第13話 批判再び

文字数 2,702文字

艮襲撃により、会議開始が遅れたが無事に会議が再開された。

 悠:
 「まずは、各地域の報告からだ。俺ら東部から報告する。彩音。」

 彩音:
 「はい。」

悠の後ろにバックスクリーンが現れ、会議資料が映し出された。

 悠:
 「第2と協力して作成した魔物の襲撃数と種類をグラフにしたものだ。東部では近年人型と獣型との併用が多いな。数もさほど多くはない。が、より市民を狙うようになっている。」

 氷室:
 「そうだな。禁止区域に出現してもすぐに市街地へ行くようになっている。」

涼介がすかさず語った。

 悠:
 「他の地域はどうだ?スターク。」

 スターク:
 「そうだな、こっちも同じような感じだ。それも獣型特有の狩るような感じじゃなくて連れ去るという方があってる気がする。」

 第4師団長:
 「第4も同じ感じです。人型の持つ武器も捕獲用の麻酔銃が多い傾向です。」

第4師団長のソフィア・スミスは悠に続いて若い師団長で最近就任し、実力も申し分ない。

 悠:
 「そうか、シーラちゃんのほうはどう?」

 シーラ:
 「そうね、大体同じ感じよ。でもこっちは気候のこともあるから夜に少数でこっそりってことが増えたわね。」

第6師団長のパブロワ・シーラは女性師団長の中で最長期間師団長を務めている。師団全体のお母さん的存在で怒らせると誰も手が付けられない。

 マキシム:
 「そうじゃな、わしの管轄もそうじゃ。昼が極端に少なくなって夜の襲撃が増えたわい。」

 悠:
 「成程な、李のとこはどうだ?」

 李:
 「そうネ。昼と夜の差ハ北部ほど激しくないガ、目立った襲撃ガ少ないネ。」

 第8師団長:
 「兄さんの言う通りです。出現場所も裏路地などが増えました。」

第7と第8の師団長は双子の兄妹だ。世界中で「最強の兄妹」として名をはせている。

 悠:
 「アエクそっちは?」

 アクエ:
 「こっちもよ、他の団と一緒。攫うってほうに力を注いでる感じがするわ。」

 第10師団長:
 「そうね、しかも攫おうとするのが子供が多いのよ。優先的に狙っている気がする。」

第9と第10師団長は両方とも女性の師団長だ。

 悠:
 「やっぱり、さっき現れた坤が命令している可能性があるな。」

 スターク:
 「でも、目的はなんだ?読めないよな。」

スタークが悠に向かって疑問をぶつけた。

 悠:
 「そうなんだよ。何がしたいのか。一応俺が戦った元人間のロボットとの戦闘映像があるからみんな見てくれ、彩音。」

 彩音:
 「はい。」

バックスクリーンに悠がコウモリ型と戦った時の戦闘映像が流れた。

 スターク:
 「これ本当にロボットの動きかよ。まるで人間だな。」

 氷室:
 「あぁ、完璧なコンビネーションだ。悠はよくあの装備で勝てたな。」

 悠:
 「まぁコンビネーションが完璧すぎたからな。そこをつくと大体は崩れる。」

 悠:
 「とりあえず、戦ってみた感想としては人格は完全になかったな。操られるというより命令に従っているといったほうが正しいかな。」

 スターク:
 「成程な、まぁそのほうが後々楽だからな。反発されると面倒だろうし。」

 アクエ:
 「それより、相手の目的よ。それがわからないのに対策は難しいわ。」

アエクがそう切り出したが、手掛かりが少なく答えが出ないでいた。すると、マキシムが

 マキシム:
 「悠坊や、分からないことを長々と考えている時間はないぞ。」

 悠:
 「マキシム爺さん・・」

 マキシム:
 「敵はこうしている間にも力をつけている何人もの人が改造されているかもしれない。じゃあ今やることはこっちも力をつけることじゃ。1人でも助けるために。」

 悠:
 「そうだね。ありがとうマキシム爺さん。」

 悠:
 「これからの方針として師団員の育成により力を入れることとする。反対の者はいるか?」

その場にいる全員が賛成した。ある人物を除いては・・

 南部大臣:
 「やはり、認めないぞ!お前みたいな小僧が師団長なんて。」

再び、南部の大臣が声を上げた。

 南部大臣:
 「お前みたいなガキが仕切るのはけしからん。お前がそこに座っているだけで不愉快だ。」

 中央部大臣:
 「南部の言う通り、君のようなガキに指示されるなんて反吐が出る。」

南部の声に便乗するように中央部も声を上げた。

 悠:
 「今はそのような議題を話し合っている時間がありません。今後の師団員の育成方法を話し合うのが先です。」

 南部大臣:
 「話を逸らすな!お前みたいなガキの代わりの候補などいくらでもいるんだ。」

 女性:
 「いい加減にしなさい!」

1階入り口の扉から1人の女性が出てきた。

 南部・中央部大臣:
 「「草薙総司令!」」

 千代:
 「南部と中部の大臣さん。なぜそんなに彼を批判するのですか?」

 南部大臣:
 「そんなちょっと強いガキが他の師団長の上に立っていることが不愉快です。聞けば、『ギフト』も大したことがないようではないですか。そんな奴が師団長なんて示しが付きません。」

 中央部大臣:
 「私も南部の大臣と同じ意見です。彼よりもっと優秀で適任がいると思います。なにせまだ子供なのですから。」

 千代:
 「ちょっと強いだけのガキ?不愉快?それ本気で言ってるの?」

総司令の発言に会場全体の空気がピリついた。

 千代:
 「確かに彼はまだ16にも満たない子供です。ですが、彼が就任してからのこの5年間ここ東部の魔物による被害は就任前より5割減少しています。」

 南部大臣:
 「!そんなわけありません!それはきっと第2の氷室による手柄でしょう。」

 氷室:
 「残念ながら俺じゃないですよ。俺だけの力じゃここまで減らせなかった。それに5年前のことを思い出してくださいよ。」

 中央部大臣:
 「5年前?あぁ、前の第1師団長が殉職した大侵攻のことか。」

今から5年前、東部におよそ3万もの魔物が一斉に襲来した。が、この侵攻による被害は数名の団員の負傷と師団長の殉職、多少の建物の破壊ですんだ。「奇跡の侵攻」と言えれている。

 中央部大臣:
 「その侵攻が何なのだ。」

 氷室:
 「その侵攻で俺たちが倒したのは約1万5千体。残りの半分は悠一人で倒しました。」

 南部大臣:
 「!なんだと。たった一人でそんな大勢の魔物を、いや!信じないぞ。そんなことできるはずはない。」

 千代:
 「南部の大臣さん、あなたも前線に立てばわかりますか?普通の人が送るはずだった生活を捨てて、手に入るはずの当たり前を捨てて、ひたすら戦い続けたらわかるかしら。」

南部の大臣は少し黙り込み

 南部大臣:
 「しかし、総司令・・」

その時

 謎の女性:
 「ねぇあんた、いつまで私のご主人を馬鹿にするつもりだい。」

悠の後ろから急に和服を着た長身の女性が出てきた。
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