第15話 奇妙な四重唱

文字数 1,392文字

ファウストにお手本を見せようと、マルトを誘惑し始めたメフィスト。

だけどこれが何だかおかしなことになってしまうのです……


二組のカップルによる、ちょっぴりコミカルな四重唱が始まります。

まずはファウストも懸命に口説くところから。

(マルグリートに)僕の腕を取って……ああ、ちょっとでも!
(とにかく恥じらい)放っておいて下さい。お願いです!
ファウストが動き出したので、「よしよし」とばかりにメフィストもマルトを誘います。
(マルトに)あなたの腕を
(メフィストに飛びつき)素敵だわ!
(かなり引きながら独白)

こっちは少々熟れ過ぎとるな……

恥じらうマルグリートと、おばさん根性を地で行くマルトが対照的。

一転してメフィストに興味を抱いたマルトは、相手にあれこれ質問します。

あなたはいつも旅を?
ええ、いつもです。奥様。

辛いが仕方がないんです……

友もなく、親もなく、妻もいない……

そりゃ、まだ若ければいいんですけどね。

歳を取ると辛いことです。たった一人で老いていくなんて

その通り、身震いするんです。

恐ろしいことを考えてしまって……

そうなる前に、立派なお方

慎重にお考え下さいましね♡

(メフィストにベタベタ)

(かなり引きつつ)

よく考えるつもりですよ

よ~くお考え下さいましね♡♡
悪魔の野郎、自分から誘惑した以上、引けなくなってるな
おばさん、悪魔を好きになっちゃったかー(笑)!

この二人はどうなっちゃうの?

二人が「一夜のアヴァンチュール」に及んだかのように見せる演出もありますが(悪魔の態度としてはそれも正しいのか?)、ま、ここはメフィストが真っ青になって逃げるのが面白いところでしょう
ご冗談でしょう?
いいえ、私はあなたに憧れているのです!
信じられません。私をからかわないで
神が私を、あなたの元へと導いたんです。私の気持ちを聞いて下さい!
一方こっちも……
私から逃げようとしてるわね!
いや、あなたの話を聞きたいのは山々なんですが、もう行かなくては……(汗)
お帰り下さい。もう夜になりました
つれない人よ!
メフィストはマルトが油断した一瞬の隙をついて木の陰に隠れます。
まあ、彼がいないわ。

……旦那さま!

焦ってメフィストを追いかけ、探し回るマルト。
愛しい旦那さま!(必死)
追いかけてくる、か。

ふう(ため息)。

容赦ないババアめ、強引にでも悪魔と結婚するつもりだな?

ではあなたは一人?
ええ。兄は兵士で、他に家族はおりません。

一番悲しいのは、最愛の妹を亡くしたこと。私になついていて、とても可愛い妹でした。私、一生懸命に面倒をみたんです。

でも彼女は天に召されました

妹さんがもしあなたに似ていたなら、彼女はきっと天使だったんでしょう。私はそう思いますよ
これまたよく知られた『ファウスト』の四重唱はこちら!

(英語字幕付き)

第9場
マルグリートに告白するつもりで、再びやってきたシーベル。
頑張れ、僕。彼女に全部伝えるんだ……!
(勘違いでシーベルに飛びつく)旦那さま! 愛しい旦那さま!
(ギョギョッ)何ですって!?
何だ、シーベルじゃない。こんな時間に何してるのよ?

さあ帰るわよ

あのお方は去ってしまったのね……(がっかり)
こりゃ、おばさんのお陰で面白くなっている節もあるな
魔法も使える悪魔なのに、おばさんパワーには敵わないんだね(笑)
そう、マルトのキャラが何ともいいですよね。


というわけで、オペラ『ファウスト』の中で一番コミカルな場面でした!

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