやろう
余は、しばらくなら地上にもいられるからな
海の底とか、陛下とか、離宮を建てるとか、
いったい何の話しをしてるんですか???
あきらめてもらおう!
私とヒトデの王子さまの間に割って入ってきちゃった。
どどど、どういう展開???
この者たちは将来を誓い合った仲ゆえ
どうぞお引き取りを
なにこれええええ!!
ソノムスメハワタシガサキニ
メヲツケテイタノダゾ
ウホ
出て行きなさいよ
この人って決めてたんだぞ!
おとーーさーーん!
ヒトデの王子さまが、どこからか巨大ヒトデを取り出して
床の上に突き立てた!!
余はリュウグウの皇太子である!
皆の者、控えよ!
皆マナーを守って、出会いを楽しんでいるのでございます
しかし、これ以上の迷惑行為は越権行為として
本国に連絡させて頂きますぞ
こんな危険な場所に置いてはおけない
私まだバイト中だし!
余はまだ諦めはしないぞ
今日のところは店主の顔を立てて
引き下がってやろう
娘、よくよく将来のことを考えるがよい
いーーーだ!
他のよくわからない人たち(?)も、
一緒に外に出て行きました。
情報量が多すぎて、もう私わけわかんない……
店長さんよ
全員当事者だ、俺も種明かしをしてやろう
あまり聞かれたくない話みたいだけど、
ここで逃げたら本末転倒、
この不思議な海の家とビーチの秘密が知りたくて
バイトを始めたんだから……
当事者だし
現時点をもって君は俺の保護対象になったのだから
店長さんよ、異存はないな?
そこまで言うならかまわんだろう
それに、君がナツキさんを護るというなら
私も助かるよ
接客中は目を離してしまうからな
珍客に見せびらかしていた男が
よく言うよ……
ヘンなこと吹き込まないでくれよ
コードネーム・ヤマシタくん
二人の話を要約すると……
店長は隣町の神様で、さる筋から頼まれて、
出会いの少ない人外さんたちのために
この海の家を作って出会い系ビーチを主宰した……と
???
山下君は、とある探偵事務所の所員で、
(というのは表向きで、実はさる筋の特務機関の所員で)
さる筋から頼まれて、
地上に遊びに行ったヒトデ王子の監視をしてた……と
さる筋、さる筋、さる筋って、いったいなんなの???
まさか全部おなじってわけじゃないよね???
――っていうか、神様?特務機関?
もう私の頭じゃついていけない……
もう逃げないって決めたんだから!
逃げ癖娘が一年で成長したのかな?
個人の意志は尊重する主義だ
君の安全も俺が保証しよう
そのかわり――俺はここで君と王子と店長を監視する
この店で人身売買のあっせんをしていない
という証拠はまだ見つかっていないしな
どうだ、店長?
かまわんよ
邪魔にならない場所に座るといい
実際、人身売買のあっせんなどしておらんのだから
証拠が出るわけもない
営業妨害以外は好きにしたまえ
こいつの顔みながら
仕事すんのやだああああ><
そこまでヒドイ顔でもなかろうに
それに、俺は君の顔を見ながら仕事をしても
まったく問題はないぞ
フィアンセなんだから近くにいても不自然ではないだろう?
どっからその設定出て来たの
とにかく!
半径1メートル以内に入ってきたら殺すからね!
そういえばまだご飯食べてないし、冷蔵庫に入れて置いた
私用のサンドイッチでも食べようかな……
一体君たち、去年なにがあったんだい?
そこに彼女がバイトに来ていたんだ
可愛い妹分みたいだから、それ相応の扱いをしていたら
なんだか嫌われてしまったみたいだな……
ガールフレンドを作るなんてマネ
偽装工作のためでもなければ
出来るわけないでしょう
なるほど……
ふうん……
ったく神ってやつは……
(神は面白半分に人間を観察しては)
(ニヤニヤする下品な生物というのは)
(本当のようだな)
ほったらかしのテントを片付けはじめました。
……っていうか、今の、なに?
え?
山下君って……私のこと……
どういうこと?
気の早いリゾート客がちらほらとビーチを散策していると、
波に乗って怪しい集団が砂浜に滑り込んできました――全員、ヒトデに乗って!?
そのままビーチに上陸して、こっちに向かって歩いてきます。
あ、あれは!?
今日はお前に手土産を持って参った
受け取るがよい
フタをあけ、私に差し出してきました。
いずれも地上にはそうそうないものであろう
気にせず受け取るがよい
なんなら、余の前で身に付けてはもらえないか?
ガラクタをまとめて持って帰れ
ナツキちゃんもそんなもん受け取るな
後で何があっても責任持てないぞ
聞き捨てならんな
やはりここで手打ちにしてくれようか
王子やめてください!
警察呼びますよ!!
ここでは迷惑だ、外に出ろ
褒めてやろう
我が妃よ、余の勇姿をその目に焼き付けるといい
海の家の前で繰り広げられることになってしまいました。
……っていうか、店長どこいったの?
買い出しに行ったまま帰ってこないんですけど!!
ミセモノカ
急にギャラリーが集まってきてしまいました!
おまけにドリンクがいっぱい売れて売れて……
うーん、店長、忙しいから早く帰ってきてええええ!!
お前、好きな得物を取るがよい
余はこれだ!
それはまるで、サンゴを寄せ集めて作ったような、
つるつるして光沢のある、斬り合いなんかしたら壊れてしまいそうな、
美しい剣です。
一方、山下君はというと――
ジャキッっと金属の棒が飛び出しました!
お巡りさんや警備員さんが持っている、三段警棒に似ています。
ヒトデ王子の剣より短いけど、大丈夫なのかな……?
それでは――はじめ!!
…………こげてる
ヒトデ王子に直撃したのです!
あわれヒトデ王子は、電撃でコゲコゲになってしまいました。
……これってヒトデ焼き?
ニンゲンの勝ち!
殿下、ご無事ですかな?
随分と早い結着で
余は帰る! こんな場所、二度と来るものか!
よくわからないけど、山下君がヒトデ王子を追い払ってくれたようです。
これで落ち着いてバイトに専念出来る……といいんだけど。
ヒトデ殿下にお引き取り頂けて助かったよ
これで君の任務も終了だな
私の方をチラリと見ました。
ここに戻って来ないとも限らない。
あんたがこの出会い系ビーチを閉鎖するまで
俺はここで監視を続けるつもりだ。
バイトが終わるまで、ここで……私を見張ってるってこと?
君もその方がいいんだろう?
ふっふっふ……
店の奥に行ってしまいました。
ったく、店長ってば……
『君もその方がいいんだろう?』って
どういう意味?
腹も減ったことだし、なにか作ってもらおうかな
ナツキちゃん
カレーとラーメンとやきそばと焼きトウモロコシを
注文しました。
知らなかった。
彼がこんなに大食いだったなんて。
とりあえず、山下君のおかげで、
竜宮城に嫁がなくて済みそうです。
今のところ……
このバイトが終わるまでに
山下君と、もうちょっと仲良くなれたらいいな。
(了)
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