第10話 師団集合会議開催 第1師団団長の正体

文字数 2,727文字

悠が学校に来なくなって2か月がたった。

翔らが教官に理由を聞いてもいつも「家庭の事情」と言ってはぐらかされてしまう。だが、悠の母親は悠を生んですぐに亡くなり、父親は行方不明なため家庭の事情は考えにくい。

そんな中、師団集合会議が開催される日になった。翔は悠のもらったチケットをもらって向日葵と千秋、京子を誘い会場に向かった。会場は2階から1階が見下ろせるようになっており1階の真ん中に大きなテーブルがありそこには9人が座っており、それぞれ後ろに1人ずつ立っていた。

 翔:
 「あれが各師団の師団長と副師団長。」

 千秋:
 「でもやっぱり第1師団長だけいませんね。」

 京子:
 「確かにこういう場にも出ないのかな?」

翔たちは用意された席に座り、会議が始まるのを待った。

会議開始時間となり、1階の後ろの扉から1人の女性が出てきた。

 女性秘書:
 「皆さんお待たせしました。これより会議を開始致します。が、その前に1つお知らせがあります。」

女性がそういうと2階席にいた各地域の重鎮たちがざわつきだした。

 女性秘書:
 「我が第1師団の師団長がこの会議を持ちまして本格的に参加します。これまでは諸事情によりあまり参加できませんでしたが、本日から本格的に参加します。」

 女性秘書:
 「それでは師団長から一言ご挨拶があります。」

後ろの扉から背中に『壱』と書いた羽織に紺色の着物姿で腰に刀を携えた狐のお面をつけた人が出てきた。身長は170前後で右手の人差し指に指輪をしていた。

 向日葵:
 「翔、あの人ってもしかして。」

 翔:
 「ああ、多分あいつだろう・・」

翔と向日葵は第1師団長に対しての心当たりが確信になった。

第1師団長はお面を外した。

 男性:
 「お初にお目にかかります。第1師団長を務めています。夜岸悠と申します。」

 翔・向日葵
 「「やっぱり。」」

 悠:
 「まだ学生の身でしたので表立った活動を抑えていましたが、敵も本格的に動いてきたのでこちらの仕事に専念しようと考えた次第です。」

 「ふざけるな!」

という声が2階席から上がった。声を上げたのは中央部と南部の大臣だった。

 中央部大臣:
 「そんな子供が第1師団長?ふざけるな!こっちはお遊びに付き合ってる時間はないんだ。」

 南部大臣:
 「中央部の大臣の言う通りだ。おい!李、スターク。お前たちそこのガキをつまみ出せ!」

しかし、2人とも即座に

 「無理。」

と答えた。

李梓豪(リ・ズーハオ)は第7師団長、スターク・デイビスは第3師団長で二人とも戦闘能力はずば抜けて高く、トップクラスに強い師団長だ。

 南部大臣:
 「なぜだ。お前たちの強さならそのガキを簡単に倒せるだろう。」

 スターク:
 「だから無理ですって。悠はこの若さでここにいる全師団長の誰よりも強いんですから。」

 李:
 「そうそう、誰も勝てたことナイ。」

 中央部大臣:
 「なんだと!わかった『ギフト』だ。『ギフト』がかなり強力なんだろ。」

中央部の大臣の言葉に師団長全員がため息をつき、スタークがこう返した。

 スターク:
 「悠の『ギフト』が強力なら俺たちはチートだな。」

 老人:
 「違いないのう。悠坊の『ギフト』はとても強力とは言えんのう。」

スタークに続いて返したのは第5師団長のアドロフ・マキシムだ。彼は師団長最高齢の85歳だが未だ現役で活躍している。

 南部大臣:
 「オイガキ!お前の『ギフト』は何だ。」

 悠:
 「自分の『ギフト』ですか?自分のは【武器使い】(ウェポンマスター)。武器の使い方を一瞬で理解できるようになるギフトです。」

 中央部大臣:
 「は?それだけ?そんなわけないではないか。そんな『ギフト』で他の師団長に勝てるはずない。」

 スターク:
 「『ギフト』だけで言ったら確かに悠は誰にも勝てない。でもな、悠は異常なほどの努力と特殊な武器によって今の地位にいるんだ。何の不満もねえよ。」

 悠:
 「ありがとう、スターク。」

すると突然会場内に警報が鳴り響いた。

 女性秘書:
 「黒い霧発生!住民の避難を開始します。」

 悠:
 「彩音(あやね)、敵の数とここからの距離を教えてくれ。」

悠は第1師団副師団長兼団長秘書の涼風彩音(すずかぜあやね)にそう指示した。

 彩音:
 「はい、敵は50体そのほとんどが人獣型です。距離は約20キロ先方角は3時の方向です。」

 悠:
 「ありがとう、避難状況は?」

 彩音:
 「2分後に完了します。」

 南部大臣:
 「何をしている!早く現地へ行かんか。被害が大きくなるぞ。」

 氷室:
 「悠なら大丈夫ですよ。」

 南部大臣:
 「え?」

悠は右手に着けている指輪にキスをして

 悠:
 「おいで『業魔(ごうま)』。」

そういうと、指輪から和弓と片手の手袋、腰に巻くポーチが出てきた。

 中央部大臣:
 「なんだあれは?弓のくせに矢がない。」

 スターク:
 「まぁ見たらわかるよ。」

悠は腰についてるポーチのようなものからBB弾のようなものを取り出し、上へ投げた。すると、BB弾のようなものは矢の形のかわった。

 中央部大臣:
 「なんだと!」

 スターク:
 「悠の武器の一つ≪絶弓 業魔≫あれは使用者が触れた生物以外のものを全て矢へと変える。そして・・・」

100本の矢を作った悠は弓を引いた。

 南部大臣:
 「おい待て!そのまま打ったら建物が壊れるだろうが。」

悠はそんな言葉がまるで聞こえてないかのように弓を放った。

 悠:
 「万生豪雨(ばんせいごうう)」

放った矢は会場の壁をすり抜け、魔物のもとへ一直線にむかった。

 スターク:
 「業魔の矢は使用者が集中状態でいる限り、対象のみに当たる必中の矢となる。」

魔物のもとへ向かった矢はすべて命中し魔物を殲滅した。

 南部大臣:
 「あれだけいた魔物を一瞬で。」

 悠:
 「お疲れ業魔。」

全滅を確認した悠は弓をお指輪に直した。

 艮:
 「あれー?なんで師団長がみんないるの?」

そこには陸王幹部の艮が立っていた。

 艮:
 「あっ悠だ。どう強くなった?」

 悠:
 「艮。何しに来た?」

 艮:
 「陸王の旦那の指示でな師団長を何人か殺しに。」

 スターク:
 「舐めてるな。悠ここは俺にやらせてくれ。」

スタークがそう言って艮を睨みながら前に出ようとしたとき

 悠:
 「いや、スタークここは譲ってくれ。ここでみんなの『ギフト』をばらすわけにはいかない。俺の『ギフト』ならばれても痛くない。」

スタークは軽く頷き

 スターク:
 「わかったよ。負けんなよお前を負かすのは俺だからな。」

 李:
 「俺ネ。」

 マキシム:
 「わしじゃよ。」

後ろから李とマキシムが食い気味に言い合った。

 悠:
 「応行ってくる。」

艮は黒い霧をいくつか発生させた。

艮:
 「話は済んだか悠。」

悠:
 「あぁ、やろうか。」
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