第47話
文字数 1,189文字
1943年10月。
大学生が学業を中断して
兵役に就くことになりました。
これを『学徒出陣』と言います。
当時の男性は、20歳を過ぎれば兵役の義務がありましたが、大学生は、卒業するまで猶予がありました。
私の様に軍人になる学校に行ったり、
甲斐くんの様に自から志願すれば、
10代でも軍人になる事は可能でした。
学徒出陣がどうして行われたかと言うと、
日本軍が敗退を繰り返し、多くの現場で戦闘をを指揮する下級士官やパイロットが犠牲になったからです。
つまり、兵力の不足です。
ですが、全部の大学生が学業を中断して
徴兵された訳ではなく、
理工医学部、教員養成は例外でした。
◇
そして、私は軍曹に。
米田くん、長谷川くんは伍長に。
甲斐くんは上等兵に昇進しました。
当時は私は19歳でした。
元々パイロットは昇進が早いのですが、
この敗戦続きで多くの犠牲が出る中、
残った者は次々と昇進して行かざるを得なかったと言いますか…。
呉にも沢山の大学生が来ました。
「(もっと勉強したかっただろうに…。)」
私の頭の中に、紗和さんの姿が浮かびます。
彼女も、戦争の影響で学問を諦めた1人です。
「俺さ、結婚を約束した恋人がいるんだ。」
「!!」
徴兵された大学生が2人で話しているのが聞こえました。
「そっか…。俺は恋人はいないけど…
彼女を残して死ぬのは嫌だよな。お国の為だから仕方ないけど。」
「大学卒業したらさ…結婚する予定だったのに。」
「…ん?お、おい!!」
「!?」
大学生2人組が私に気付き、敬礼をしました。
「「申し訳ございません!!」」
「いや…気持ちは分かるよ。僕も恋人と離れ離れになってしまったから。」
「「……」」
「今の私語は聞かなかった事にする。
話すんやったら、もっと小声で見付からない様にしろ。」
「はっ!」
「ありがとうございます!」
◇
私は学徒出陣で徴兵された大学生と歳がほぼ同じであった為、大学生達と話す事が多かったです。本来はどうなのかと思うので、こっそりと…。
「それ…僕に言って大丈夫なん?」
あの時、『結婚を約束した恋人がいる』
と話していた2人組は、私の部下となりました。
「あ…。そ、そうですよね!
田中軍曹、お優しいし、歳が近いし…
つい喋り過ぎてしまいました…!!」
「ごめんなさい!!」
「いや…。ちゃんとした場以外なら、何も言わんよ。
僕だってさ…、自分なんかより遥かに賢く、
日本の将来を担うであろう優秀な若者が
戦争に行かなあかんのは辛いよ。」
「それは田中軍曹も同じでは?」
「?」
どう言うことでしょうか?
私は彼らの様に学はそこまで無いのですが…。
「“日本の将来を担う優秀な若者”は、田中軍曹も同じだと言う事です。
何も学問だけが全てではありません。」
「たまたま俺達は、勉強がしたくて大学に行っただけで、田中軍曹も、優秀な若者である事に違いないと思います。」
「えっ!!そ、そう!?」
何だか照れくさいですね。
部下に励まされました。
大学生が学業を中断して
兵役に就くことになりました。
これを『学徒出陣』と言います。
当時の男性は、20歳を過ぎれば兵役の義務がありましたが、大学生は、卒業するまで猶予がありました。
私の様に軍人になる学校に行ったり、
甲斐くんの様に自から志願すれば、
10代でも軍人になる事は可能でした。
学徒出陣がどうして行われたかと言うと、
日本軍が敗退を繰り返し、多くの現場で戦闘をを指揮する下級士官やパイロットが犠牲になったからです。
つまり、兵力の不足です。
ですが、全部の大学生が学業を中断して
徴兵された訳ではなく、
理工医学部、教員養成は例外でした。
◇
そして、私は軍曹に。
米田くん、長谷川くんは伍長に。
甲斐くんは上等兵に昇進しました。
当時は私は19歳でした。
元々パイロットは昇進が早いのですが、
この敗戦続きで多くの犠牲が出る中、
残った者は次々と昇進して行かざるを得なかったと言いますか…。
呉にも沢山の大学生が来ました。
「(もっと勉強したかっただろうに…。)」
私の頭の中に、紗和さんの姿が浮かびます。
彼女も、戦争の影響で学問を諦めた1人です。
「俺さ、結婚を約束した恋人がいるんだ。」
「!!」
徴兵された大学生が2人で話しているのが聞こえました。
「そっか…。俺は恋人はいないけど…
彼女を残して死ぬのは嫌だよな。お国の為だから仕方ないけど。」
「大学卒業したらさ…結婚する予定だったのに。」
「…ん?お、おい!!」
「!?」
大学生2人組が私に気付き、敬礼をしました。
「「申し訳ございません!!」」
「いや…気持ちは分かるよ。僕も恋人と離れ離れになってしまったから。」
「「……」」
「今の私語は聞かなかった事にする。
話すんやったら、もっと小声で見付からない様にしろ。」
「はっ!」
「ありがとうございます!」
◇
私は学徒出陣で徴兵された大学生と歳がほぼ同じであった為、大学生達と話す事が多かったです。本来はどうなのかと思うので、こっそりと…。
「それ…僕に言って大丈夫なん?」
あの時、『結婚を約束した恋人がいる』
と話していた2人組は、私の部下となりました。
「あ…。そ、そうですよね!
田中軍曹、お優しいし、歳が近いし…
つい喋り過ぎてしまいました…!!」
「ごめんなさい!!」
「いや…。ちゃんとした場以外なら、何も言わんよ。
僕だってさ…、自分なんかより遥かに賢く、
日本の将来を担うであろう優秀な若者が
戦争に行かなあかんのは辛いよ。」
「それは田中軍曹も同じでは?」
「?」
どう言うことでしょうか?
私は彼らの様に学はそこまで無いのですが…。
「“日本の将来を担う優秀な若者”は、田中軍曹も同じだと言う事です。
何も学問だけが全てではありません。」
「たまたま俺達は、勉強がしたくて大学に行っただけで、田中軍曹も、優秀な若者である事に違いないと思います。」
「えっ!!そ、そう!?」
何だか照れくさいですね。
部下に励まされました。