第15話 悠の過去 南部からの応援要請

文字数 2,388文字

悠の過去を知るため、翔らは涼介のいる第2師団の基地へとやってきていた頃、悠はある場所へ赴いていた。

 男性:
 「今日は来てもらって悪いな。第1師団長殿。」

 悠:
 「いえ、総理がお呼びとあれば。」

悠に前に座っている人物の名は梅谷厳蔵(うめやげんぞう)。史上最年少の45歳で内閣総理大臣に就任し、8年間支持され続けている現内閣総理大臣だ。

 悠:
 「本日はどのような要件でしょうか。」

 総理:
 「あぁ、まずはすまなかった。」

梅谷総理は悠に頭を深く下げた。

 悠:
 「頭を上げてください!総理に謝罪されるようなことはされていません。」

 総理:
 「君を無理に師団の仕事に引き戻したこと、南部と中央部の君に対しても暴言や失言の数々、謝罪させてくれ。」

 悠:
 「そんな、この仕事に戻ったのは自分の意思ですし、大臣たちの発言は当然のことですので。」

 総理:
 「相変わらず謙虚だな君は。しかし、本当に良かったのか?こっちに戻ってきて他の師団長達もすぐに引き戻さなくてもいいと言っていたが。」

 総理:
 「それに全く仕事しなかったわけではないのだろう。草薙の長女に聞いたが合間合間に仕事をこなしていたそうではないか。しばらくはそれでもよかったのだぞ。」

 悠:
 「艮が現れた時にある程度決めていたんです。相手も本格的に動いてきています。もちろん他の師団長が強いことは知っています、団員がすぐにやられるような軟なやつらではないことも知っています。」

 悠:
 「しかし、やっぱり失うのは怖いんです。みんなが戦っているのに自分だけ楽しい時間を過ごしていいのかよう思ったんです。だから俺も戦います。二度と失わないように。」

梅谷総理は悠のその言葉に揺るがない意思を感じた。それと同時に恐ろしくも感じた。本来まだ、学校に通い普通の人生を送るはずの子供がまるで自分の命を軽んじるような発言をしたことに。

 総理:
 「そうかい、何かあったら相談しろよ。それで、本題なんだが。」

一方、第2師団の基地では翔らが悠の過去について聞いていた。

氷室:
 「悠が『ギフト』を授かったのは今から7年前だ。年のしたらあいつが8歳のころだな。施設で育っていたあいつのもとに急に一本の光がさした。」

 氷室:
 「そこからだな、悠の人生が急変したのは。」

涼介の顔が一瞬曇った。

 翔:
 「氷室師団長?」

 氷室:
 「すまんな、悠に光がさしたことを知った上層部はすぐに悠を師団長にするための訓練を開始させた。知的教育を全て吹っ飛ばしてな。」

 向日葵:
 「!ってことは悠は義務教育を受けてないんですか?」

 氷室:
 「あぁ、師団長になる2年間義務教育を受けさせてもらえず、怪我をしようとも風邪をひこうとも訓練は続けられた。やがて、悠は強さの代わりに感情を失っていた。本当に見てられないくらに。」

 千秋:
 「誰か指摘しなかったのですか?」

千秋が涼介に疑問をぶつけた。

 氷室:
 「もちろんしたさ、俺や総司令、他の師団長もな。それでも、あいつらはやめなかった。悠の『ギフト』は俺らのとは違って強力ではないからな様々なことをさせられていたよ。」

 千秋:
 「ですが、悠さんは義務教育を受けてないとのことでしたが、確か筆記試験はトップでしたよね?しかもほぼ満点で。」

悠は育成学校の入学試験の筆記試験でほぼ満点を取り、その後の筆記の試験でも学年1位を取り続けており、義務教育を受けてないとは思えないほど秀才なのである。

 氷室:
 「確かに、悠は義務教育を受けていないが一般教養や常識は全部独学で身に着けているぞ。それも上のやつらの実験だったがな。」

翔らはその事実に衝撃を受けた。

 氷室:
 「その時だったな、あいつが自分の武器に出会ったのは。お前たちも見たように悠の武器は特別製だ。普通の人じゃ扱うどころか持つことさえできない代物だ。」

 向日葵:
 「あの、『桜』以外にどんな武器があるんですか?」

向日葵が質問した。

 氷室:
 「そうだな、悠の武器は全部で5つある。」

 氷室:
 「お前らの見た『絶弓 業魔』、『双身刀 桜』のほかに『小太刀二刀 姫』、『鉄塊 彼岸』、『刀 夜行』がある。これらを扱うことができるのが悠の【ギフト】だ。」

 氷室:
 「話がそれたな。悠は訓練を終え、10歳の時に師団長に就任したが当然反対する者がいた。会議にいた南部や中央部の大臣みたいにな。そこで悠がとった行動はとにかく魔物を倒すだった。」

 氷室:
 「みんなに認められるため、居場所を作るためその一心で魔物を倒し続けた。俺もその時期に合同で任務の時があったが。その時の悠の目はとにかく冷たくて光がない感じだったな。」

その話を聞き、翔は自分の拳を強く握りしめた。

 京子:
 「そんなことがあったなんて。」

 氷室:
 「でも、俺らはお前らに感謝してる。」

 翔:
 「え?」

 氷室:
 「お前らとの学校生活はよほど楽しかったんだろうな。よく俺に学校であったことを報告してくれたよ。その時の悠の目は光がともっていたよ。ありがとうな。」

会場での悠の言葉が偽りでないことを知った翔たちは胸がいっぱいになった。そして、涼介にあるお願いをした。

 翔:
 「あの氷室師団長。お願いがあるのですが。」

 氷室:
 「?どうした。」

 翔:
 「俺たちを鍛えてください。悠の隣で戦えるように。」

 向日葵:
 「私もお願いします。守られる市民ではなく一緒に戦う団員になりたいんです。」

 千秋:
 「私も悠さんを遠くからでも支えられるようになりたいです。」

 京子:
 「うちも。」

涼介は少しうるっと来た。ここまで悠のことを思ってくれる友人がいることに。

 氷室:
 「いいだろう、厳しくいくから覚悟しとけよ。」

 翔:
 「はい!」

一方、総理官邸では

 悠:
 「本題とは何ですか?総理。」

 総理:
 「あぁ、第3,第4から悠宛てに応援要請があった。」

 悠:
 「え?」
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