第51話

文字数 827文字

特攻隊による体当たり攻撃が、本格的に始まりました。
特攻作戦には、知覧基地を始め、
宮崎県の都城など九州の各地、
統治していた台湾など多くの基地から出撃していました。
その中でも、知覧基地が本土最南端で、
最も多くの隊員が出撃しました。

「高橋、田中。」
「「はっ!」」
「行ってくる。」

互いに敬礼をします。

「川本曹長、今までお世話になりました!」
「どうか後は我々にお任せ下さい。」
「あぁ。」

川本曹長は、知覧行きの船に乗りました。
高橋曹長と私は、川本曹長の姿が見えなくなるまで、ずっと敬礼を続けました。

その数日後、川本曹長が特攻して亡くなった事を高橋曹長から聞きました。



それから、次々と兵士が知覧へ送られる事になりました。
そして...とうとう私達の番が来ました。

「進さん...!!!嫌ぁ!!」

長谷川くんが、一足早く行く事になりました。

「高橋曹長!!私も特攻させて下さい!!」

松本さんは、泣きながら高橋曹長に訴えました。

「......」
「人数は1人でも多い方が良いですよね!?」
「しかし...」
「莉子。辞めるんや。」
「!!」

長谷川くんの一言で、松本さんは少し落ち着いたみたいです。

「ごめんなさい...。」
「いや。こちらこそすまん。
俺には人事をどうにかする力は無いんや。」
「ぅ...」

ポロポロと涙を流す松本さんを、
長谷川くんは優しく抱き締めました。



いつか、
『4人で帰省しよう。』
と約束をしました。
ですが、それは叶う事はありませんでした。

「んじゃ、先に帰省させてもらうわ。」

任務の都合上、どうしても4人揃うのは無理でした。
米田くんと長谷川くんが、先に帰省する事になりました。

「うん。紗和さん達によろしくね。」
「おう。」

「昴、頼みがある。」
「どうしたの?」
「俺が帰省していない間...莉子を頼んだ。」
「うん。」

松本さんも帰れたら良かったのですが...。
汽車に乗り込み、三宮へと向かう2人を
ずっと見詰めていました。
きっとこれが最期の帰省となるでしょう。

「(次は僕か...)」
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