第9話 ワルツとコーラス
文字数 1,959文字
第4場
十字架を掲げたまま、人々は去って行きます。
ようやく一息つくメフィスト。
そこへやって来るファウスト。
すっかり悪魔の仲間になった体(てい)です。
先ほどの騒ぎを忘れたのか、市民たちはけろりとして戻ってきます。元通りの広場の喧噪です。
ワルツを踊り始める人もいます。
この場面のワルツは、独立曲として親しまれています。コンサート等で耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
動画ではありませんが、ベルリンフィルの演奏をどうぞ。
楽し気に踊る娘たちと学生たち。
ファウストの心は動きません。だって会いたいのは、あの娘だけなのですから!
一方でシーベルが現れます。何かを期待しているようです。
シーベルに近づき、からかう娘たち。
するとシーベルの予言通り! マルグリートが通りかかります。
息を呑んだのは、ファウストも同じです。
だけどファウストの恋路には、邪魔者がいるではありませんか。
すかさず、メフィストがシーベルの前に立ちはだかります。
マルグリートは一人です。これはメフィストが作ってくれたチャンス!
ファウストは彼女に近づき、腕を差し出します。
唐突に目の前に現れた、知らない男。
マルグリートは緊張し、警戒してしまいます。
マルグリートは真っ赤になって逃げ去ってしまいますが、ファウストはその後ろ姿にしつこく声を掛け続けます。
メフィストはようやくシーベルを解放し、意気消沈したファウストの所へ戻ってきます。
ファウストとメフィストの二人は、仲良く去っていきます。
広場に残された人々が、再び喧噪に包まれます。
人々は再び楽しげに踊り始めます。
だけどそこには、何となく不穏な空気が漂っているのです……
おまけ:
ピアニストのフランツ・リストは編曲も得意だったそうです。彼による『ファウストのワルツ』もすごく素敵。オペラからはちょっと離れますが、ぜひ聴いてみてください。
愛欲の果てに破滅していく人間を描いたこの曲。グノーのメロディーをそのまま使っていますが、リストの手にかかるとこんなにも洗練された一曲に!