第23話 ヴァランタンの死

文字数 858文字

ファウストたちと入れ替わるように、近所の人々が駆けつけてきます。
こっちよ、みんな。

道で戦ってる!

見て、あそこ。

一人倒れたわ。

まだ死んでいない!

助けなければ!

震えながら人々を制するヴァランタン。
ありがとう……

だが悲しむ必要はない。

俺は多くの人の死を見てきたんだ。

だから少しも怖くはない

おいおい、歌ってる場合かよ。

早く救急車、救急車!

シーベルに支えられて、マルグリートもやってきます。
ヴァランタン! ヴァランタン!
マルグリート、何のつもりだ。

あっちへ行け!

おお、神様!
俺は妹のために死ぬ。

愚かにも、こいつの恋人と争ったんだ

お慈悲を、彼女のために!
彼は妹のために死ぬのだ
人々に支えられ、ヴァランタンは最期の言葉を振り絞ります。
よく聞け、マルグリート。

いつか来るべき時が来たのだ。来るべき時に死はやってくる。人はその天命に従う

お前は誤った道に踏み込んでしまった。

お前は快楽のためにあらゆる義務と美徳を拒んだのだ!

行ってしまえ。恥に押しつぶされるがいい。

神はお前を許すだろう。

だがこの世では呪われよ!

恐ろしい冒涜!

最期の時なのに、あわれな人よ。

自分自身のことを考えよ。

許すのだ。いつの日か自分も許されようと思うのなら

マルグリートを呪ったまま、息絶えるヴァランタン。人々は厳かな祈りの歌を歌います。

しかしマルグリートは泣き叫び、ショックのあまり倒れてしまうのです……。

死を悼む人々の歌もきれいだね。

だけどお兄ちゃんの最期の言葉……重いなぁ

台本にははっきりと書かれていませんが、悲しみのあまりマルグリートは発狂してしまうんです。

それを表現するため、このシーンのラストで彼女に大声で笑わせたり、赤ちゃんを傷つけるような動作をさせたりといった演出もあります。

何だか残酷過ぎるよ。

この兄妹を救う手立てはなかったのかな

悪魔の導きだからな。

しかし何度も言うが、ファウストの野郎は何やってんだ

まさにそれよ!

次の第5幕では、この悲しみの時にファウストが何をしているかが描かれます。

ふざけんな!と怒り出す人もいるかも

え……

一体何をしているの……?

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