第34話

文字数 936文字

「あ」
「どうしたん?」
「壁を壊しちゃったから、修理しないと…。」
「あぁ、さっき凄い音がしたあれやね!」
「ほんまごめん…」
「良いよ。近所の大工のおじさんに頼むから。」
「それは申し訳ないよ…!
僕が壊したんだから、僕が直さないと。」

紗和さんは、立ち上がろうとする私を止めました。

「昴さん。せっかく会えたんだから…。
2人でゆっくりしよう…?」
「…そうやね。」
「今日は1泊するんでしょ?
その、私の部屋で寝ない…?」
「!!!」

紗和さんの発言に、私は驚き過ぎて
飛び上がりそうになりました。

「さ、紗和さん!!それはあかん!!」
「え?何で…??」
「だっ、だって…!!
横で眠る無防備な紗和さんを見て、
何もしない自信が無い!!!」

冷静でいられる自信が全く無いので、
むしろ何かする自信しかありません。

「昴さん」
「は、はい!!」
「私…それも分かって部屋に誘ってる。」
「!!」

ドキドキと心臓の音が煩くて仕方がないです。
ゴクリと唾を飲み込み、紗和さんに尋ねます。

「…良いの?」
「うん…!」
「ありがとう。嫌だったらすぐに言ってね。」



学生の時は毎日会っていたから、
こんなにずっと一緒に居る事はありませんでした。
しかも2人きりで…。

「ちょっと着替えて来るね。」
「う、うん!」

正座して、背筋を伸ばして目を瞑り、
紗和さんが戻るのを待ちます。

「あれ…僕が呉に行く前に紗和さんに渡した人形や。」

腕が取れてしまったのか、丁寧に修復されています。

「大切にしてくれてるんや…。」

私は人形に話しかけました。

「僕の代わりに、紗和さんの傍にいてね。」

「ただいま昴さん。」
「おかえりなさい!」

紗和さんが戻って来ました。

「もしかして、“すばるくん人形”を見ていたん?」
「“すばるくん人形”?」
「うん。毎日一緒に寝てるねん。」

自分で作っておいて何ですが、
すばるくん人形が羨ましいです…。

「この前腕が取れちゃって…
もしかして昴さんに何かあったんじゃないかって不安になったんやけど、そうじゃ無かった。守ってくれたの!!昴さんの事!!」
「きっとそうやね!」
「うん!…と、昴さん。」

紗和さんは私の前に正座しました。

「お待たせしました。
会えない時間が長かった分、その…。」
「うん。その分、いっぱい愛し合おうね。」
「うん…!」
「おいで。」
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