第29話

文字数 864文字

「そうだ。母さん、晴子。
この人が手紙にも書いていた友人の米田浩二くん。」
「米田浩二です。」

米田くんは、帽子を取ってお辞儀をしてくれました。

「まぁ、この人が米田くんなんやね!
息子がいつもお世話になっとります…!」
「そんな、俺の方こそ。」
「あ、あの…!」
「?」
「た、田中晴子です!
兄と仲良くしてくれて、その…ありがとうございます!!」
「晴子ちゃん。俺の方こそ、お兄ちゃんにはいつも感謝してるんやで!」

米田くんは、笑顔で答えてくれました。



私と母は、ご近所さんに挨拶をする事になりました。

「米田くん、本っ当ーに申し訳ないんやけど、これからご近所さんに少しだけ挨拶して来るわ。それで、晴子と留守番頼めるかな…?」
「俺は晴子ちゃんが嫌じゃなかったら構わへんよ。」
「晴子、米田くんの相手を頼めるかな?」
「勿論!!行ってらっしゃい!!」
「ほんまごめんなぁ…。
1時間位で戻るから!」



挨拶から戻ってから、母がお茶をお茶を淹れてくれました。
お茶を飲みながら、色んな話をしました。
学生時代の話。
呉に配属されてからの話。
ミッドウェー海戦で死にかけた話など。

「そう…。色んな体験をしたんやね。」
「うん。辛くて逃げ出したい事も沢山あったけど、周りの皆のお陰で乗り越える事が出来たねん。」
「そうなんやね。」

母は何度も頷きながら、話を聞いてくれました。

「そうそう、昴くんね、
同期の中で1番に出世したんですよ!」
「えっ!!そうなん!?お兄ちゃんすごーい!!」
「ちょ、米田くん!!」
「ほんまの事やん。」
「う、うん…。まぁ、そうなんやけどさ…!」
「また階級が上がる話も出てるやん!」

何だかちょっと照れくさい気持ちになりました。

「まぁ…!!満州にいるお父さんにも報告せんとねぇ。」
「お父さん喜ぶよー!!」


こうして、楽しい時間はあっという間に過ぎていき…
そろそろ晩ご飯の準備の時間となりました。

「さてと。そろそろ晩ご飯の準備をせぇへんとね。浩二くん、良かったら晩ご飯食べて行き。」
「え、良いんですか?」
「勿論。」

母は笑顔で答えました。

「晴子、手伝って。」
「はーい!!」
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