第4話 何ひとつ解らぬ
文字数 2,230文字
※シーズン1と同様、セリフや情景描写にはここの作者のアレンジが加えられています。
台本に忠実ではありませんので、ご了承ください。
第1幕 第1場
夜。ここは中世のドイツです。
一人の老いた科学者が、憂いを帯びた表情で座っています。そして机には、膨大な量の羊皮紙が置かれています。
突然、顔を上げるファウスト。
虚無を示す一つの言葉から、物語が始まります。
脇目も振らず研究に捧げてきた自分の人生を後悔するファウスト。
目の前にある論文の山が虚しく感じられます。
嘆いているうちに、夜が明けてきました。
ファウストは一旦窓を開けようとしますが、すぐにためらいます。朝の空気を吸ったところで、心が晴れることはないのですから。
絶望のあまり、自殺するつもりのファウスト。水晶の小瓶に毒薬を注ぎます。
しかしそこに口を付けようとした瞬間、外から女たちの楽しそうな歌声が聞こえてくるのです。
生命の輝きを讃える歌です。
だけど歌が楽しそうであればあるほど、ファウストは落ち込みます。他人の幸せは、自分を惨めにするばかり。
再び毒をあおろうとするファウスト。
しかしまたもや、外から楽しそうな歌声が聞こえてきます。今度は農夫たちの歌です
力強く男らしい歌い方が、ますますファウストを追い詰めます。
苦悩するファウストの姿を動画でご覧下さい。
(前回の動画の続きです。ホムンクルスの遺骸を助手たちが片付けるところから始まります。)
農夫たちの歌は神様をたたえていましたが、ファウストは皮肉に笑います。
何も得るものがないまま、年を取ってしまったと感じるファウスト。彼は次第に怒りを感じ、自分がこれまで大切にしてきたものを呪い始めます。
ファウストの怒りはどんどん激しくなり、その勢いは止まりません。
オーケストラの音量も激しくなっていきます。
そんな中、彼はついに叫ぶのです。
第2場
不気味な声が響いたのは、この時です!
ぎょっとし、思わずのけぞるファウスト。
まさか本当に悪魔が現れるとは思っていなかったのです。
メフィストフェレスはそんなファウストを見て、満足気に笑います。
ファウストに畳み掛けるメフィスト。
そうです。ファウストが心から求めているのは、若さです!
オーケストラの音量が大きく、かつ明るくなっていきます。
悪魔の誘導により、狂ったように本音を吐き出すファウスト。
これまで学者として禁欲的に生きてきただけに、いったんその魅力に取りつかれてしまえばもう情欲の塊となってしまうのです。